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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第3章 眠れる■星の■
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異譚43 古代的魔法少女形態

レビューいただきました

ありがとうございます

 イェーガーの援護を受けながら、アリスは背後に追いすがる敵をぶっ千切る。


 致命の剣列(ヴォーパルソーズ)を全て集め(・・)、一つの大剣を生み出す。


 致命の大剣(ヴォーパルソード)。アリス最大の魔法にして、一撃必殺の魔法。


「……やっぱり」


 手元に在る致命の大剣(ヴォーパルソード)はやはりアリスの知っている見た目とはかけ離れた物だった。


 無骨だった大剣の意匠は煌びやかに彩られている。古代的でありながら現代的、現代的でありながら未来的。そんな見た目をした大剣の刀身は一切の光の反射を許さない程に、また深い闇を思わせる程に黒かった。


「く、黒い、致命の大剣(ヴォーパルソード)……?」


「危ないからポケットの中から出ないで」


 目に見えた明らかな異常に困惑するサンベリーナ。しかし、アリスは構わずサンベリーナの頭を押してポケットの中に詰め、致命の大剣(ヴォーパルソード)を握る。


 耐衝撃シールドに直撃するその瞬間、アリスは躊躇う事無く致命の大剣(ヴォーパルソード)を振るった。


 強烈な衝撃がアリスを襲う。だが、あの時の直撃程ではない。


 黒い極光が耐衝撃シールドに弾かれる。四方八方に飛び散る黒い極光は地面を穿ち、建物を破壊する。


『ちょっと!! アンタが街を破壊してどーすんのよ!!』


「サンベリーナ!! 背後は任せた!!」


「わ、分かったよぅ!! 絶対護るからねぇ!!」


『いや聞けし!!』


 ロデスコを無視して話を進める二人。ポケットの中で声を上げ、アリスに防護魔法をかけるサンベリーナ。


『アリス!! いったん止めて!! 味方が巻き込まれちゃうわ!!』


「大丈夫……っ!! もう少し……っ!!」


『もう少しでこっちが死にそうなんですけど!?』


 もう少し、あと少しでナニカが掴めそうなのだ。


 アリスは今まで致命の大剣(ヴォーパルソード)を、全ての致命を揃えた究極の魔法くらいにしか捉えていなかった。


 だが、その思考は浅かったと言わざるを得ない。


アリスの致命の大剣(ヴォーパルソード)は耐衝撃シールドには効いていない(・・・・・・)。つまり、耐衝撃シールドへの致命が無い(・・・・・)と言う事になる。


 結論、アリスの致命の大剣(ヴォーパルソード)は完全ではない。今目に見えている変化も含めて、致命の大剣(ヴォーパルソード)はまだまだ進化の余地があると言う事に他ならない。


 ヴルトゥームの科学はアリスの及び知らぬ代物だ。及び知らぬ代物に対する致命など分かるはずもない。


 だから、結局のところ、求められるのは純粋な破壊力だ。


 生半(なまなか)な魔法では難しいだろう。けれど、アリスが今手に持っているのは最強の魔法、致命の大剣(ヴォーパルソード)だ。


 その致命の大剣(ヴォーパルソード)も、今や進化を遂げている。それを、今まさに実感している。


「あ、アリス……大丈夫?」


 サンベリーナもアリスの致命の大剣(ヴォーパルソード)を何度か見ている。致命の大剣(ヴォーパルソード)の一回の消費魔力量もおおよそだけれど理解はしている。


 先程から、アリスはその魔力消費量を大きく(・・・)超えている(・・・・・)


「大丈夫。まだまだ全然」


 アリスの目には目前の障害しか映っていない。


「こんなものじゃない……致命の大剣(ヴォーパルソード)は、こんなに弱くない(・・・・)


「あ、アリス……?」


 致命の大剣(ヴォーパルソード)がもっと強い事をアリスは知っている(・・・・・)。記憶に無くとも憶えている(・・・・・)


 思い出せ。思い出せ。思い出せ。


 アレ(・・)殺した(・・・)時の事を。思い出せ。■■■■■■■(・・・・・・・)を殺した時の事を。


 忘れていても知っているはずだ。忘却は枷の代償。枷の一つは外されて、忘却の少しは蘇ったはずだ。


 思い出せ。自分が何者であるか。


 思い出せ。自分がどれほどの者なのか。


 この世にふたり(・・・)と居ない、■■■■(・・・・)だと思い出せ。


 致命の大剣(ヴォーパルソード)の古代的に見える意匠がほんのりと光を放つ。


 アリスの服が形を変える。


 髪は黒く短くなり、肌は焼けたように褐色に色付く。空色のエプロンドレスは色を薄くし、最早白と見紛う程度にしか青を残さなかった。袖は全て無くなり、手首には黄金に煌めくバングルがはめ込まれる。


