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第三章 交渉3

「さてと……」

 地下酒場へ降りていくトオルたちを見届け、改めて海賊頭首たちと対峙する猫娘。

 相手はポーカーフェースのディアと、読心能力と怪力を合わせ持つエテルカである。実力行使でこの二人を相手取るには、いくら獣人化している保子莉でも分が悪過ぎる。

「それで、どうしたら智花を返してくれるのじゃ?」

「どうしたほうが、私たちが有益だと思われますか?」

 ディアに向けたはず問い。それなのにエテルカの返しに保子莉は思わず眉をひそめた。

「わらわはおぬしの頭首さまと交渉しておるのじゃから、従者の口伝ては無用じゃ」

 嫌味を込めての敬称。すると幼女は毅然とした態度で言葉を返す。

「私が口にする言葉は、ディアさまの内なる言葉ですので、どうぞお気になさらずに」

 これまた面倒な二人だ。

 話し合いをする場合、相手の表情の変化を読み取りながら行うのが普通である。だが、この2人に限っては、そのような常識が通用しない。肝心のディアは眉ひとつすら動かさず、しかも会話に至っては目の前のクレハ星人を介さなければならないのだ。その厄介なコンビに猫娘は眉間に皺を寄せながらふんぞり返った。

「前もって言っておくが、借金はあっても金は無いぞ」

「そうでしょうか? とても中型商船を所有して、生業をしている人の言葉とは思えませんね」

 どうやら仕事上における身元を調べられたらしい。それだけにエテルカも単なるディアの代弁者ではないのだろう。猫娘は幼女をあなどっていた自身をあらため直した。

「あいにく人さまには分からぬ台所事情と言うものがあってのぉ、おかげでいつも自転車操業じゃ」

「それは困りましたね。それでは交渉以前の問題ですよ」

「まったくじゃ。じゃが、それでも1500万ケピロンまでならば、手形として用意は出来るがのじゃが……それで折り合いが付けられんじゃろうか?」

「非獣人売買における最低取引相場ですね」

 猫娘の用意していた交渉金額を、底値だとあっさり見破る幼女。それがディアの思うところなのか、それともエテルカ自身の考えなのか。と、猫娘が判断に迷っていると

「ずいぶん見くびられたものですね。それで私たちが納得するとでもお思いになりましたか?」

 猫娘は二人の顔を交互に目配せした。

「ならんのか?」

「なりませんね」

 顔色ひとつ変えないディアと幼女に、猫娘も開き直った。

「ではいったい、どうしたら良いのかのぉ?」

「純粋な人間ヒューマンと等価交換となると、やはりそれと同等か、もしくはそれに吊り合う人ではないかと、私は思っておりますけどね」

「どう言う意味じゃ? それはつまり人質交換と言うことか? もったいぶらずにハッキリ申したらどうじゃ。いったい誰が望みじゃ?」

 情報をひとつでも多く引っ張り出して、交渉を有利に運びたいと考える猫娘は思い切ってトオルを交渉の場に持ち出した。

「まさかオスの兄の方ではあるまいのぉ?」

「これでも言い寄ってくる殿方はおりますので、オスには不自由してません。ハッキリ申し上げましょう。私たちが欲しいのは貴女です」

 席に着いてから目まぐるしく働かせていた猫娘の思考が……停止した。

「…………す、すまん。あいにくわらわは同性愛そっちの趣味は空っきしなのでな、ご遠慮う願いたいのじゃが」

 戸惑いの色を浮かべる猫娘に、幼女の顔がワンテンポ遅れて赤くなった。

「そ、そんな意味ではありません! 変な誤解をしないで頂けますかぁ!」

 慌てて訂正するエテルカに、ディアが真顔のままでボソッと呟いた。

「……エテルカ。今、変な想像した」

「してません! って、ディアさまは余計なことを喋らないでください!」

