表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第5章 ■■■■

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

211/490

異譚23 強制捜査チーム

 二人にセクハラをされながら――サンベリーナはうなじに張り付いてずっと離れずに深呼吸をしている。なお、春花は気付いていないので、セクハラをしているのはシャーロットだけだと思っている――春花は対策軍本部へと到着した。


 下道を通って二時間にも及ぶ運転だったため、流石に疲れてはいるけれど、クルールー教団に異形の怪物が関わっている以上、対策軍としては一刻も早い捜査を行わなければいけない。


 決定的な証拠を掴んだ以上、休んでいる暇は無いのだ。


 春花は車庫にバイクを停めると、急ぎ足で会議室へと向かう。


「報告は僕一人で済ませるから、二人はカフェテリアで休んでて」


「え、ひ、一人で大丈夫?」


「平気。僕と二人の意見に食い違いが無い事は道中確認できたから。追加で報告が無い限りは、僕一人でも大丈夫だよ」


 言いながら、春花はいつまでもうなじにくっ付いているサンベリーナを引き剥がし、シャーロットへと手渡す。


 サンベリーナを受け取ったシャーロットは、サンベリーナを自身の頭の上に乗せる。


「任せた。ワシ、ケツ痛いです。休むます」


 またなーと手を振ってカフェテリアへと向かうシャーロット。


 サンベリーナは後ろ髪引かれたように春花を見ていたけれど、春花はサンベリーナから視線を切って急ぎ足で会議室へと向かった。


 会議室まで到着すると、春花は迷う事無く会議室の扉をノックする。


『入りたまえ』


 返答を聞くと、春花は素早く扉を開ける。


「失礼します」


 入室した春花を見た面々は特に驚いた様子も無い。


 作戦開始前に対策軍本部には寄ったけれど、上層部の面々とは顔を合わせていないので、春花が女装をしているとは知らないはずだ。


 海千山千の上層部であればこの程度で驚く事は無いのかと思ったけれど、どうやら違うらしい事は直ぐに分かった。


 会議室ではスクリーンが展開されており、そのスクリーンには女装した春花の背中が映った映像が流れていた。


 それがぴょんぴょんが撮った映像だと言う事は即座に理解できた。何せ、その映像を撮れる者はずっと春花の背後に居たぴょんぴょん以外にあり得ないのだから。


「僕の映像は必要無いですか?」


 春花が問えば、綾乃はいやいやと首を振って答える。


「公的な証拠映像は必要だとも。彼女の映像は副次的なものに過ぎないからね。それでも、良い働きをしてくれた事に変わりはないがね。彼女を同行させるのは良い判断だったよ」


「サンベリーナとレディ・ラビットが居たので連れて行きました。僕一人だったら得られなかった成果です」


 今回はたまたま春花一人でも護り切れたけれど、あくまで結果論に過ぎない。ただの人間二人で怪物の棲み処に脚を踏み入れるなど自殺行為に他ならず、春花一人で潜入捜査を行っていたのであれば、まず間違いなくぴょんぴょんを気絶させて一人で行っていた。


 サンベリーナとレディ・ラビットのサポートがあると分かっていたからこそ連れて行ったのだ。


「勿論、二人にも感謝はしているとも。特別報酬は期待しておいてくれたまえよ」


 上機嫌に綾乃は笑う。


「流血沙汰のせいでアカウントが停止、配信も削除されてしまってはいるが、大勢の者がこの映像を見たし、録画もしている。今や、世間はクルールー教団の話題で持ちきりだ。思いがけず追い風を作る事が出来たのは幸運だ」


 今スクリーンに映し出されている映像も配信を録画したものになる。元の動画はぴょんぴょんしか持っていない。


「ではいつ動きますか? 敵性生物を確認した以上、時間をかけるのは得策ではないと思います」


 春花がそう言えば、綾乃は意地悪な笑みで答える。


「もう動いているとも。君達が脱出した直後に、クルールー教団の全施設に魔法少女と特殊部隊を含めた強制捜査チームを出動させた。幾つかの施設は既に制圧を完了している」


 怪物の存在が確認された後、即座に指示を出して控えさせていた強制捜査チームを出動させた。全ての支部にチームが到着したのを確認し、春花達が脱出したのを見計らってチームを突入させた。


 それが、二時間と少し前の事になる。


「幾つか、ですか?」


 半魚人程度の戦力であれば、二時間もかからずに殲滅させられるはずだ。それがまだ終わっていないと言う事は、半魚人以外の敵性生物が存在したか、それ以外のイレギュラーが発生した可能性が在る。


「半魚人だけならもたつかないんだがね。信徒の鎮圧に時間が掛かっていてね。何しろ、こちらを殺す気(・・・)で抵抗してきているからね」


「なるほど」


 向こうに殺意があっても、対策軍(こちら)からすれば一般市民だ。それに、敵性生物の介入があるという事は彼等が操られているという可能性も視野に入れなければいけない。


 向こうは殺す気でも、こちらは相手を殺害してはいけないのだ。なにしろ、護るべき一般市民なのだから。


「もう少し、時間は掛かるだろうね」


「僕が出ますか?」


「いや、必要無い。君が出ては過剰戦力だ。今回は、他の子達に任せて、君はゆっくり休みたまえ」


「……分かりました」


 頷き、春花は自身の首に巻いてたチョーカーを外して机に置く。


 潜入捜査の映像を録画するために、チョーカーに小型撮影機を仕込んでいたのだ。春花視点の映像は全てこのチョーカーの中の小型撮影機に入っている。


「何かあれば呼んでください。いつでも出撃出来ます」


「ああ。分かった。あ、そうそう。無茶な捜査をさせたからね。特別手当とは別に、ケーキを買っておいたよ。童話の子達は全員居るから、皆と食べてると良い」


 行って、綾乃がぱちんっと指を鳴らせば、別室で控えていた綾乃の秘書がケーキの入った箱を二つ春花に渡す。


 箱にプリントされているロゴは、超が付くほどの高級店のものだ。


「ありがとうございます。皆も喜ぶと思います」


「他の子には内緒にしておくれよ。贔屓だと思われてしまうからね」


「分かりました。それでは、失礼します」


 ぺこりと頭を下げて、退出する春花。


 早くケーキを届けなければとしか考えていない春花はまだ気付いていない。この後、とてつもなく怒り心頭な保護者達が待ち構えているという事に……。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] アリスの交友関係が広がってなにより
[一言] まぁ、お怒りですわね
[気になる点] チョーカーに変な音声(主にサンベリーナとレディ・ラビットの)が入ってないかの方が心配だけど、その前に切ってるから大丈夫、ですよね? [一言] 心頭滅却すれば怒りもまた涼し なんてならな…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