表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/12

第三十八章 隆一の同級生、人質になる

やがて愛美も小学校に入学した。

広美と隆は、愛美の入学式には有給休暇を取得していた。

入学式当日、愛美は初めてのランドセルに喜んで両親と登校した。

数日後、隆一が、「先日、愛美の入学式に参加していたので今度は僕の番だ。来週の授業参観に来てよ。」と頼まれた。

広美は、「時間が取れれば行くわね。」と事件が発生しない事を祈っていた。

授業参観当日、特に事件も発生しなかった為に、緒方係長に理由を説明して早引きして隆一の授業参観に向かった。

今年の隆一の担任の先生は榎本先生で、広美が刑事だとは、まだ知りませんでした。

授業参観では、先日の授業で作成した作文を発表した。

父親は仕事で、母親が子どもの世話をしている場合が多いので、母親の事を作文で書くように指示していた。

榎本先生は順番に子ども達に発表させてコメントを述べていた。

榎本先生は、高木君の母親は公務員だと知っていた為に、専業主婦ではない、硬い仕事をしている隆一の母親の事が知りたくて、隆一を指名した。

隆一は、母は京都府警捜査一課の刑事です。殺人事件を担当している母は、凶悪な殺人犯と何度も取っ組み合いをしていて、学生時代射撃部だった為に銃の腕は確かで、殺人犯と何度も銃撃戦をしている事や、事件が発生していない時は、拳銃を携帯して市内を巡回している事などを発表した。

安達君がいじめっ子に、「知っているよ。京都府警の鬼軍曹だろ。何人もの犯罪者を銃で撃ったと聞いたぞ。お前いつまでも悪い事をしていると、高木の母ちゃんに撃ち殺されるぞ。」と笑っていた。

広美は教室の後ろで、「あの子ったら。」と恥かしそうにしていた。

広美の横にいた安達君の父親が、「高木君のお母様が刑事だと知っていましたが、まさか、そんなにすごい刑事だとは知りませんでした。」と驚いていた。

榎本先生は、予想外の展開に慌てて、「その話はそのくらいにして、次の人。」と作文の発表を続けた。

授業参観も終わり、その日は無事に終わった。

    **********

翌日安達君の父親の浩が会社の車で営業中、女房から何度か携帯に着信があったが浩は、“五月蠅いな、今仕事中だ。”と電話にでませんでした。

しばらくすると覆面パトカーが、「緊急車両通過します。進路を譲って下さい。」とスピーカーで呼びかけながら、緊急走行してきた。

聞き覚えのある声だったので、覆面パトカーに乗っている刑事を見ると、“高木君のお母さんだ。”と思っていると、再び女房から着信があった。

浩は嫌な予感がして、車を路側帯に停車させて携帯にでた。

女房は、「何度も電話しているのに何故でてくれないのよ!浩二がコンビニ強盗に人質として捕まっているのよ。警察には通報したけど、私、どうすればいいの?」と気が動転している様子でした。

浩は、「お前、先日の授業参観で、高木君のお母さんと仲が良さそうだったね。」と広美がその事件現場の方向に向かっていたので相談しようと考えていた。

女房は、「何言っているのよ!今それどころじゃないでしょう!」と取り乱していた。

浩は、「高木君のお母さんが、京都府警の鬼軍曹だと言っていただろう。その鬼軍曹が、今、覆面パトカーでそちらに向かっている。高木君のお母さんに相談しろ。」と助言した。

    **********

女房は、広美の覆面パトカーに気付いて、「高木君のお母さん、浩二が、浩二が・・」とコンビニを指差していた。

広美は、「人質は小学生だと聞いていましたが、浩二君なの?」と確認した。

女房は、「そうです。浩二を助けて!ドラマなどで、刑事さんが店員に変装して出前を持って行って人質を助ける事が・・・・」と取り乱していた。

広美は、「コンビニには、おにぎりやパンなど、調理しなくても食べられる商品があるので、犯人が出前を要求する可能性は低いわ。ここは警察に任せて下さい。彼女をお願いします。」と彼女の事を近くにいた警察官に依頼した。

緒方係長がスピーカーで犯人に呼び掛けた。

「ここは警察が取り囲んでいます。諦めて人質を解放して出てきなさい。人質を傷つけたり殺したりすれば、ただでは済まないぞ。何か要求があるのだったら相談にのるぞ。刑事が一人、そこへ行っても良いか?」とコンビニ内部の様子が把握できず、人質の安否確認もしようとしていた。

その間、広美はコンビニ内部の図面を入手して作戦を立てていた。

「五月蠅い!来るな!お前ら警察は信用できない。」とコンビニ内部から、大声で拒否した。

「警察じゃなかっら良いのか?誰だったら良いのだ?」と何とか犯人と接触して、人質を救出しようとしていた。

「動きやすい洋服はダメだ。和服女性なら考えても良いぞ。」と拒否が和らいだ。

「和服女性と言っても、色々あるぞ。どんな女性なら良いのだ?」と犯人が何を考えているのか知ろうとしていた。

「客商売の芸者などはどうだ?」と提案した。

緒方係長は、「芸者?どんな芸者なら良いのだ?」と広美をチラッと見た。

広美はその視線を感じ、「ちょっと、皆、何見ているのよ。」とこの先どうなるか予想できた。

「刑事が芸者に変装できないように、俺が知っている芸者なら良いぞ。ここにある雑誌に、人気No.1の売れっ子芸者、鶴千代の写真がある。この芸者にしろ。」と大声を出すのもしんどく、警察以外の一般市民に伝言役をさせようと考えているようでした。

