異譚25 超古代都市・■■■
ネット小説大賞公式Twitter様にて告知ありましたが、魔法少女異譚が応援イラスト企画に当選しました!
明日の12:00にイラスト発表となります!
素敵なイラストに仕上げていただいたので、是非チェックしてみてください!
数時間の運転に加え、いつも以上に神経を使った戦闘行動。帰って来てからも少女達に玩具にされ、流石に疲れが出て来た春花はいつの間にか眠りについてしまっていた。
ソファで横になって眠る春花に膝を貸しながら、白奈はタブレット端末で作戦の進行状況を確認する。
春花達がカフェテリアで休息をしている間、クルールー教団の施設は着実に制圧されていった。
春花が潜入捜査をしたクルールー教団日本統括支部も例外ではなく、順調に施設を制圧していく。
くーすかぴーと眠る春花の頭を白奈は優しく撫で続けながら、朱里にタブレット端末を渡す。
「これ、最下層の水場って花と星の子で行けると思う?」
「花はともかく、星なら魚座とか水瓶座でどうにかなりそうだけどね。制圧から調査まで少し時間は掛かると思うけどね。人選もあるだろうし」
「春花ちゃんが言ったように、海に繋がってるとしたらその先は捜しようが無いわよねぇ」
笑良は春花のお腹の上で眠るチェシャ猫を撫でながら、自身のタブレット端末で施設の情報を確認する。
施設内にある水場が海に繋がっているのであれば、半魚人は海と施設を行き来していたことになる。
陸であれば難しくとも探し出す事が出来るけれど、海となれば人の手の届かないところもある。陸を調査するよりも難航する事は間違いない。
「まぁ、そこら辺は報告が上がってからよね。コイツの言うように海に繋がってるんだとしたら、その時は海に出て釣りでもしましょ。良い生餌も居る事だしね」
言って、朱里は視線を詩に向ける。
釣り餌に使うとストレートに言われた詩だけれど、朱里と目が合うとぐっと親指を立てる。
「……一本釣り、頼んだ……」
「嫌よ、生臭い」
「……酷い。私、臭く無い……」
詩がちらりと隣に座るシャーロットを見やれば、シャーロットはがばっと詩を抱きしめて深呼吸をする。
「アジの塩焼き」
「……それは、お昼ご飯の、匂い……」
「共食い」
「……弱肉強食、だから……」
がちがちと歯を鳴らして強者アピールをする詩。そこに、シャーロットはお菓子を突っ込んでいく。
「生餌云々は冗談としても、そうなったら海に出られる魔法少女は招集されそうよね」
「童話だと、詩とアリスだけね」
アリスであれば小型の潜水艇を作り出す事が出来る。アリスの作り出した物はアリスがそう望まない限りは消える事は無いので、アリスの魔法の範囲外に出ても捜査は可能である。
「なんにせよ不透明な相手の情報を少しでも多く得る事が大切よね」
「少しずつでも確実に相手の正体を見極めていくためのピースを集めていくしかない。分かっちゃいるけど、まどろっこしいわねぇ……」
「何でも蹴り殺して解決は出来ないわよ」
「何でもかんでも蹴りで解決できるとは思ってませんけど? アンタ、本当にアタシの事突撃しか能が無い奴って思ってるわよね。失礼しちゃうわ、まったく」
怒った様子を見せながらも、それがただのポーズである事は白奈には分かっている。いわゆる、お決まりの冗句というやつだ。
ある程度の緊張感を保ちながら少女達はお喋りを続ける。リラックスはしているが、一応は待機という体ではあるのだ。何かあった時に即座に動けるように、意識は現在進行している作戦に集中している。
だが結局のところ、作戦終了まで特にアクシデントは無く、クルールー教団の支部は全て制圧された。
やはり春花の危惧した通り、クルールー教団日本統括支部にあった水場は海まで続いており、そこから先の捜査は難航が予想された。そして、水場があったのは日本統括支部だけでは無かった。
幾つかの支部に違法増築された地下空間が確認され、最下層には一体の半魚人と海へと続く水場があった。
更に厄介なのは、海へと続くトンネルの出口は全て太平洋側に存在していた。日本海側であれば範囲も幾らか限定されるけれど、太平洋側から来ているとすれば半魚人の棲み処の特定は難しい。
今回の件は、かなりの長丁場になると誰もが確信した。
「見付けたよ、俺のアリス」
それは、半魚人や信徒の視界を共有して、一人の人間を捜していた。
ずっと、ずっと前から、一人の人間だけを捜していた。
十年、百年、千年、もしかしたら、それ以上。数えるのが億劫になり、生きるのが面倒になる程、長い間捜していた。
ようやく、ようやく見付けた。
メークをして、女装をしていたけれど、彼が見間違えるはずが無い。どれだけ時が経とうとも、どれだけ過去の記憶が薄れようとも、彼がその顔を見間違えるはずが無い。
世界で一番麗しく、世界で一番美しく、世界で一番可憐な少年。
今度こそ、今度こそ、この最悪な世界から助け出さなければいけない存在。
遠く、遠く、遥か遠くの海の底。
水底に沈んだ都市は不思議な浮力を得て緩やかに上昇していく。
一時間もしない内に都市は浮上し、海上にその全貌を露わにした。
超古代都市・■■■。
「さぁ、来てくれアリス。今度こそ、俺が君を救ってみせるから」




