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愛して、私の生き人形(マイドール)  作者: せんのあすむ
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退屈な時間

麗亜れいあがいなくなった部屋で、璃音りおんは、じっくりとそれを観察して溜息をついていた。


「はあ、このレベルか……」


家具や家電といったものを含めた部屋の様子を見て、そんなことを呟く。正直、がっかりしていたらしい。


知世ともよのやつ、ホント使えない。もっとマシな知り合いくらい見付けられないの?」


と、悪態が止まらない。この所為で前の持ち主である野島知世のじまともよに匙を投げられたというのに、全く懲りていないようだった。


とは言え、自分が人形であるということはわきまえているらしく、外に出て行こうとはしなかった。下手な人間に見付かっては何をされるか分からないということは重々承知していると思われる。


もっとも、璃音自身はそんなことは恐れていなかったけれど。ただ面倒なことになるのが嫌なだけだった。


部屋をうろつき、まずはキッチンを見た。炊飯器のタイマーがセットされており米は焚いているようだけれども、料理はあまり得意ではないのか明らかにスーパーの惣菜のトレーが資源ごみとして袋に詰めて置かれていた。


「女子力ないわね」


吐き捨てるようにそう言った後、風呂やトイレまでチェックする。すると、食事はスーパーの惣菜に頼りきり、一人の時は全裸だというだらしなさの割にはまずまず片付いているようには見えた。トイレも綺麗に使っているし、風呂場にも目立ったカビなどはない。塩素系洗剤が置いてあったのでそれでしっかり掃除はしているのだろう。なので、案外、ちゃんとしているのだとも思えた。


「…まあ、この辺は及第点かな」


などとやはり『何様!?』とも言われかねない謎の上から目線でそう評しながら、彼女はリビングに戻ってきた。


それからおもむろにテレビを点けて見始めると、その後はずっとテレビを見ていただけだった。机の上にノートPCが置かれているのは気付いていたものの、それには触れようとしなかった。


璃音が自分用のノートPCを要求したのはその為だった。テレビはともかく、他人のPCやスマホやタブレットを勝手に使わないという程度の配慮はできるらしい。


そんな様子を見る限りでは、口はすごく悪いものの、実はそんなに性悪という訳でもないのかもしれない。


部屋を荒らすでもなく、ただ大人しくテレビを見ていた。


時折、笑い声は漏らすものの、一人でテレビをじっと見ているその姿は、どこか寂しげにも見えたのだった。



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