公務執行妨害
「すいません、警察です。ちょっと事情をお聞かせ願えますか?」
女の子の告発を受け、警官はさっそく彼女の自宅を訪れていた。そして、娘である女の子の告発と、何人もの証言から、母親はマンション高層階から物を投げ落とし、地上を通りがかる通行人に対して傷害を負わせようとしたという疑いで任意同行を求められた。
しかし母親は「知りません!」と否認し、それでもなお任意同行を求める警官に対して「死ね!」と罵りながら熱湯の入ったヤカンを投げつけるという行為に至り、その場で公務執行妨害で緊急逮捕となったのだった。
『なに…? なにが起こってるの……?』
状況が掴めず呆然とする麗亜も、とにかく事情を訊きたいということで警察まで同行させられることになってしまった。
警察署では取り敢えず、朝の事故の現場に遭遇してその救護をしている間に璃音を入れたクーハンが何者かに持ち去られ、家に帰ってみれば女の子とその母親が揉めていて、感情的になった母親が璃音を投げ捨てたことくらいしか分からないと正直に話した。
ただその時、璃音を証拠品として預からせてほしいという警察の要請には頑として応じなかった。璃音はただの人形じゃないから当然と言えば当然だけれど。
仕方なく警察は、壊れた璃音の詳細な写真を撮っただけで返してくれることになった。
こうして、深夜十二時を過ぎた頃にようやく、璃音と共に家に帰ることができたのだった。
「まったく…! とんでもない目に遭ったわよ……!」
明るいところで改めて見た璃音の破損は、酷いものだった。髪の毛とドレスがクッションになったのか、頭と胴体についてはそれほどではなかったものの、手足にはひびが入り、右脚は付け根の関節そのものが壊れ、完全に取れてしまっていた。
「ごめん…ごめんね、璃音……!」
麗亜は自分が目を離した所為だと思って泣きながら謝った。そこに、璃音が見付かったという麗亜からのメッセージを受けた真尋が訪ねてくる。
「いったい、何があったんだ…?」
そう問い掛ける真尋に応えたのは、璃音自身だった。
「麗亜が待ってろって言うから大人しく待ってたらなんか急にクーハンが動き出してさ。麗亜が戻ってきたのかと思ったら知らないババアで、そのままババアの家に連れてかれて。
どうにか隙を見て逃げ出そうと思ったんだけど、あのババア、人形趣味だったらしくてしかも私が有名作家の作品だってこと知ってたらしくて、ずっと気持ち悪い目で私を見てたんだよね。
でもそしたら私も何度か見かけた娘が帰ってきて『ママ、この人形どうしたの!?』って訊いたら母親が『貰った』とかホザいて。でも娘は分かってたみたいだね~。自分の母親がロクでもない奴だってのをさ」




