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この作品には 〔ボーイズラブ要素〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

五万打(サイト)

乙女ゲーでお兄ちゃんによる妹を守れ

作者: 鼻息

乙女ゲーム(※)を心底好きな方には不快な表現が入る可能性があります。以上を理解した上でご覧ください。


※乙女ゲーム…乙女向け恋愛シュミレーション





 最近、妹が可笑しい。

 伝は、さらに違和感を募らされる出来事を目の前に、確信した。

「お兄ちゃん?」

 上目遣い。故意か無意識か微妙なラインだが、それはいわゆる誘惑的なものが混じっている。

「やっぱり、駄目?」

 ちょっと悲しげに、そんな可愛げのある性格ではなかった。少なくとも、高校入学1ヶ月前までは。

「…いや、見てやる。つか、どーしたいきなり。いつもは、宿題見てよ!ってものを頼む態度じゃねぇのに」

(誰だ?こんな、やり方を教えたのは!)

「はああ?人がせっかく殊勝に頼んでるのに!」

 途端にいつも伝が見慣れた妹に戻る。安堵した。鳥肌も立った。まだ、‘女’には早すぎる。

 恋に青春を傾け過ぎた‘両親’の交友関係を見てるからこそ、分かるのだ。今、妹に必要なのは、友人とキャイキャイ馬鹿やる青春だ。

(いや、まて先走るな)

