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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第3章 眠れる■星の■

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アフタートーク 2

 キッチンへ向かったアリスは、四人の作業を見やる。


「なに作ってるの?」


「パスタッス!」


「アマトリチャーナです!」


「そう」


 アマトリチャーナとはトマトソースに豚の脂身、たまねぎとペコリーノチーズを使ったパスタ料理の一種である。


 勿論、豚の脂身とペコリーノチーズなんて在る訳が無いので、あくまでアマトリチャーナ風である。


「私がやる」


 言って、アリスは何処からともなく取り出した料理のレシピ本を開く。項目は勿論アマトリチャーナ。


「手伝ってくれるの? ありがとう、アリス」


 白奈がお礼を言えば、アリスはふるふると首を横に振る。


「違う。私が全部やる」


 その言葉の直後、突然現れた寸胴鍋がふよふよと宙を浮きコンロの上に置かれる。


 蛇口のレバーが独りでに上がり、蛇口から出た水が宙を進んで寸胴鍋に入る。


 包丁は勝手に動き出して玉ねぎを拍子切りにし、豚のバラ肉を食べやすい大きさに切っていく。


「一緒にお料理されたく無かったら、全員キッチンから出る」


「自分、手伝いたいッス!」


「私もです!」


 しゅびっと挙手をする瑠奈莉愛と餡子だけれど、アリスはふるふると首を横に振る。


「非効率的。私一人で充分」


 言っている間にも、独りでに動いて調理器具達は料理をしている。


 確かに、四人で料理をするよりもアリス一人で料理をした方が効率的だ。


「二人とも、此処はアリスちゃんの好意に甘えましょう」


「そうね。それに、アリスの初手料理よ。気が変わって食べられなくなる方が損だわ」


「そう言えばそうね~。やだ~、楽しみ~」


 笑良と白奈は笑いながら二人の背中を押してキッチンから出ていく。


「う~! お皿洗いはやります!」


「自分もッス!」


 捨て台詞のように言い放つ二人。


 アリスはちらりとキッチンの端に置いてある食洗器を見やる。


「食洗器に勝てるなら、任せる」


「「がーん!」」


 食洗器の存在に気付いていなかった二人は、しょんぼりとした様子でキッチンから連れ去られていった。


 キッチンの隅に置かれた食洗器が何処か誇らしげに見えたのはきっと気のせいだろう。


 広々と使えるキッチンでアリスは料理を続行する。


 調理工程を魔法で同時進行出来るので、調理の速度はかなり早い。


 そんな様子を、詩は携帯端末でしっかりと撮影していた。


「……アリスズ・キッチン……今日の、お料理、なんですか……?」


「今日はアマトリチャーナ。ワシの嫁の手料理。楽しむです」


 詩とシャーロットは動画を撮りながらちょくちょくコメントを入れていく。


 後日この動画がネットの海に流出する事になるのを、アリスはよく知っている。


 詩は度々アリスの動画や写真をSNS等に上げているので、どうせ今回も同じなのだろうと判断している。


「……アリス、コメント……」


「隠し味、教えろ」


「チェシャ猫の毛」


「チェンジ。アリスの毛に変えろください。どこの毛でもオッケー」


「……隠し味なんて無い」


 ちょっとだけふざけてみたら思わぬ剛速球が返って来たので、普通に返すアリス。


「……今のは、ピー音、入れる……」


「おー、規制されました。次は気を付けるます」


 魔法少女のイメージダウンになりかねないので、先程の発言には規制を入れる。


 しかし、シャーロットは最早存在自体が規制対象の様な気もするので、今更の様な気もする。きっと、この動画を公開しても、『ああ、また変態(シャーロット)がなんか言ってら』と大半の者は思うに違いない。


 それくらい、シャーロットのアリス狂いは有名な話なのだ。


 だが、魔法少女を良く思わない者も世の中には存在する。揚げ足を取りたい奴らにとっては格好の餌だろう。シャーロットは良いが、アリスがその餌にされるのは気にくわないので、ちゃんと規制をする。


 存在が炎上案件のシャーロットには気を遣う必要は無い。


 時折二人に茶々を入れられながらも、アリスは着々と料理を進めていく。


 魔法を使った料理はまるで映画のように華やかで、一種のパフォーマンスのように芸術的で、見ている者を楽しい気持ちにさせる。


 詩とシャーロット以外も、思わず見入ってしまう光景だ。


「出来た」


 暫くして料理が完成すれば、盛り付けのされた皿は勝手にローテーブルまで運ばれていく。


「スープとサラダも作った」


 オニオンスープに市販のドレッシングをかけただけのシンプルなサラダ。


 取り皿やらなにやら、調理器具も宙を舞ってローテーブルへと向かう。


「CG要らず」


「映画業界涙目」


「「ぴえん」」


 唯と一が冗談を言いながら、即座にローテーブルの前に座る。


「人の仕事は取りたくない」


四人(こいつら)の仕事は取ったのに?」


「……それは別」


 朱里が悪戯な笑みを浮かべて言えば、アリスは少しだけ申し訳なさそうにして言い訳をする。


「ともかく、食べる。午後もいっぱい働いて貰うから」


「言われなくても働くわよ。土臭いけど、これも仕事の内ですからね」


 全員がローテーブルの前に座り、準備が整えばアリスが食前の挨拶をする。


「いただきます」


「「「「「「「「「「「いただ()まーす!」」」」」」」」」」」


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