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第二十九話 「その必要は、無い!」

次回は9/7(月)の予定です。

 俺達は作戦を詰めながら、夜になるのを待った。

 その合間に、俺はファルドと稽古をしながら、井戸潜みとの戦闘シミュレーションを。


 アンジェリカはヴェルシェと一緒に、井戸潜みの誘導ポイントの打ち合わせ。

 後は、携帯用暖房装置の使い方もレクチャーしておいて貰った。


 ルチアは村人達と協力し合って、食事と、ついでにランタンも用意してくれた。

 防火対策済の安全ランタン!

 蹴倒しても割れないし、火事にならないという触れ込みだ。素晴らしいな。


 暖房装置はそういえば三つしか無いから、侵入ポイントに置くと一人が手ぶらになっちゃうんだよな。


 また、井戸潜みを焼いたら大きな火の手が上がるので、それを集合の合図とした。

 他にも気化した井戸潜みホイホイを吸い込んだ時の為に、一人一人に防毒剤が配られた。


 ルチアは作戦の穴を的確に埋めてくれる。

 それも、しれっとだ。

 こういう心配りは、ホント有り難いな。


 そうしていると時間は過ぎ去り、空は宵闇に染まっていく。

 いよいよ、時間だ。


「さあ、復讐劇を始めようか」

「何よそれ」

「虫さんへの復讐、という意味ですか?」

「気持ちは解るよ。あんなのに追い掛けられたらね」

「自分、燃えてきたッス!」


 何か恥ずかしくなってきた。井戸に飛び込みたい。

 いや、死ぬかもしれないからやめておこう。

 命は一つしか無いんだ。大切にすべきだな。


 指定した侵入ポイントに、ヴェルシェが爆弾を仕掛ける。

 アンジェリカが爆弾に火球を放ち、壁を破壊する。

 俺はその成果に、静かに頷いた。


「ポイント・ゼロ、クリア。アルファチーム、状況開始。ブラヴォーチームはポイント・オメガへ向かえ」


 いやごめん、ちょっと言ってみたかった。

 案の定、みんなに微妙な顔をされた。たった一人を除いて。


「何だか知らないッスけど、了解ッス!」

「調子こいてると二人もまとめて燃やすわよ」

「ヒェッ!?」

「じゃ、ルチアと私で外に居るからね」


 ずかずかと去って行くアンジェリカ。

 ルチアがそれを追いながら、俺達に遠慮がちに手を振る。

 そりゃあすぐに素直になれとは言わないよ?

 だからって、そう安易に燃やすとか言っちゃいけないんじゃないかな!?


