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第八十七話 「あんなの、いくら倒しても焼け石に芋ッスよ」


「本当に信じるんだな? メイの手紙を!」


 ひーちゃんを御するファルドが、眉をひそめて訊いてきた。

 ヴェルシェも目を覚まして状況を知るや否や、ついてくると言って聞かなかった。

 だが、やっぱり不満たらたらだ。


「ザイトンさんを引き渡す前に、直接拷問すべきだったッスよ」


 一事が万事、この調子だ。

 解らんでもないが、流石にしつこい。


「じゃあ他に方法はあんのかよ。お前ら、言ってみろ!」


「それは、その……」


「思い浮かばないッス」


「だろ? 俺だって半信半疑だよ。だがな、やってみて損はない。違うか」


 巨大兵器ギルゲス・ガンツァは帝国側でも制御不能で、王国側との交流において大きなハンディキャップになっていた。

 なんでも、およそ十年後までに排除できなければ、空輸に際して掛かった金額などをまとめて賠償金として支払うとか、そういう条約まであるらしい。


 大陸全土を巻き込んだ、二十年前の戦争。

 魔王が現れた事で有耶無耶になったが、まだ決着はついていない筈だ。

 にもかかわらず帝国を敗戦国扱いするのも、強引だよな。

 あの王様らしいやり方ではあるが。


 まあ聞いた話では、先に喧嘩を売ったのは帝国側だからな。

 数多くの王国民が、腹の中に爆弾を抱えているんだろう。

 そいつらからしたら、喧嘩を売ってきといて魔王が出てきたら「やっぱ無し」なんて無理だろう。

 で、せめて因縁ふっかけてきた落とし前を付けてもらうという意味合いも兼ねて、ギルゲス・ガンツァに関する条約を取り付けたと。


 さて、社会のお勉強はここまでだ。



 ギルゲス・ガンツァの破壊は、一つだけアテがあった。

 それは、歌い竜カグナ・ジャタに協力してもらう事だ。


 言うなれば怪獣VS巨大ロボット。

 その筋の男の子(未成年とは言ってない)なら誰もが夢見るシチュエーションだ。

 主役は怪獣だがな。

 必殺のエルボー・ロケットも、怪獣が放つ……と思う。


 冗談はさておく。

 メルツホルン線が解放されれば、陸路での国交が格段に楽になる。

 帝国は負債を抱える事もないし、霧の中で砲撃を喰らって撃ち落とされるなんて事もない。

 そして、夏の聖杯を手にすれば、後はメイと合流して魔王城に乗り込むだけ!


 以上“みんなで幸せになろう”作戦だ。


「えー、こちらディレクター。ミランダさん、聞こえますか」


《感度良好です。カグナ・ジャタも、やる気充分です》


「それは良かった。まもなく作戦領域です。気を付けて」


 カグナ・ジャタは、ギルゲス・ガンツァ破壊作戦への参加に一つだけ条件を出した。

 それは、ミランダを乗せていく事だ。

 どうしてミランダを危険に晒すような真似をするのかと問いただしてみたら、どうやら力自慢をしたいらしかった。


 アイツもなんだかんだで子供じみているな。

 多分なんだが、惚れたな。ミランダに。


 こいつは厄介なトライアングルが形成されそうだぞ。

 何せ、ミランダに恋する人は多い。

 あの抱き枕を作った画家もそうだし、セレジーだってそうだ。


「よっしゃ、俺達も始めるぞ!」


 今回は低空を最大速度で飛び回りながら、俺が狙撃銃で撃ち抜く。

 狙撃銃は全部で四丁だ。

 それぞれ、俺、ヴェルシェ、ジラルド、ビリーが構えている。

 ルチアにホーミング・エンチャントを掛けてもらうから、多少の腕はカバーできる。


「あんなの、いくら倒しても焼け石に芋ッスよ」


「それを言うなら焼け石に“水”な? 芋はやめろ、芋は」


 芋スナっていって、イモムシみたいに這いつくばって銃を撃つだけの(広義的には)迷惑な奴の通称を思い出すだろうが。

 百発百中、見敵必殺を心掛ければだな、マガク・ガンツァの群れなんざ雑魚だよ雑魚。


「うぐ、お芋が食べたいッス……お腹空いて気持ち悪くなってきたッス……」


 空腹と乗り物酔いと高所恐怖症を併発したのか、ヴェルシェは見るからに青くなっていた。

 うーんこの……。


「よしよし、あと少しの辛抱ですよ」


「嫌なら下に降りて戦ってくれてもいいんだぞ。落とし穴得意だろ」


「シンさんの薄情者~! ルチアさんの鷹の爪を煎じて飲ませてやりたいッスよ!」


「それを言うなら“爪の垢”な?」


 鷹の爪ってお前、それ唐辛子じゃねえか!

