1
29歳、夏。
「お母さーーーーーん!お腹すいたー!!!」
今年で小学6年生になる息子が帰ってきた。
ここは母の実家で、5年前までお祖父ちゃんが、3年前までお祖母ちゃんが一緒に暮らしていた。
どちらも病気で亡くなってしまって、母も今は私の父とは別な人と家庭がある。
私、平原花音と息子の平原瑞稀の2人暮らしだ。
2人で暮らすには十分な平屋建て。冬の寒さは優しく、夏の暑さは厳しいこの島は、わたしも瑞稀を産んだから初めてきた。
母は昔、この島の田舎具合が嫌いで、高校を出て単身、東京に出てきたらしい。
そして父と出会い、結婚。父が交通事故で亡くなるまで、私たち家族は仲良く暮らしていたと思う。
母は恋や愛がないと生きていけない性格で、父が亡くなってからの落ち込み様は見ていられなかった。
まだ3歳だったわたしもはっきりと覚えている母の姿。
それから死に物狂いで夜も昼も働く母は、私が10歳の時に再婚する。
その人との子供ができ、私はなんだか1人になったような感じがしていた。
幸い、新しいパパは金持ちで、遠慮しい人で、私が高校生になって一人暮らしをしたいと言ったら、快くOKをしてくれた。
そして、母とパパと、妹と弟が暮らす家をあとにしたのだ。
暮らし始めた、セキュリティがしっかりした単身者むけのマンションでの暮らしは、私にとって幸せだったんだと思う。