 寧ろこれが素直な反応なのかもしれないが。

 軽口叩いて少しでも余裕を見せてやれば、周りも緊張を和らげてくれるかもだろ。

 ……そうだと信じたい。


「アルファチーム、ゴー!」

「えっと、こういう時は……合点承知だぜ! て言えばいいんだよね?」

「ま、いいんじゃないかな」

「何だよ、折角付き合ってやったのに」


 何か、ファルドの軽口スキルが上がったような気がした。


吶喊とっかんッスぅうう!」


 かくしてファルドとヴェルシェと俺のアルファチームは、突破口の入り口に携帯用暖房装置を置いて、地図を頼りに倉庫の中へと進む。

 それぞれで手分けする為、途中で離ればなれになった。


 ランタンと暖房装置の光量が、真っ暗な倉庫を照らしていく。

 井戸潜みは光を嫌って、ざわざわと移動していった。


「キイィィ」

「ギュチギュチ……」


 抱えるだけの大量のカンテラでも、

 一人で暗闇の中を歩くのは、やっぱり心細いな。

 ひんやりとした空気が、余計に俺の背筋を強ばらせる。

 井戸潜みが光を嫌う習性で良かった。

 これで光に寄ってくる奴等だったら、俺達は確実に詰んでた。


「よしよし、いい子達だ。出入り口へ。そのまま、ゆっくりと……」


 カンテラを見せ付けながら、井戸潜みを誘導する。

 見た目通り、知能はあまり高くないな。光から逃げるだけだ。

 もちろん、ドアというドアは片っ端から開け放っておく。

 こうしながら、各所にランタンを設置するのだ。

 倉庫の中に灯りになりそうなものにも、しっかりと点火しておく。

 逐一、防火対策ランタンの面倒なロックを解除しなきゃいけないが、下手こいて全焼させるよりはマシだ。


 それにしても、倉庫の中はワケの解らない物がしまってあるな。

 拷問器具っぽい禍々しい物とか。他にも――。


「ひっ!? ……何だ、鎧か。脅かしやがって」


 床に寝そべる、三メートルはありそうな錆び付いた鎧とか。

 これも調べといたほうがいいのかな。

 鎧に手を触れてみる。


 ……うん、嫌な気配は無いな。

 鎧を動かしてみるが、ビクともしない。

 錆び付いて、くっついてるのかな。

 携帯用暖房装置を鎧の上に置いてみる。

 ぴくりともしない。中には何も無さそうだ。


 後は道中の木箱とか、そういった物も動かしながら、もれなく虫を誘導する。

 さあさあ、逃げるがいい!

 諸君らが平穏を求めて進んだその先、苦悶の果てに安息の地があるだろう。


「シン! 無事だな!」

「ああ、途中で鎧を見掛けたが、色々やっても動かなかった」

「それは……後回しにしたほうがいいかな」

「俺もそう思う」


 背筋を、つぅと撫でられる。


「……!?」


 俺とファルドは恐る恐る振り向いた。


「ヴェルシェ! 洒落にならんから、そういうのやめろ!」

「すまねえッス!」


 クソエルフはテヘペロしやがった。

 さて、三人が合流すると光量もそれなりにある。

 俺達の目の前には、こちらをぎょろぎょろと睨みながら後ずさる、井戸潜みの群れが居た。


「シン、入り口だ。合図を頼む」

「おう!」


 クロスボウを構え、出入り口の扉を狙う。

 放たれた太矢は、木造の扉にスコーンと刺さった。

 少しの時間を置いて、扉が開かれる。


「ギュチギュチ!」


 井戸潜みの行列が一斉に、外へと飛び出した。

 カサカサと走ったり、嫌悪感を催す羽音を立てたりして。

 それらは一様に、ある一点へと向かう。

 井戸潜みホイホイを塗りたくられた、黒い網へと。

 網はあっという間に、羽虫に集られた。


「スネーキー……フレイム!」


 アンジェリカの詠唱が、辺りに響き渡る。

 虫達は炎に包まれ、ボタボタと落っこちる。


「よっしゃ!」

「大成功ッス! 一網打尽ッス!」

「アンジェリカさんにはヒールを掛けておきますね」

「頼んだわ……倒れそ」

「油断は禁物だぜ。シン、ヴェルシェ。一匹でも逃がせば大火事になるかもしれない」


 俺は燃え盛る網と、それに群がっていた井戸潜みを眺めた。

 気化したホイホイを吸い込んで動けなくなった井戸潜み。

 逃げ切れずに、それらは次々と死んでいく。


 ふと、浮遊感を覚える。何だ?

 ホイホイを吸ってラリっちまったのか?