 初めて口を開いた美少女。その表情はちょっぴり残念そうに見えなくもない。

「私たちの言っているのは、引き抜きのことです」

「ヘッドハンティングじゃと? このわらわをか? これはまた、ずいぶんと買い被られたものじゃな」

 カッカッカッと大口を開けて笑う猫娘に、幼女がムッとした。

「私は、まじめに話をしているつもりですけど」

「ならば後学のために、理由を聞かせてもらおうかのぉ」

「先日、貴女方がおこなった白兵戦に感銘を覚えたのですよ。迷いのない指揮を下したリーダーシップ。その点、我々が率いるクルーの中に、貴女のような優れた人材がおりません。そこで我々は貴女をセカンドシップの艦長として招き入れたいのです。いかがでしょう? このような理由ではお気に召しませんか?」

「褒め言葉にしては上出来過ぎるくらいじゃわい。……で、わらわに海賊となって、おぬしらの右腕になれと言うのか?」

「察しが良いですね。想像通り頭の回転も早く、話をしててとても楽です」

「おぬしの言わんことは良く解った。じゃがおぬしら、とんだ勘違いをしておるぞ」

「勘違い?」

「そうじゃ、わらわが優秀なのではない。クルーたちが優秀なのじゃ。そこを履き違えておるようではクルーの統率などは到底無理じゃな」

「その助言、肝に銘じておきましょう。しかし、人質がこちらの手にあることもお忘れなく。それで貴女の返事を聞かせて頂きたいのですが?」

「そうじゃのぉ。もし本気でわらわを支配下に置きたいのであれば、おぬしらの実力を見せてもらわんとな」

「例えば?」

「例えば、そうじゃのぉ……」

 周囲を見渡す猫娘の瞳に、ライドガンナーレースの案内広告が映った。地元開催のバイクレース。その主催関係者一覧に、クロウディアの名が連なっているのを目ざとく発見した。

「二日後に開かれるライドガンナーレースがあるじゃろ? そのレースにお互いが参加して競うというのはどうじゃ? それでおぬしらが勝てば、海賊への転職も考えても良いぞ」

「おもしろいですね」

 猫娘の提案に、微笑む幼女エテルカと微笑すらしない頭首ディア。どうやら反対する理由はないようである。

「じゃろ。幸い、おぬしらは協賛スポンサーのようじゃし、ついでにエントリー手続きと参加費用など持ってくれると助かるのじゃがのぉ? わらわを配下に納めたいのならば、そのくらい安いものであろう?」

「もちろんです。それだけでは不足でしょうから、マシンと銃もご用意しましょう」

 渡りに船の申し出。その格好の待遇にほくそ笑む猫娘。

「至れり尽くせりのご配慮、感謝するぞ」

 対等の条件にまで持ち込み、取りあえず交渉としてはまずまずの功績を収めたはずである。後はレースに勝って、人質である智花を取り戻せば一件落着である。と安心した矢先……

「ところでエントリーするにあたって、ひとつ条件があることも忘れないでください」

「ん? 条件じゃと?」

 すると幼女は悪戯な笑みを浮かべた。

「はい。レースクィーンは自前で最低ひとり付けることが、レース参加の必須条件ですなので、お忘れないようお願いします」



 ところ変わって、トオルたちと言えば……

 ギンツォに連れられ、トゥーリハの地下酒場に足を踏み入れていた。

 そこは地上のテラスとは異なり、照明は薄暗く、焚かれた香と獣の特有の匂いが充満する怪しげな場所だった。

「なんだか、あんまし歓迎されてねぇみてぇだな」

 長二郎の言うように、酒をかっ喰らう宇宙人たちが虚ろな目でトオルたちを訝しんでいた。ヒソヒソと話をする宇宙人たちの会話に耳を傾ければ『非獣人』『純人間』のキーワードがチラホラ聞こえる。きっと、トオルたちのことを人身売買の対象者として品定めをしているのだろう。

 ――こんな連中に捕まっている智花は、本当に無事なんだろうか?

