満たされた孤独
玄関の鍵が開けられる気配がすると、璃音の表情がパッと明るくなった。
でも実際にドアが開く頃にはやっぱり不機嫌そうな顔になって、
「ただいま」
と微笑みかける麗亜に対し、
「おかえり」
と、顔も向けずに怒ったような口調で応えるだけだった。
そんな璃音に対して麗亜は、
「ごめんね~、寂しかった?」
と頬を寄せる。
「だ~! うっとうしい!!」
そう言って押し退けようとする璃音だったけれども、もう本当はそうして欲しかったことを見抜かれていた。
「ありがと。お湯、沸かしてくれてたんだ」
お風呂の用意ができていることに気付いた麗亜がお礼を言っても、璃音はゲームの画面を見詰めたまま、
「ふん、スイッチ入れただけよ」
と素っ気ない。でもそれで良かった。お風呂のスイッチを入れてくれるくらいには成長してくれてるから。
さっそくお風呂に入って仕事の疲れを癒して、やっぱり全裸のまま、買ってきた総菜を電子レンジで温め始めた。麗亜の方は相変わらず料理はしない。食べるのは自分一人だからそれで十分だったからだ。
璃音も、自分は食べないので特に何も言わなかった。
麗亜は、お酒も飲まないし煙草も吸わない。パチンコとかもしないし、こうやって家に帰って本を読むかゲームをするかで満たされていた。
「あんたってさ、外で遊ばないの?」
自分の隣に座って、裸で、温めたお惣菜をおかずに夕食を食べる麗亜に璃音は尋ねた。
「あ~、私、ノリが悪いって同僚とかからは敬遠されてるからな~」
その通りだった。カラオケとかは嫌いじゃないけれど、周囲のノリに合わせるというのが得意ではないので、自然と呼ばれなくなるのだった。
でも、麗亜はそれを気にすることがない。酷く他人を拒絶する訳ではなくても、無理に他人と付き合うこともしないし、誘われなくても平気だった。もう、両親に十分に自己を肯定してもらってきていたから、別にどうでもいい他人にまで肯定してもらう必要も感じてなかった。
「それに、今は、こうやって璃音と一緒にいられればいいよ」
その麗亜の言葉に、璃音は、
「ふん! さみしいヤツ!!」
と悪態で返すものの、その顔はまんざらでもなさそうだった。
そんな璃音の様子を見てるだけでも、麗亜は本当に十分楽しかった。
とは言え、麗亜にまったく友人がいないという訳でもなかった。小学校の頃から友人とは今でも年に数回、顔を合わせてカラオケに行ったりもする仲だった。
『今どうしてるかな?』なんてことを思うと不思議と電話が掛かってきたリする。そんな友人はいたのだった。