 事前に防毒剤は飲んでたんだが。


「シン!」


 ファルドがこっちを向いて叫ぶ。

 次の瞬間、俺は地面に叩き付けられた。


「ぐえっ!」


 俺は咄嗟に転がって、犯人を視界に収める。

 そこには、さっきの錆びた鎧が居た。

 フラグの回収が乱暴すぎるとも思ったが、そんな事を考える心の余裕も、すぐに引っ込んだ。

 三メートルの巨体は、直立すると異様な威圧感がある。

 その右手には、同じく錆だらけのナタが握られていた。


「……」


 そして、振り下ろされるナタ。

 俺は死を覚悟したが、ファルドが間に滑り込み、守ってくれた。

 ギリリ、ギリリと刃が軋む。


「はやく、逃げろ!」

「ファルド、すまん!」


 俺が腰を抜かしながら逃げると、ファルドは錆鎧との鍔迫り合いから抜け出す。

 ナタは地面に勢い良く刺さる。


「掛かってこい、デカブツ!」


 錆鎧はぎこちない動きで、ファルドに視線を移しながらナタを持ち上げた。

 ファルドはそのナタを、真横から蹴る。

 錆鎧はその衝撃で、ぐらりとよろめいた。

 その隙に、ファルドが飛び退く。


「アンジェリカ! ルチア! 援護を頼む!」

「当然でしょ!」


 アンジェリカの放った火球が鎧にぶつかるが、びくともしない。

 業を煮やしたアンジェリカが、今度は錆鎧の目の前に炎の壁を作る。


「……!」


 炎の壁の前で足を止め、ゆっくりとファルドのほうへと回り込もうとする錆鎧。

 幸い、その速度はのろい。

 ルチアがその間に、ファルドにブレス・エンチャントとスクリーン・エンチャントを掛け終わる。

 俺にはホーミング・エンチャントを掛けてくれた。


「喰らえ!」


 ホーミングの掛かった太矢が、錆鎧の胴体に突き刺さる。

 続いてルチアからもう一発の太矢が放たれ、錆鎧の頭に命中した。

 当然、錆鎧への効果は今一つのようだ。

 そんな予感はしていた。

 だって明らかにアンデッド系だもんな。


「こういう時は、火炎瓶ッス!」


 ヴェルシェの投げ付けた火炎瓶は、錆鎧が振り向きざまにナタを横薙ぎして、叩き割られてしまった。

 火の付いた液体が飛び散るだけで、錆鎧には届いてすらいない。


「しょええええ! 高かったんスよ! あんまりッス!」


 ヴェルシェがその場に泣き崩れる。

 空気とは何だったのか。このシリアスブレイカーめ。



「――これは、一体何の騒ぎだ!」


 モタモタしている間に、村人達が集まってしまった。

 そういや、打ち合わせでは井戸潜みを焼いた時点でみんなが集まるって話になってたもんな。


「今は来ちゃ駄目だ!」


 ファルドの叫びも虚しく、錆鎧が再びファルドに襲い掛かる。


「おい、あれ! 錆の騎士じゃねえか! イザヴェロ、てめえ! 処理したんじゃなかったのか!」

「ふざけんな! 教会に払う金をケチってお祓いしなかったのは誰の決定だと思ってやがる!」

「財政が切迫してたんだからしょうがねーだろ! お前等がドレッタ商会にとっとと話を付けてりゃ、この村も今頃もうちょっと潤ってたんだ!」

「は! 気楽だねェ! おたくの所の息子さんは、自警団じゃなくて騎士団への就職なんだからねェ!」


 村人達の言い争う声。

 今はそんな事してる場合じゃないだろ。


 ファルドは錆の騎士とやらのナタを何度も横に逸らしているが、いつからかナタの軌道が変わる。

 俺とルチアのクロスボウもナタで防がれるし、正直そろそろジリ貧になりつつある。

 ヴェルシェも何度か近寄って接近戦を試みるが、大ぶりのナタを避けるので精一杯だ。


 アンジェリカが援護の詠唱を止めて、村人達に小石を投げ付ける。


「手伝ってよ。アンタ達の村じゃない! 誰がやらかしたなんて問題じゃないでしょ!」


 それが人に物を頼む態度かよ……!

 まあいいか。こっちが必死こいて戦ってるのに、目の前で責任のなすりつけあいに興じてる連中だもんな。


「あのなあ、いくらお前が勇者の仲間だっつっても、俺達にもメンツってもんがあるんだ」

「小石投げ付けて上から目線で手伝えだと? 冗談は胸だけにしとけや!」

「そうだそうだ! テメーらで処理しきれなかったのが悪いんだろ! 魔女の墓場を呼んでこい!」

「やっぱり倉庫を燃やすべきだったんだ! こうなると思ってたんだよ!」

「……」


 アンジェリカの眼差しが、氷点下に冷え込む。

 一触即発という言葉が、これほど似合う空気も無い。


「やめるッス!」


 ヴェルシェがアンジェリカと村人の間に立つ。


「何だあ? エルフの嬢ちゃん。新入りか?」

「だからどうしたんスか! 何でも任せきりにしちゃいけないって事くらい、自分も解ってるつもりッス!

