2.ある朝の出会い─1
気弱な学生、田中優希。彼の学校生活は厳しい日常だった。しかし、そんな彼が学校に行き続けるのには理由があった。その理由とは。
ある朝のこと。僕はあまり寝坊しないのだが、今日は珍しく寝坊してしまった。こんな時間に起きたのは初めてで、遅刻するような時間なのかどうかもわからない。とにかく僕は急いで支度をして家を飛び出た。
僕は電車通学だ。しかし、いつも同じ電車に乗っているので、他の電車の来る時間が全くわからない。こんな日が来るなら時刻表を覚えておけばよかった。とりあえず、今は駅に向かって走るしかない。今まで散々パシリをして走ってきたが、こんなときに役に立つとは。
やっと駅についた。駅の時刻表を見ると、もうすぐ電車が来る時間みたいだ。ギリギリ間に合ったみたいだ。さて、ここから学校に間に合うのだろうか…。そんな不安を抱えながら、僕は電車に乗った。
ああ、電車に乗ってようやく座れた。今日初めて落ち着いたな。電車の電光掲示板の案内を見ると、学校には遅刻せずに済みそうなことがわかって安心した。そんなことを考えていたら、朝急いで走った疲れもあったのか、僕はいつの間にか寝てしまっていた。
夢の中で僕は、女の子に声をかけられていた。
「貴方、私と同じ学校の人ですよね? もう駅ですよ?」
夢の中で、女の子の友達がいないはずの僕が、女の子に話しかけられていた。
「起きなくていいんですか?」
僕たちは何の会話をしているのだろうか。夢の中だからか、よく覚えていないな。そして夢の中の僕はこう訪ねた。
「ごめん、何の話してたっけ」
女の子は苦笑いをした。その後、別の方向を見てから、焦った表情をしながら僕の肩をを掴んで前後に揺らした。
「もうドアが閉まっちゃいますよ! 早く起きないと乗り過ごしちゃいますよ!」
なんか随分とリアルな夢だな。肩に体温の温かさが感じられる。不思議な夢だ……あれ? 今彼女は、なんて言っていた?
早く起きないと乗り過ごす……起きないと?
「えっ!? 僕、寝てました!?」
「そうですよ! ほら、早く降りないと……!」
今までの出来事は夢なんかじゃなかった。慌てて僕達は、電車を降りた。
危なかった……。彼女に起こしてもらわなかったら、乗り過ごして学校に遅刻してしまうところだった。彼女には感謝しなければ。
「あの……。起こしてくれて、ありがとうございます。あと、寝ぼけていて本当にすみませんでした……」
「気にしないで下さい。同じ電車に寝ている同じ学校の人がいたら流石に起こしますよ」
彼女にとって、知らない人に話しかけることに抵抗はないのだろうか。僕には到底できないことだ。
「さ、そろそろに学校行かないと、寝過ごさずに済んだのに、学校に遅刻してしまいますよ」
「そ、そうですね。行きましょうか」
僕と彼女は横に並んで学校に向かって歩き始めた。
前回の反省点を活かして頑張りました。そして今回から、前書きと後書きを書くようにすることを決めました。
次回もよろしくお願いします。