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ショートショート4月~3回目

弱い存在は、強い存在に負けている

作者: たかさば
掲載日:2022/04/25

 小さな男の子が泣いている。

 …どうやら、お姉ちゃんにおやつを取られたようだ。


「ひどいよ、ぼくのなのに!」

「だってあんたは弟じゃない!姉の言うことは聞きなさいよ!!」


 男の子は、唇を噛みながら、わがままな姉を睨みつけることしかできなかった。



 小学生の女の子が泣いている。

 …どうやら、お母さんに怒られたようだ。


「なんで新しいゲーム買ってくれないの!」

「遊んでばかりで全然勉強しないじゃない!ダメダメ!!」


 女の子は、奥歯をぎりぎりと噛み締めながら、わからずやの母親を見上げることしかできなかった。



 疲れた顔をしたお母さんが涙を一粒こぼした。

 …どうやら、旦那さんが話を聞いてくれないようだ。


「ねえ、少しは育児や家事に協力して欲しいよ!」

「俺は働いているんだ、無理に決まってるだろ!」


 お母さんは、口を噤んで、思いやりのない旦那によく冷えたビールを用意することしかできなかった。



 怒りを隠しきれないお父さんが不服を申し立てた。

 …どうやら、上司が実績を蔑ろにしているようだ。


「僕は一生懸命やっています、どうして認めてくれないんですか!」

「みんながんばっているのに、お前だけ特別扱いできない!」


 お父さんは、口元を派手に歪めて、横暴な上司の言い分を飲み込むことしかできなかった。



 有能な会社員が事実を訴えた。

 …どうやら、社長に詰問されているようだ。


「もう無理です、どうして決断されないんですか!」

「何を言っている、何とかするのがお前の仕事だろう!」


 有能な会社員は、頭を抱えて、逃げ出す準備を始めることしかできなかった。



 社長が腕を組みながら歩き回っている。

 …どうやら、政界のトップに合わせる顔がないようだ。


「死力を尽くしましたが、もはや手の打ちようがないんです!」

「そんな言い訳が通用すると思っているのか、やれと言っている!」


 社長は、うろたえたまま、胸を抑えて倒れこむことしかできなかった。



 政界のトップが拘束され身動きが取れないでいる。

 …どうやら、未知の生物に捕獲されたようだ。


「こんな事をしても、人類は希望を捨てずに……!!!」

「希望は持ったままでいい、ただ意味がないだけ」


 政界のトップは、目を見開いたまま、頭からバリバリと捕食されることしかできなかった。



 未知の生物が地球から旅立った。

 …どうやら、行き場を探しているようだ。


「これから、どこに行こうか」


 言葉を返すものは、いない。


 未知の生物は、黙って宇宙を彷徨うことしか、できなかった。


 強さを競う存在のいない生物は、命を持たない何かに観察されていると気付かずに、孤独に命を終えた。


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― 新着の感想 ―
[一言] 上には上が、というかね。食物連鎖的なやつですね。下に対しては、みんな、強気ですから。 下に優しくできれば、上からも優しくしてもらえると、どうして気付けないのでしょうかね〜。
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