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魔法少女異譚  作者: 槻白倫
第3章 眠れる■星の■

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異譚21 お夕飯

明けましておめでとうございます。

活動報告にも書きましたが、年末はコロナにかかっていたので投稿できませんでした。申し訳無いです。

体調の方も良くなってきたので頑張って更新します。


また、レビューを一件いただきました。とても嬉しいです。

レビューだけでなく、感想、評価、ブクマ、いいねもとても励みになっています。

今年もよろしくお願いします。


 夕方まで異譚は発生せず、夜になっても異譚は発生しなかった。


 春花はアリスのプライベートルームにて異譚が発生するまで待機する。


 その間に特にやる事も無いので、アリスの戦闘記録をまとめたり、他の魔法少女の記録に目を通したりしていた。


 明日もリモート授業だ。遅くまで起きていても、ギリギリまでゆっくり眠っていられる。


「キヒヒ。アリス、夜更かしするとお肌に悪いよ?」


「今日はお肌綺麗って言われたよ」


「キヒヒ。社交辞令さ、アリス」


「分かってるよ。別に本気にしてない」


 今日会ったばかりの少年に悪い事を言えるような少女達ではない。けれど、本気で褒め合ったりする程の仲でも無い事は分かっている。


 春花は端末を閉じると、冷蔵庫へと向かう。アリスの戦闘記録をまとめたり、他の魔法少女の記録に目を通したりと作業に夢中になっていたので、まだご飯を食べていないのだ。


 冷蔵庫には飲料水が入っているけれど、それ以外は調味料などしか置いていない。冷凍庫を見れば、中には電子レンジで調理できる冷凍食品が入っている。


 春花は冷凍パスタを取り出して電子レンジに放り込もうとする。


「駄目だよ、アリス。キヒヒ」


「なにが?」


「キヒヒ。これから先、泊まり込みするのなら食事のバランスを取らなくちゃ」


「これ、栄養バランス取れてるやつだよ?」


 春花が手に取ったのは栄養バランスを売りにしている商品だ。そもそも、アリスのプライベートルームに入れる食品は沙友里が管理しているので、栄養バランスに問題は無い。


「キヒヒ。冷凍食品だけじゃ味気無いじゃないか。カフェに行こう、カフェ」


 言って、チェシャ猫は春花の肩の上に乗る。


 時計を見やれば、カフェはまだ営業している時間帯だ。カフェが閉まっていても、二十四時間営業の売店がある。そこでお菓子やら飲み物やら買う事が出来る。


 春花としては冷凍食品でも構わない。バランスよく栄養が摂れるのであれば、冷凍だろうが作りたてだろうがなんだって良い。


 だが、チェシャ猫が文句を言うのであればカフェに行くのもやぶさかではない。特にこだわりがある訳では無いのだから。


 チェシャ猫を肩に乗せたまま、春花はカフェテリアに向かった。


「キヒヒ。何を食べるんだい?」


「パスタ」


 一番安いパスタを頼み、番号札を持って席で待つ。


 暫くして、パスタが運ばれてくる。ミートソースのかかったシンプルなパスタだ。


 くるくるとフォークで巻いて、ぱくりと食べる。


「キヒヒ。もっと良いものを食べれば良いのに」


「良いものって?」


「キヒヒ。ステーキとか」


「そんな贅沢なもの、カフェに置いて無いでしょ」


 黙々と一人と一匹でパスタを食べていると、楽しそうな少女達の声が聞こえてくる。


 特に気にする事無くパスタを食べていると、不意に隣に料理の乗ったトレーが置かれる。


「あ、有栖川君、ま、まだ残ってたんだね」


 にへらっと笑みを浮かべながら隣に座るみのり。


「うん。指出さんも、残ってたんだね」


「う、うん。今日から皆で(・・)泊まり込みなんだ!」


「え?」


 みのりの言葉に思わず呆けた声で返してしまう春花。


「あんた、まだ居たんだ」


 みのりの対面に座る珠緒が冷たい声音で言う。


「そんな言い方しないの。春花ちゃん、お仕事だったの?」


「あ、はい」


「そうなんだ。お疲れ様ぁ」


 にこっと笑みを浮かべながら春花を労う笑良は、珠緒の隣に座る。


 笑良の労いの言葉に、春花はぺこりと頭を下げる。


「それで、泊まり込みって?」


 春花がみのりに訊ねれば、春花の隣にかちゃりとトレーが置かれる。


「ウチの英雄様が泊ってるから、アタシ達も泊まり込みするってわけ」


 言いながら、春花の隣に座る朱里。


「良い迷惑よね、ホント」


「今回の異譚が終わるまでなんだから、我慢しなさい」


 朱里の隣に白奈が座る。


「発案は朱里」


「言い出しっぺ」


 唯と一が隣り合って座る。


「アイツが泊まり込みなんてしなけりゃ、こっちだって言い出さなかったっつうの」


「でも自分、合宿みたいで楽しいッス!」


「私も、こういうお泊りは初めてなので楽しいです!」


 よちよち最年少二人組は楽しそうににこにこと笑みを浮かべている。


「……元気だな、(わけ)ぇの……」


「なんで老人(ロートル)口調なのよ」


「……わたしには、無い、若さ……沁みるぜ……」


 言いながら、スープを呑む詩。


 気付いたら童話組に囲まれており、逃げ場が無くなってしまっている。どこに逃げるんだという話ではあるけれど。


「そう。そっか……」


 朱里の言葉を聞いて、納得したように頷く春花。


「それは、大変申し訳無い……」


 ぽそりと誰にも聞こえない程度の声音でこぼす春花。


 アリスの行動のせいで、皆にも無理を強いてしまっている。


 対策軍に泊るという事は、私生活を削るという事だ。


 春花の知らない私生活の部分が彼女達にはあって、それを削ってまで異譚に費やさなければいけないというのはあまり健全とは言えないだろう。彼女達は魔法少女である以前に一人の少女なのだから。


 一時(いっとき)であろうとも、彼女達が身を削らせてしまうような状況を作ってしまい申し訳なく思う春花。


「まぁでも、遅かれ早かれよね」


 落ち込む春花には気付かず、朱里がオムライスを食べながら言う。


「そうね。異譚が長期化するなら、いずれはこういう事態になってたと思うわ」


「てか、いつまで続くんだよこの異譚。このまま続くと負けんのこっちだろ?」


異譚に打ち止めがあるのかは分からないけれど、こちらには()がある。それに、向こうは寄生植物を使ってくるので、兵力は現地調達が出来る。


「早めに終わってくれれば良いんだけどねぇ」


「前例が無い以上、どういう着地になるかは分からないわね」


 笑良と白奈はあえて負けるという言葉には反応しなかった。


 彼女の言い分が正しいとはいえ、この場で言う事ではない。


 異譚の数値を見ても、多少の増減はあるもののそこまで大きな変化ではない。誤差と言っても差し支えない程の差だ。


 いつ、どこで発生するかも分からない異譚。それが、連続して発生しているともなれば、心は休まらないだろう。


 根本的な異譚の解決は必須だ。けれど、異譚は未だ多くの謎に包まれている。根本的な解決とは程遠い現状では、ただ耐え忍ぶしか方法は無かった。


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― 新着の感想 ―
[一言] 春花が手に取ったのは栄養バランスを売りにしている商品だ。そもそも、アリスのプライベートルームに入れる食品は沙友里が管理しているので、栄養バランスに問題は無い。 入れる→いれる
[一言] 明けましておめでとうございます!
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