「鶴千代さんと交渉するから少し時間を下さい。」と時間稼ぎして一旦交渉を中断した。

    **********

「高木君、聞いたように犯人が交渉役として鶴千代を指名した。署に戻って武装した上で芸者として来て下さい。」と指示した。

広美は、「了解。」とその場を離れた。

下鴨警察署の中村刑事が、「待って下さい高木主任!まさか、一般市民の鶴千代さんに協力させるのですか?私の父は会社社長で、お座敷に鶴千代さんを呼んだ事があります。お淑やかな女性で、このような交渉は無理です。彼女に万が一の事があれば、どうするおつもりですか?」と鶴千代に危険な事をさせたくない様子でした。

広美は、「彼女に万が一の事があれば、私が責任を取るわ。私が一生彼女の面倒を見るわ。」と準備に向かった。

広美に食い下がる中村刑事に後藤刑事が、「中村刑事、あなた、一度お座敷で会っただけでしょう?鶴千代さんの事をどれだけ知っているの?」と止めた。

中村刑事は、「鶴千代さんは、そんな事、絶対引き受けないぞ。」と後藤刑事を睨んだ。

後藤刑事は、「主任がその気になれば、鶴千代さんは拒否しないわ。必ずここに来るわ。」と無意味な議論だと判断してその場を離れた。

しばらくすれば鶴千代が来たので、中村刑事は驚いて、「鶴千代さん、何故こんな危険な事を引き受けたのですか?」と予想外の展開に戸惑っている様子でした。

広美は、「犯人が私を指名したので来ました。」と中村刑事とは裏腹に冷静で、緒方係長の所へ行き打ち合わせした。

中村刑事が、その打ち合わせに割り込もうとしたので後藤刑事は打ち合わせが混乱すると判断して止めた。

「大丈夫です。鶴千代さんには検挙率No.1の主任が貼りついています。」と中村刑事を、打ち合わせから引き離した。

その後、鶴千代が一人でコンビニに向かったので中村刑事が、「高木主任はどこですか?彼女一人で行かせるのは無謀です。」と反対していた。

    **********

中村刑事は反対しても埒があかないので、こっそりとコンビニの裏から侵入しようとしていた。

広美は犯人と交渉していたが、犯人が興奮していた為に心配した中村刑事が飛び出した。

犯人は中村刑事に気付いて警察に騙されたと判断した。

「貴様!警察を連れて来たのか!」と人質の子どもを刺そうとしていた。

広美は、“あのバカ!”とやむを得ず、犯人が振り上げた右腕を銃で撃ちぬいた。

犯人が刃物を落とした為に、広美は犯人を突き飛ばして、人質を抱きかかえてコンビニを出て、「突入!」と指示して、人質の子どもを母親の所へ連れて行った。

警官隊は、高木主任がどこから指示したのか解りませんでしたが、確かに、高木主任の声だった為に突入して犯人は逮捕された。

広美は、「緒方係長!中村刑事が飛び込んで来なければ、人質を危険な目に合わせる事もなく犯人も無傷で確保可能でした。下鴨警察署に連絡して、始末書を提出するように指示して下さい!」と憤慨していた。

中村刑事は上司から、「京都府警の鬼軍曹が始末書を提出しろとカンカンに怒っているぞ!いったい何をやらかしたんだ。」と怒られていた。

中村刑事は、「だいたい京都府警の刑事が鶴千代さん一人に・・・」と説明していると上司は机を叩いて、「馬鹿者!人気No.1の売れっ子芸者と、京都府警の鬼軍曹は同一人物だ!鶴千代さんが拳銃を所持していた事を不思議に思わなかったのか?お前が余計な事をしなければ、人質を危険な目に合わせずに犯人を無傷で確保できたとカンカンだぞ。一歩間違えれば人質は殺されていたかもしれないのだぞ!始末書を提出しろ。」と指示された。

中村刑事は、「二人が同一人物なのは本当ですか?何故課長はそんな事をご存知なのですか?」と疑問に感じた。

上司は、「彼女は昔、下鴨警察署に在籍していました。その時に捜査でチームを組んだので知り合いました。彼女の実家は置屋で、学生時代から鶴千代の源氏名でお座敷に出ていたそうだ。無茶する事もあるが、刑事としても優秀でしたので京都府警に栄転になったんだ。」と説明した。

中村刑事は広美に連絡する勇気がなく、後藤刑事に確認の電話をした。

後藤刑事は、「だから、あの時、鶴千代さんの事をどれだけ知っているのかと確認したわよね。何も知らないのだったら黙って指示に従いなさい!主任が発砲しなければ、人質は殺されていたかもしれないのよ!」と切れた。

中村刑事は、「それだったら、そうだと説明して下さいよ。」と不満そうでした。

後藤刑事は、「犯人は一人で、生理現象もあり焦っている様子でしたので、一刻を争う状況でした。説明している間に人質が殺害される可能性もあったからよ。」と説明した。

中村刑事が上司に謝っていると署長から呼び出された。

署長は、「中村君、京都府警の鬼軍曹を怒らせてしまったようだな。済んでしまった事は仕方ない。あまりくよくよせずに、今後頑張ってくれたまえ。」と上司や京都府警から怒られているようでしたので慰めていた。


次回投稿予定日は、10月29日を予定しています。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