病床にて
病床にて。
私はいま胃腸炎か何かに身を犯されているようだ。
とても苦しく、辛い。
苦しみながら死ぬのは嫌だなと思った。
どうせ死ぬなら、愛する人の膝の上で、落ち着いて、愛する人の声を聴きながら、安らかに死んで生きたいなんて妄想にふけってしまう。
ああ、あざ嗤え。
この寝室の窓から見える空は青い。
空というのは様々な表情を見せてくれる。
ああ、美しい。
私は今頃それに気づいたようだ。
この世界は美しい。
しかし人間どもは汚い感情で溢れている。
ああ、なんと悲しいことか。
太陽の陽射しが部屋に差し込んでくる。
眩しい。
人間というのはとにかく理由をつけたがる。
あの人を好きなのはこうだから。
ここでこうしないのはこうだから。
何を言っている。感情に従えば良いではないか。
と言いつつ己でさえも感情に理由をつけて生きている。
人というのは己の娯楽に浸っている時間が最も幸せなのではないか。
音楽を聴いているとき、絵を描いているとき、ギターを弾くとき、ピアノを弾くとき、ベースを弾くとき、ドラムを叩くとき、好きなアイドルを見て心を癒すとき、笑うとき、小説を読むとき、あるいは娯楽ではなく、恋人といるとき、家族といるとき、ペットといるとき、大切な人と会うとき、私は病床にてそんなことも考えた。
思えば、なぜ病床に伏せってしまったのだろう。
知らぬ間に自分で自分の身を苦しめていたのか、否か。
分からない。
ただ私は、病床にて思考にふけっていた。
それだけだ。