 初めて自分たちが身の危険に晒されていることを知り、妹の安否に不安を感じていると

「そっちの大きい奴はそこにいろ。お前はこっちに来い」とギンツォがトオルを手招いた。正直、ひとりで行くには怖かった。だが囚われた妹のことを考えると、そんなことを言っている場合ではなかった。トオルは覚悟を決めて、酒場の奥へと足を進めた。

「手短に済ませろよ」

 ギンツォと見張り役と思われる女性獣人の監視のもと、トオルは案内された部屋に入った。質素な部屋作りに三人掛けのソファー。そこに、うつむく妹の姿があった。たった一日、顔を合わせなかっただけなのに、なぜか切ない気持ちが喉元に込み上がった。話したいことや聞きたいことは山ほどあった。しかし……

「智花……怖かったかい?」

 喉から絞り出した月並みの日本語に、智花が顔を持ち上げる。少しやつれてみえる妹の気持ちを察し、これが兄としての最善の言葉だと思った。すると智花は弱々しく立ち上がり、トオルにしがみついた。

「トオルにぃ……。心配かけてゴメンなさい……」

 よほど心細かったのだろう。小さな肩を震わせ咽び泣く妹につられ、トオルも泣きそうになった。しかし、ここで涙を見せれば妹は号泣して取り乱すかもしれないし、背後で見張っているギンツォたちに付け入られることだろう。それだけに、グッと涙する感情を押し殺した。

「ここの人たちに、乱暴とかされてないかい?」

「うん」

 日本語とは言え、海賊が見張る中でそのようなことを言うのは怖かった。だが全ては妹を安心させるため。背後に立つギンツォを垣間見れば、兄妹の日本語を咎めようともせず、無言で腕組みをしたままだ。

「本当に?」

 すると智花はトオルから離れて言う。

「心配しないで。トオルにぃが思っているほど悪い人たちじゃないから」

 涙を拭って微笑む妹に、胸が締め付けられた。そんな気鬱する兄を気遣ってか、智花が快活な声を上げた。

「そうだ、ねぇねぇ見て見て。このピンクの髪、キレイでしょ。これ保子莉お姉さまからのプレゼントでねぇ、お店で染めてもらったんだよぉ」

 ゴム紐で結わえたツインテール。その毛先を持ち上げてクルクルと回す妹に、トオルは力無い笑顔を向けるだけが精一杯だった。すると智花は髪を振り回すのをやめて顔を伏せた。

「ねぇ、トオルにぃ。智花、家に帰れるよね?」

 切望する妹に、息が詰まった。もしかしたら地球に帰れない。そのことを智花は悟っていたようだった。智花を解放するための身代金を保子莉が用意し、海賊の頭首と交渉していると伝えたかった。だが、もし交渉が決裂してしまったならば……。そんなことを考えると、不安でたまらなかった。それでも妹に希望を与えようと笑って見せた。

「帰れるさ。だから、みんなで一緒に地球へ帰ろう」

 そんなのは単なる気休めだと、人は言うだろう。しかし、トオルと智花にとっては絶対に譲れない願いでもあった。

「うん。期待して待ってる」と両手を広げて抱擁を求める智花を、ギュッと抱きしめた。

「うん。約束する」

 再会の決意を胸に刻み、妹に別れを告げると、ギンツォたちと共に部屋を後にした。

「こっちも譲れねえ事情があってな、悪く思うなよ」

 同行するギンツォの言葉に、トオルは無言で睨み返した。

 そしてホールで待っていた長二郎と一緒にテラスに戻ってみれば……なぜか保子莉の姿はなく、ディアとエテルカが食事に舌鼓を打っていた。

「あれ? 保子莉ちゃんがいねぇじゃん?」

 ――まさか、誘拐されたんじゃ?

