子供が欲しい
『旦那は要らんけど子供はほし~っ!』
と声を上げた真尋の気持ちは、正直、分からないでもなかった。結婚なんてまだ実感ないけど、璃音をこうして育ててきたことで、何となく、自分でも子供を育てられそうだっていう気がしてて、そう思うと自分の子供が欲しいという気持ちにもなってきてたのだった。
もちろん、人形である璃音と人間の赤ん坊は違うと思う。けれど、今の璃音のように強い人間不信と恐怖感で深い溝があった彼女相手に『ママ』と呼んでもらえるようになるまでの経験はとても大きい気がする。何しろ、以前の璃音の時からを合わせればもう一年以上、こうして一緒に暮らしてきてるのだから。
我儘で傲慢だった彼女とも、人間に怯えて心を閉ざしていた彼女とも、打ち解けることができた。それを思えば、人間の赤ん坊を受け入れるのなんてそんなに大したことじゃない気さえする。
とは言え、自分で子供を生むには相手が必要だ。仕事もしてるしそれなりに蓄えもあるから夫は必須ではなくても、子供ができるには当然、父親となる男性が要る。
けれど、今のところはその候補となりそうな男性すらいなかった。会社の同僚達は、正直、論外でしかない。女性を外見でしか評価しない男性ばかりだから。
麗亜自身は、それほど外見には拘らない。結婚しないのなら収入とかも関係ない。ただ、こういうタイプだけはどうしても苦手というのはある。
それは、先にも言った<女性を外見でしか評価しないタイプ>と、<何かというと『ただしイケメンに限る』と口にするタイプ>だった。前者は論外だし、後者は卑屈すぎて全く合わない。外見にはそんなに拘らない代わりに、卑屈で他人を強く妬み、粘着質なタイプはとにかく駄目だった。そういうタイプが、
『外見じゃなく内面を見てほしい』
なんてことを言い出すと鳥肌さえ立ってしまう。
『いや、その内面がそもそも卑屈で嫉妬深くて粘着質なんでしょう? 無理無理無理無理』
と。あと、<器が小さいと言われることに異常にムキになるタイプ>も駄目だった。これも結局、内面に問題大ありだから。<女尊男卑>という言葉を使うタイプはこれに含まれるだろう。
実はそれは、麗亜の父親が関わることを避けている男性のタイプでもある。彼女の父親は、見事にそれらから外れている。だから父親が理想の男性のタイプであり、しかしこれまで、父親に匹敵する器を持った男性には巡り会えなかった。
ただそれは、周囲の男性がまだ未熟だからというのもあるのだろう。麗亜の父親だって若い頃から今の感じだった訳じゃない。
だから自分に自信を持ち、些細なことではムキにならないような男性になれたのなら、その時にはチャンスもない訳じゃなかったのだった。




