周りの助け
真尋と日登美の理解と協力を得られたことで、麗亜と璃音が二人で暮らしていくことの問題点は殆ど解消されたと言ってもよかった。もう何も心配は要らない。ただ穏やかに暮らしていけばいい。
「璃音ちゃん。可愛いね」
麗亜が仕事に行ってる間は真尋が預かり、その関係性も日を追うごとに良くなっていった。麗亜と同じように璃音を自分に従えようとするのではなく、ただそのまま受け入れるようにしたのがよかったのだと思われる。いつしか、食事を用意しておけば真尋が見てる前でも食べるようにもなっていった。
とても大人しく、基本的にはただ部屋の隅でじっとしているだけなので仕事の邪魔にもならなかった。そして、さらに数ヶ月が過ぎる頃には、たまに遊びに来るだけの日登美のこともそんなに怖がらなくなっていた。もちろん、いつも一緒にいる麗亜や真尋に比べるとさすがに距離は感じるけれども、ひどく怯えることはなくなっていったということだ。
麗亜と璃音の姿は、本当にただの母と子のそれになっていた。そして、母と子だけの暮らしを周りの人間が助けるという形に。
これがいつまで続くかは分からない。けれど、いつまで続いても構わないという覚悟がもう三人にはあった。子供が生まれて育てていくのと同じことだから。
「もしさ、私達の誰かに子供ができたとしても、こうやってみんなで支えていこうよ」
いつの間にか抱っこできるまでになっていた真尋が璃音を抱いて、不思議そうに自分を見詰める彼女を見ながらそう言った。しみじみとそう言った。
「そうね。璃音のおかげで子供ができた時のことを色々試せた気がする」
今は、他人に頼ることを恥だとか甘えてるとかいう考えが主流かもしれないけれど、冷静に考えてみれば昔から人間はずっと周りに助けられて子供を育ててきた筈だった。そうじゃなかった時期なんて恐らくない。親だけで子供を育てるのが当たり前なんていう考えが出てきたのは、ほんの最近のことだった。しかもそれは、何の根拠もない、ただ他人の子供と関わりたくないという一部の人間が大きな声を上げていただけに過ぎない。
それを真に受けて親だけで何とかしようとするから追い詰められる。家庭内だけで問題を抱え込んでしまって他人の目が入らないから、やりすぎてしまったりもする。他人を頼るのは決して恥ずかしいことじゃない。
麗亜は改めてそれを実感していた。
彼女の両親も、両親の力だけで麗亜を育てた訳じゃない。周りの人間の力を借りて彼女を育てた。その事実を再確認したのだった。