 自分達は、出来る事を全力でやろうとしてるんスよ!」

「あん? じゃあ俺達もあの錆の騎士に挑めばいいのか?」

「そういうワケじゃないッスけど……ちょっとくらい、その……」

「お前、いくつ?」

「お恥ずかしながら八十を超えてから数えてないッス」

「は? 八十超えてそれかよ。話にならねえ、帰れタコ」

「だっせ! すっこんでろ!」

「うう、めげそうッス……」


 くっそ、言いたい放題言いやがって!

 ヴェルシェもいい線行ってたんだけどな……。

 だが、こいつら下手したら魔女の墓場に頼みに行って、俺達をディスりそうだからな。

 そういう事されると、今後の活動がしづらくなる。

 いつも、どこでも、悪い噂は良い噂を駆逐していくからな。

 人は解りやすい獲物を求めたがる。


 今ここで野次を飛ばすような阿呆に、いい顔をしてやる義理なんて無い。

 なら、俺が汚れ役を買って出たほうがいいだろ。

 弱者には弱者の戦い方があるんだ。


「まあまあお待ち下さい皆さん! 勇者一行といえど、所詮は子供」


 アンジェリカがすごい形相で俺に振り向く。俺はウィンクで返した。

 するとアンジェリカは、ロッドを折りそうになりながらも、村人に向き直る。


「いかに神の祝福とやらがあった所で、皆さんの長年の経験には足下にも及びません。

 だというのに、本来なら彼らを見守るべき大の大人が!

 皆さんの身から出た錆、ええ文字通り錆の塊! これを前に責任のなすりつけあい!」

「シン! そっちいった!」


 錆野郎め。ファルドに苦戦したからって、一番弱そうな俺に狙いを定めたか。

 ルチアをシカトしたのはナイスな判断だったな。

 俺は村人と、錆の騎士からも離れた場所へ走っていく。


「お前等、恥ずかしくねーのか! 俺は恥ずかしいから逃げるよ! 井戸があったら入りたいくらいだ!」


 俺は倉庫へ逃げていく。

 錆の騎士は相変わらず、俺狙いだ。


「アンジェリカ! もういっそ倉庫ごと燃やせ! 錆びるって事は金属だ! 炭火焼きにしてやれば逃げ場も無くなる!」


 アンジェリカが俺に反論か何かを言おうとしたが、別の声に阻まれる。


「その必要は、無い!」

「――え?」


 最初に出会った村娘……リーファが数人の男衆と一緒に、どでかい丸太を担いでやってきた。

 リーファも、とんでもない馬鹿力だが、まさか丸太でどつくつもりか?

 確かに丸太は最強のサバイバル装備だって話だが……。


「みんな、行くよ!」

「おう!」

「っしゃあああ!」


 まさかだった。

 それはまるで暴風のような突撃。

 錆の騎士に向けて駆け抜ける、丸太持ちの村人達。

 当然、動きの鈍い錆の騎士に、それを避ける事なんて不可能だった。

 ナタのリーチもぎりぎり届かない。


「――!?」


 錆の騎士に、丸太がドスンとブチ当てられる。

 半歩ほど、勢いに負けて押し下げられる錆の騎士。

 だが、そこまでだった。


 錆の騎士はナタを上に構え、そのまま振り下ろす。

 丸太を支えていた村人達は一目散に逃げ出した。

 ドカッと盛大な音を立てて、ナタが丸太に食い込む。

 たった一発で、丸太は真っ二つに叩き切られた。

 威勢が良かった割にはアッサリだったな、なんて言えないよ。

 勇者一行の中で頼りになるのは、丸太を持ってきた連中だけだ。


「駄目か! 次の丸太を! そこの村役場の連中もだ! 早くしろ!」

「わ、わかった!」


 また俺達だけに戻った。

 あの爽やか村娘リーファは、この村でもそこそこ発言力があるみたいだな。

 さっきまで不満タラタラだった奴等も、渋々といった様子で従った。


「……」


 錆の騎士は立ち尽くしていたが、少しして左手からどす黒い液体を垂らし、ナタに塗りつける。

 アレは……何だ?