 黄金と宝飾の込められた髪飾りと襟飾り。アリスの左目の下まぶたから黒い線が伸び、その少し横から先の丸まった黒い線が伸びる。


 その様相を一言で表すのであれば、エジプトのファラオが当てはまるだろう。


 肩まで覆う襟飾りの下から、青色の外套が伸びる。


「あ、あああああアリス!? あ、アリスが、え、エキゾチックになったよぉ!! 嬉しい綺麗最高!!」


 ポケットの中から顔を出して興奮するサンベリーナを気にした様子も無く、アリスはいったん致命の大剣(ヴォーパルソード)を止める。


 致命の大剣(ヴォーパルソード)極光はなりを潜め、アリスは耐衝撃シールドから離れる。


 サンベリーナは喜んでいるけれど、戦場に居る誰もがアリスのその異質さを感じ取っていた。


 今までに感じた事の無い魔力量。そして、魔力の質。あまりにも異質。魔法少女とも、異譚生命体とも違う魔力。


 敵も、味方も、誰も彼もがアリスに注意を払う(・・・・・)


 誰の目も気にした様子も無く、アリスは星間重巡洋艦のみに注意を払う。


 アリスは右目を閉じ、左目だけで星間重巡洋艦を見やる。


「……なるほど。空間を断裂してるのね」


 耐衝撃シールドは空間を断裂させているのだ。空間が断裂されているからこそ、魔法が通らない。魔法だけでは無く、人も、物も通らない。


 空間と空間の間に虚無が在る。その虚無はあらゆるものを拒絶する。だから何も通らない。虚無は何も通れない。


 分かっていた事だけれど、かなり高度な科学だ。今の地球の科学など足元にも及ばない程の科学力。


 だが問題無い。科学が負けていても、魔法では負けていないのだから。


「ロデスコ。後に続いて」


 ロデスコの返事を聞かず、アリスは致命の大剣(ヴォーパルソード)を握る。


 アリスの致命の大剣(ヴォーパルソード)に含まれる致命が更新される。


 相手が虚無であれば、そこに実在(・・)を与えてやれば良い。アリスの致命の大剣(ヴォーパルソード)であれば、それが可能なのだから。


 高速で星間重巡洋艦へ迫る。そして、致命の大剣(ヴォーパルソード)を振るった。


 たったの一撃。今までの拮抗が嘘のように、耐衝撃シールドに大きな穴が開いた。


「わ、わわわっ!! す、凄いね、アリス!!」


 きゃっきゃっとポケットから顔を出して喜ぶサンベリーナ。


「そうね」


 サンベリーナを見てふっと笑みを浮かべる(・・・・・・・)アリス。


 その笑みを見て、サンベリーナははわわと顔を赤くする。


「アンタ、随分とイメチェンしたじゃない」


 後に続けと言われたロデスコは、アリスの言葉を疑う事無くその後に続いていた。


 しかし、アリスを見る目は少しばかり厳しい。見た事の無いアリスの恰好や、感じた事の無い魔力の質。信頼できる仲間だとは言え、警戒をしてしまうのは当然だ。


「……ほんとだ」


 ロデスコに言われて気付いたのか、アリスは自身の恰好を見て驚いたように目を見開く。


「ほんとだって……アンタねぇ……」


 見た事が無い恰好をしていて、感じた事の無い魔力の質。けれど、変わらないアリスの反応に思わず警戒が緩む。


 アリスが致命の大剣(ヴォーパルソード)を消せば、アリスの姿も瞬く間にいつもの姿に戻る。


「ひとまず、行きましょう。後ろも騒がしくなってきたからね」


 ロデスコが進む事を促せば、アリスはこくりと頷いた。


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― 新着の感想 ―
クトゥルフ感が増えてきたことに喜びを禁じ得ない
[良い点] おやぁ? 口調が女の子っぽく……
[一言] 忘却が枷になってるのか、、、 おもしろくなってきたぁ!元から面白いけど
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