 一瞬にしてトオルの気持ちが荒れた。

「保子莉さんは? 保子莉さんをどうしたのさ!」

 唯一の頼みである猫娘の不在を問いただすと、エテルカが食事の手を止めた。

「早とちりしないでください。猫の人なら、ほら、あそこにいますよ」

 そう言って、エテルカはクイッっとフォークの先でテラスから外れた場所を指した。見れば、通りの脇に生えた大きな珊瑚樹の根に腰掛け、電話で誰かと話をしている猫娘がいた。

「我々との話は済みましたから、どうぞお引取りを。詳しいことは猫の人に聞いてください」

 幼女に軽くあしらわれたトオルは、会釈を返すことなく、その場を後にした。



「だから、なぜ来れんのじゃ! 何? 惑星クーデターの影響で、駐機場が閉鎖されておるじゃとぉ?」

 黒い尻尾を立てる保子莉の会話に、トオルは黙って耳を傾けた。

「なんで保険屋がそんなところにおるのじゃ? ……何? 顧客の旅行代理店がクーデター観光中にトラブルを起こしたじゃとぉ? そんなもんわらわが知るかぁ! そんなクーデターマニアなど放っておいてこっちを手伝わんかっ!」

 電話の相手はどうやらクレアのようだ。それだけに保子莉もいつもの顧客節でまくし立てていた。しかし真面目に職務を遂行しているクレアを強制的に引っ張りだすのも、どうかと思うのだが。

「とにかくじゃ、明後日のライドガンナーレースまでには来るのじゃぞ! 良いな!」

 保子莉は一方的に言い放って電話を切ると、トオルに目を向けた。

「戻ったか。それで智花の様子はどうじゃった? 元気にしておったか? 虐待や拷問などされておらんかったか?」

「うん。これといって普通の扱いだったよ」

 手足を縛られることのない軟禁状態であったことを説明すると、猫娘がホッと安堵の息を漏らした。

「そうか。それを聞いて安心したわい」

 しかし、トオルにとっては交渉の結果が気になって落ち着かない。

「話し合いはどうなったの? やっぱりお金を払うことになったの?」

 真っ先に脳裏を過ぎったのは身代金の額だった。きっと想像を超える数字だったに違いない。それゆえ今は保子莉を頼るしかなかった。

「今すぐには返せないけど、でも……それでも僕は何年かかっても保子莉さんに返すから! 絶対に返すから! だから智花を助けてやって!」

 必死に返済を約束するトオルに対し、保子莉が眉根をしかめた。

「いきなり、何を言っておるのじゃ?」

「えっ? 身代金を払うんじゃないの?」

「人の話も聞かんうちに結論を急ぐでない。まったくわらわの方がビックリじゃわい。良く聞けトオル。交渉条件において連中の要求は金ではなく、このわらわじゃ」

 足を投げ出してふんぞり返る保子莉に、トオルは首を傾げた。



「つまり、保子莉さんと人質交換ってこと?」

 海賊を手玉に取った猫娘だ。目先の金銭よりも優秀な人材確保の方が有益であると踏んだのだろう。一通り海賊側の提示条件を教えてもらったトオルは、今一度、確認する。

「じゃあ、そのレースに勝てば、お金を払わず智花を返してくれるんだね。それで、そのライドガンナーってなんなの?」

「わらわも先ほど調べてみたのじゃが……」

 そう言って保子莉は携帯の画面に視線を落とした。

 ライドガンナーレース。

 その競技内容はライドマシンで争うスピード競技である。

 一周8キロのコースを30周。峡谷や砂丘地帯のダートコースを走りながら規定に定められた銃で相手を蹴落とし、1位で完走した者が優勝となる。その際、搭乗者は二名が義務付けられ、ライドマシンを運転するライダーと後部座席から競技用の銃を使用し、ゴム弾でライバルを狙撃するガンナー。二人一組で初めて参加が認められる競技であり、タルタル星ではポピュラーなモータースポーツであった。

 保子莉は一通り説明を終えた上で、必要な物は全てディア側から提供されることも付け加える。

「そこでじゃ、ライダーはわらわが担当するとして、問題はガンナーを誰にするかといったところなのじゃが……」

 と難しい顔で人選に悩む猫娘。

「連絡がつく従業員たちにも声を掛けたのじゃが、休暇中ゆえ誰もが旅行に出掛けておってのぉ、本戦当日までに来れぬ状況でな。そこでクレアにガンナーを依頼したのじゃが、仕事先で身動きが取れんらしいのじゃ。なので、今この場にいるメンバーで賄わねばならんのじゃが、適任として長二郎に……。ん? ところでさっきから、あやつの姿が見えぬが?」