「ファイアーボール!」


 我に返ったらしいアンジェリカが、騎士の左手に向けて火球を放つ。

 騎士がナタで防ぐと、黒い液体がゴワッと音を立てて燃え盛る。

 しかし、すぐにそれも鎮火した。

 可燃性の液体って事だろうか。


「奴の内側に、火を放つ方法はあるか?」

「この火炎瓶の中身を、ボルトに塗ってみるッス」

「ルチア! 聞いたか!」

「やってみましょう」

「シン! 俺とアンジェリカでこいつを引き付ける!」

「頼んだ! なるべく手早く済ませるから!」


 ヴェルシェがポーチから火炎瓶を取り出し、慎重に蓋を開けた。

 開けても燃えないって事は、衝撃で着火するタイプのようだ。


 残りの太矢を矢筒から取り出し、火炎瓶に先端を浸す。

 即席の火矢だ。

 俺とルチアは、これをクロスボウに装填し、錆鎧に向けて放つ!


「……!」


 鎧に突き刺さった瞬間、内側からボンッと音がする。

 音と同時に、太矢が刺さった部分の隙間が少し光ったような気がした。

 何となく読めてきたぞ。


「ルチア、俺と一緒に胴体を狙い続けよう。丸太が役に立つかもしれないぞ」

「理由は察しました。ホーミングを掛け直します」


 俺の真横を、金属の塊か何かが勢い良く通り過ぎ、少し後ろに刺さった。


「うわったぁ危ね!」


 あの錆野郎! ナタを放り投げてきやがった!

 ファルドが丸腰になった錆の騎士に駆け寄り、何度か攻撃する。

 錆の騎士は相変わらずタフで、逆にファルドのロングソードを引っ掴んでしまった。

 ファルドと、錆の騎士の引っ張り合い。

 くっそ、あの錆野郎はいつの間にそんな知恵まで付けやがったのか!


 ふらふらと錆の騎士が動くせいで、撃てない。


 せっかくホーミング掛けて貰っても多分、間に誰か居るとそのまま刺さっちゃうタイプだろ。

 今までの軌道を見てきたが、そうなるとしか思えないのだ。

 頼むから、誤射だけは勘弁だぞ……。


「ファルドさん! そのまま後ろに引っ張り続けるッス!」

「こ、こう!?」

「そうッス! 思い切り引っ張るッス!」

「こうか!」


 ヴェルシェが入れ知恵をし始めた。

 何を考えているか、俺にもよく理解出来るぞ。

 そして、次に何を言うかもな!


「で、手を離すッス!」


 錆の騎士はつんのめって、後ろにたたらを踏む。

 やっぱりそれを考えてたか。

 咄嗟に思い付くとは、流石は罠を得意とするヴェルシェだ。

 これで狙いやすくなったな!

 俺は引き金を引く。


 錆の騎士はロングソードの刃を持ちながら、振り回して太矢を叩き落とそうとするが、上手く行ってない。

 どうやら、慣れるまでは扱いきれないようだ。

 そのお陰で、太矢は何発も胴体に当たり、腹の辺りには何本もの太矢が突き刺さっていた。

 もちろん命中と同時にボンッするから、鎧の耐久力はそろそろゼロだろう。

 そこに現れる、爽やかマッチョおじさん達と、それを率いるリーファお姉さん。


「今だ! 丸太、二本目! 行くぞ!」

「おおおおおお!」


 村人達の雄叫びが木霊する。

 丸太は見事に、錆の騎士の腹に風穴を空けた。

 その風穴から見えたのは、俺達がさんざん煮え湯を飲まされた、あの忌々しい井戸潜み達だった。




 錆の騎士の鎧

 西の果てより現れた、錆の騎士が用いた鎧。

 その名の通り錆び付いているが、この騎士が存命中は一度も傷が付かなかった。

 赤茶けた色合いは、ある種の禍々しさすらをも感じさせる。


 錆の騎士は常人離れした巨体の持ち主であり、戦乱に沸く大陸を混乱に陥れた。

 最初に現れた魔王軍の尖兵として知られ、数十年が経過した現在においても、かつて彼と相見えた者達に悪夢を見せ続けている。



 錆の斬馬剣

 西の果てより現れた、錆の騎士が用いたとされる巨大な片刃剣。

 かつては一閃するだけで馬が挽肉と化した程の業物だったが、今は刃が半ばほどで折れてしまっている。

 それでも、錆び付いてなお剛性を失っておらず、常人には持ち上げる事すら不可能である。

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