 下らないコントやってる暇は無いんだってば。

 このガッデム馬鹿野郎クソエルフが!


「……あの、集中してくれない?」


 ほら、ファルドが怒ったじゃないか。

 ひーちゃんも心なしか動きが荒っぽいし。


「うう、ファルドさんまで修羅レベル88ッス……ここは地獄の一丁目ッス……」


「いいから。目標をセンターに入れてスイッチ。オーケー?」


「オーケー、ズドン、ッス……」


 あ! ガンツァを一匹見つけた!


 俺はトリガーを引いた。

 弾丸は吸い込まれるように、ガンツァの装甲を穿つ。


 ズドン、からのブルズアイ!

 機関部をやったのか、ガンツァは動かなくなった。


「ルチア、腕を上げたよな」


「私ですか?」


「そうだよ。ホーミング・エンチャント、良かったぞ」


「私、まだ何もしていませんよ?」


 え?

 じゃあ、なんだ。

 俺は己の腕一つで命中させたって事か。


「シンさん、腕を上げましたねっ!」


 オウム返しに、ルチアに褒められた。

 嬉しいような、複雑な気分だ。


 ちなみにこのライフルだが、一発撃つと自動で新しい弾丸が生成される。

 ようするに弾数無限って事だ。

 操られていたレジーナが装填の仕草を全く見せなかったのは、そういう事だったのだ。


 ……ますます魔王じみた性能だな。

 アイツの武器も、弾無限なんだよな。


 ギルゲス・ガンツァを片付けたら、そっちの問題もはっきりさせないと。

 なーにが「この件は絡んでない」だ。

 ちゃっかりしやがって、魔王め!



 さて、ゲーセンのガンシューティングよろしく次々とガンツァを葬った俺達。

 ルチアは魔力を使い果たしたので、香炉とポーションで魔力を補充している。

 ヴェルシェは後ろでマーライオン状態だ。


 カグナ・ジャタは大丈夫だろうな?

 即席で座席を作ってもらったが、ミランダを落っことしたりでもしたら承知しないぞ。


「こちらディレクター。ミランダさん、大丈夫ですか?」


《ええ。カグナったら、分厚い鱗で何でも防いでしまいますのよ》


「それは良かった。砲台は大丈夫ですか?」


《砲台は残り、ええと――》


《――残り五つだ。他愛もない。人間共は、斯様な玩具を恐れていたのか》


 ドラゴンにも玩具って概念あるんだ。

 ……いや、アイツ腐っても魔王の元ペットだからな。

 魔王経由で知識を仕入れていてもおかしくない。


「サンキューカッグ。その調子で残りも頼みます」


《我に面妖な愛称を付けるな。焼くぞ》


「あ、はい……すみません、調子こきました」


 流石に怒らせると怖いな。

 声のトーンがまるで違う。


「こっちの雑魚共も片付いてきた頃合いかな」


「シン、油断はするなよ」


「もちろんだ」


 俺が言いたいのはその続きだよ。

 ギルゲス・ガンツァの動力を停止させるためには、夏の聖杯を抜き取らなきゃいけない。

 だが、カグナ・ジャタはあの巨体に見合う怪力の持ち主だ。


「アイツじゃ加減が利かないだろうから、俺達でとどめを刺すって事だよ」


「……本当に、上手く行くのかな」


「らしくないな。できる、できないの問題じゃない。やるか、やらざるか。それが問題だ」


 かの絶対叔父殺すマンであるハムレットも言ってただろ。

 正気の沙汰じゃなかろうが、やるしかないんだよ。

 それに、人任せ(この場合は竜任せだが)にして万一どっかで誰かに邪魔でもされてみろ。


 俺はもう御免だぞ。

 邪魔されて先延ばしになるのは。


《ミランダです。砲台は全て壊しました!》


「よっしゃ! 次は足元を壊して下さい。転びだしたらすぐ逃げるように!」


《はい!》


《心得た》


 よし、よし、いい調子だ。

 上手く行くよう祈る?


 生ぬるい。

 上手く行かせるんだ。

 ……俺達全員の力で。


「命が惜しくない奴だけ、俺に付き合ってほしい。ジラルドさん、ビリーさんも、それでいいですか?」


「やっちまいな」


「ラリーに同じくだ!」


「……だそうだが、ルチアとヴェルシェは?」


「ファルドさんはともかく、シンさんはまたどこかに行ってしまうかもしれませんからね」


 言うようになったな、こやつめハハハ。

 ヴェルシェは気絶していた。


 下に置いとくと、取りこぼしたガンツァにやられるかもしれない。

 だったら、連れて行ったほうがいいな。


「ファルド、バッチリ決めてくれよ」


「……、――ああ」




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