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愛して、私の生き人形(マイドール)  作者: せんのあすむ
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人間以外

璃音りおんがどうして生きている人形になったのか、その理由が気にならないと言ったら嘘になる。こんな有り得ないことが起こってるという事実に興奮が抑え切れなくなることもない訳じゃなかった。だけど、こうして一緒に暮らしてみると、璃音は人間と同じだった。我儘で自分勝手で他人が自分の思い通りに動いてくれるのが当たり前と思ってて。でも、心の底ではそうじゃないって思い知ってるという意味でも。


だから麗亜れいあは言った。


「私のところに来てくれてありがとう、璃音」


それは、麗亜が両親からいつも貰っていた言葉だった。


『私達のところに来てくれてありがとう、麗亜』


と。


それを、璃音に対しても言ってるだけだった。自分が言ってもらえたことを。


「な…何言ってんのよ! ワケ分かんない!」


柔らかく微笑みながらそう言われて、璃音はそんな風に吐き捨てた。視線を逸らし、自分の顔を見られないように背けたままで。


だけどそんなことを言われたのは初めてで、どう言っていいのか分からなかったというのもあったのだった。


璃音はこれまで、相手を慌てさせて苛立たせて動揺させて浮足立たせて精神的に優位に立ってきた。自分は人間じゃない。ただの人形で、捨てられたらお終いだという事実を誤魔化す為に、自分が人間をコントロールする為にそうやってきた。そうしないといられなかった。なぜなら、今までの主人達は皆、自分のことを<奇妙な人形>としか見てこなかったから。だから、『舐められたらお終いだ』っていう強迫観念に囚われていたというのも確かだった。


なのに、今、自分の目の前にいるこの麗亜という人間は、これまでのどの主人とも違っている。自分がいくら煽っても『人形のクセに!!』とは言ってこない。それどころか、『うん、分かった』と受け流されてしまう。


だからつい、『こいつは違うのかな…』と思ってしまいそうになる。『こいつは今までの人間とは違うのかな』と。


でもそんな筈はない。そんな筈はないんだ。人間なんて皆一緒だ。異質なものを見ると興味本位でじろじろ見たり、嫌悪感をむき出して見下してきたり、裸に剥いて体中を調べようとしたり。それが人間というものなんだと、彼女は自分に言い聞かせてきた。


けれど、その一方で、璃音は人間の中で生きようともがいていた。ネットの中で人間のふりをするのもその一つに過ぎないだろう。


だって、自分はただの人形に過ぎなくても、こうして喋れて、人間と同じように考えることができて、感じることができるのだから。


人間以外の生き物とも全く違っているのだから。



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