 そこで初めて周囲を見回す保子莉とトオル。そして二人の視線は海賊たちのテーブルに居座る長二郎に釘付けになった。

「この大事なときに、あやつはいったい何をしておるのじゃ?」

 敵である幼女エテルカと仲睦まじく話をしている長二郎を黙って観察する保子莉とトオル。どのように口説き落としたのか定かではないが、対面直後の態度とは違い、長二郎のトークに照れ笑いするエテルカ。ちなみにディアはそんな二人に目もくれずにティーカップに口を付け、ギンツォが面白くなさそうな顔をして長二郎を睨んでいた。そんな二人の仲睦まじい空気を読み取った保子莉は、長二郎をガンナー候補から外した。

「あの腑抜ふぬけっぷりでは、アテにはならんようじゃな。そうなると、どうしたもんかのぉ……」

 長二郎の戦力外通知。溶けた飴のようにデレデレ状態では無理もないだろう。頼れる者がいない以上、自分が名乗りを挙げねば。とトオルは候補を申し出た。

「僕がやるよ」

 その強い意思は、保子莉を納得させるには充分だった。

「ふむ。気力に満ちた目をしておる。智花との面会で何を得たのか分からんが、どうやらヤル気はありそうじゃな。良かろう、おぬしをガンナーに任命しよう。やるからには、体がダルいとか痛いとかの泣き言は一切通用しないものと思えよ」

 智花を助けるのは兄である僕の役目なのだ。言われなくとも、そのくらいの覚悟は承知している。

「では早速、ディアたちご用達の店に出向くとしよう」

 やらなければならない課題が山積みであるがゆえ、一秒でも時間が惜しかった。

「じゃあ、僕は長二郎を呼んで来るよ」

「無駄じゃ無駄じゃ。あのダラしなく鼻の下を伸ばしているあやつを連れて行ったところで、なんの役にも立たん」

「でも、長二郎も僕らの仲間なんだから、そういうわけにはいかないよ」

 トオルは保子莉の反対を押し切り、長二郎を海賊たちのテーブルから退席させた。


「エテルカから話は聞いたぜぇ。なんでも、保子莉ちゃん自身を賭けてバイクレースすんだってぇ?」

 楽しげに語る長二郎とは対照的に、不機嫌な面持ちの保子莉。勝てば官軍負ければ賊軍。そんな真剣勝負を前にして、緊張感の欠片もない態度をされれば、誰だって不愉快にもなる。

「ひとつ聞いておくが、おぬしはどっちの味方じゃ? あっちか? それともこっちか?」

「なに言ってんだよぉ。保子莉ちゃんに決まってんだろぉ。言っとくがなぁ、俺は公私混同しない主義なんだぜぇ」

「どうじゃかのぉ」と、保子莉が疑わしい眼差しを向けると

「俺を信じろ。で、これからどうするんだ?」

 長二郎の問いに、保子莉が一枚のメモ用紙をヒラヒラと振った。

「町外れにディアたちが所有するガレージショップがあるらしいのでな。まずはそこへ行って、競技用のマシンと銃器を借りるつもりじゃ。先ほど連中が店に手配しておったから、我々が到着する頃には用意されておるじゃろ」

「それで受け持ちの割り振りはどうなってんだ? ライダーはやっぱり保子莉ちゃんだとして、ガンナーは誰よ?」

「トオルにやってもらうことにしたぞ。最初はおぬしにやってもらおうかと思っておったのじゃが、エテルカ相手にデレておったのでな、候補から外させてもらったわい」

「そうしてもらえると助かるぜ。今の俺は、愛おしいエテルカに銃口など向けられんからな」

 その公私混同な不参加発言に

「勝手にせい」

 海賊の幼女に肩入れする長二郎に、トオルと保子莉はあきれるばかりだった。

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