 妹に探りを入れてからでも遅くない。伝は、表面上はいつも通りに、妹に質問する。内容は、遠回しな交友関係の探りであった。




 騙されてる。

 伝が、その男に思ったのはそれ一言のみである。すっと引き締まった頬と正対比完璧な顔。背もそこそこ高そうだ。

 正に、まさしくイケメン。だが、崩した制服や立ち振る舞いが夜の人間にほどなく近い。ざっくり偏見で言うとホストっぽい。

 要は、凡庸な妹よりランクの高い女を選り好み出来る男であるという点。

 つまり、非常に不愉快なことに妹は遊ばれてる可能性がある。

 身体目当てか。身体目当てだろ。

 もはやそれ以外考えられない。高校1年時の自分を振り返り、やはりそうとしか思えなかった。


「ごめんね、ヨウ君。ちょっと色々あって」

 別に、伝が妹にネチネチ絡んだとかは決してない。

「ふっ、別に?…馬子にも衣装ってか」

「なっ、」

 すっと、男の手が妹の顎にかかる。その親指が妹の唇をなぞるにあたり、伝は力いっぱい、鞄を投げた。

「チェストォオオ!」

 ごふ、とホストっぽい男略してホストから声が上がった。通行人がギョッとして立ちどまる。

 のどかなデートスポット公園の珍事件。

 しかし、意外と手強い。顔面にボストンバックを受けながら、ホストは倒れなかった。

 伝は、通り魔のごとく、「カップルなんて死ね!」と言いつつ鞄を拾って逃走した。キャップとマスク、サングラス。滅多に着ないジャージ。

 計画的な犯行である。




 教育に悪い。

 伝は、ガンガンと揺れるような騒音音楽にひたすら耐えながら思った。教育に悪過ぎる。しかも明らかに18歳にも満たない妹が通えるような場所じゃない。

 視界の端では、妹が金髪のヤンキーに無理やりダンスホールに連れ出されていた。微妙に楽しそうである。

 一曲終わり、妹が慣れないダンスで疲れて席に戻ったのを確認し、伝は席を立つ。


「おい」

「は、はい」

 なんでしょうかと、どぎまぎしながら言う妹の背伸びした格好に内心ブーイングしながら言う。

「兄貴から伝言だ」

「え?お兄ちゃんから?」

「あと30分以内で帰宅しなければ、親を起こして警察を呼ぶそうだ」

 ガタン。立ち上がり蒼白になってこの場を去る妹は懸命である。実は既に両親は、伝の計らいで妹がいないことにご立腹中だ。伝は、妹を探すと家から出ている。

 妹が兄に気付かなかったのは、ひとえにウィッグと眼鏡のせいだろう。

 携帯を見ると、アナログ数字は1。勿論Aの付く。年頃の娘がうろついて良い時間ではない。


「お前誰だよ」

 不機嫌に微妙に殺気だった声。振り向くと先ほどのヤンキーだ。よくよく見れば、随分と綺麗な顔付きである。ホストとは別向き。

 顔か。顔なのか。そして、客観的には二股だ。

 溜め息を付きながら、伝は、明らかにアルコールを手にした少年の腕をつかみグラスを取り上げる。

「なにしやがる!」

 唸るように低い声。普段の伝ならば、いくら年下といえ恐怖を抱いただろう。ただし。

「少年」

「ああ?」

「俺は、成人している」

「それがなんだっつうんだよ」

「未成年、日本に生まれて残念だな?ドイツあたりだったら飲めたのに」

 伝は、酔っていた。店に入るに当たって何も頼まないなど有り得ないからこそ。

「ははははは!さあ、帰ろうかお家に!」

「おい、待て!」

 会計をしてヤンキーを引きずり出し、そのまま何故かカプセルホテルに連行した伝の飲んだドリンク。ロシア本場ウォッカロック、推定50度。


 翌日。伝は、先払いで既に会計をされたカプセルホテルの入り口で途方にくれた。財布がなかったのである。

とりあえず、立場逆転して心配した両親に散々起こられ、妹に涙ながらどこ行ってたの!と叱られた伝は、「お前を探してたらヤンキーと喧嘩になり、財布盗られたために電車に乗れず歩いて帰ってきた」と話した。携帯は、家に忘れてマナーモードということにした。

 両親が、子供の外出に神経質になったのは、伝にとっては好都合である。




 過保護だろ。友人に呆れながらそう言われる位には、妹に悪影響を及ぼしたと思われる男とのデートを邪魔に邪魔した。

 というかお前誰が本命だよ!と内心恐々としながら6人目と認識する男とのデートを…邪魔する予定だったのだが。


「久しぶりだなあ?」

 にぃと笑うホストがキレる一歩手前の表情で目の前に座った。

 のどかな朝のカフェテラス。一見お洒落マダムの溜まり場になりそうだが、場所は校内のため、実際は思春期真っ盛りの制服男女ばかり。

 カップルだらけの一角。ピンクの空気が、不穏に凍る。

「……」

 4人掛けのソファーに、無言で伝の横に座るのは、妹の何度目かのデートに登場したロン毛ショタである。

 貞子ばりの長髪に全力で引いて、それが妹と歩くのに耐えられなかった伝は、隙をみて彼を美容室に入れて切らせた。別に知り合いでもないのに、それに5千円。

 財布の痛手とは別に、前髪を切りそろえ髪が短くなった少年の真正の童顔ぶりに、妹こそが犯罪を犯しているように思えて謝り倒した記憶は新しい。

 さらにさらに、詰めろよとドリンク片手にホストの横に座る顔に頭を抱えたくなる。

 いつかのクラブに妹を連れて行ったヤンキーだ。財布は、と聞く勇気は伝にはない。


「まず、お前。羽里のなんだ」

「んなの、言えねぇよなあ? ストーカーさんよぉ」

 ドスが利いた声に、嘲りの台詞。何故か、ショタは、無言で伝の制服の袖を引っ張った。因みに、羽里とは妹の名前である。

 さらに、追い討ち。

 ぱさり、と落ちてきた薄い書類。見上げると、茶髪のウェーブがかった眼鏡が、軽薄そうな笑みを浮かべていた。

「君、この私立遊極高等学校の生徒じゃないよね? まあ、その制服は間違いなく他校生だけど」

 勿論です。大学生です。妹の歪み具合が心配過ぎて学生時代の引っ張り出してきました。遊極が制服多種多様のせいか今の今までばれませんでした。

 言える訳がない。


 詰んだ。

 自業自得だけど。

「なあ」

 伝は、バレる一歩手前にて腹をくくった。どうしても聞いておきたい。

「お前らこそ、羽里の何を目指してるんだ? あいつ、今モテ期だかなんだかでお前ら入れて6人とデートしてる」

 伝は、妹も悪いと思っている。もしも、6人が6人とも妹に気があるなら気を持たすようなことをやって継続中なのだから。とんだ小悪魔である。


「…名前」

 突如、無言ばかりで謎だった初対面印象貞子今ショタが、ポツリと言った。

 ふ、と笑うのはホスト。

「正直、他の奴は知らねーが俺は遊びだ。あいつなんか新鮮なんだよな」

 目の前のすました顔に、珈琲をぶっかけたくなる。伝は、自分に我慢の暗示をかけた。かけたが、絶対また奇襲をかけようと決意する。夜道に気を付けろよ、ホスト。

「まあ、ここにいるのは、まずテメエを捕獲っつう意見の連中だ。うちの女子を付け回すって点でな。あとは、」

 ホストは、ショタをみてますます笑みを深くする。

「テメエが何したか知らねーが、そいつ。お前のこと知りてえんだと」

 伝に妹が気付き、ひたすら謝罪しながら逃走するまで、伝は無言の視線に耐え抜いた。




 妹に全てばれた。妹は、恥と思ったのか兄のことを説明出来なかった。今、伝のことを合間合間この手あの手で聞き出そうとする6人に四苦八苦しているらしい。

「彼氏って言えば」

「絶対、嫌!」

 新たな悩みが増える伝であった。





20120318 

設定


6人は全員顔見知りかそれ以上の繋がり有り。生徒会とかそんなの。


キャラとしては、無口にホストに不良にチャラオに優等生に病気。


裏設定


両親は、乙女ゲーの主人公(母)とギャルゲーの主人公(父)。つまり周りはあれです。






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