skeleton&human phantom dancing the party
深夜0時を過ぎた頃、職員室さえも光が無くなった学校では、息を潜めていたものたちが活発に動き出していた。
これは、理科室でのできごとである。
捨てられた臓器を拾い順に嵌めていく、そんな作業をこなして数週間新米の僕はどうももの珍しいらしくこうちょっかいを出されている。
どうも、改めまして新米こと人体模型です。先代の人体模型が七不思議にもなる位力の強い方だったせいか、学校に来て早々自我と歴代の先代たちの記憶を手に入れました。
理科室を使って理科の勉強をしている小5の子供達と現在日々勉強中なのです。
沢山の知識を得て早く力をつけたいですね。より、怖く驚かすには、知識はかなりの武器になるんです。
新米とあって、僕は学校の中でも力の強い方達に挨拶をしなくてはいけません。別に、強制でも何でもないのですがしないとより次の日が恐ろしいというか何というか。
子供達も同じみたいですね、体格の良いエンドウ君やハラダ君は小さなサイトウ君によく馬乗りになって挨拶を強要してます。
他にも、彼ら達よりも小さな男の子に特に嫌がられてます。それは、それは酷く。美味しい呪いとなっています。
臓器を、隠したりするのもこの二人です。いえ、決して怒ったりはしてませんよ、可愛い子供のイタズラです。……ちょっといらっとはしますけどね。
それでも、僕の先輩たちの方がよっぽどマシだと思います。手荒な歓迎はするけどそれはオバケとしての常識内では当たり前の事なのですから。
大鏡さんは、突然鏡の反転世界に引きずり込んできたり、ベートーヴェンさんは音楽室のメトロノームを一斉に鳴らした後、ピアノまで引き寄せてきて指を潰そうとしてきます。いつも意識を取り戻せるかヒヤヒヤします。
各々のオバケが自分の得意分野で迷い子がいない時、つまり程んどの日を、僕でからかっていますが1番下っ端なので我慢です。七不思議でも都市伝説にも噂すらないのですからね仕方ありません。
さて、今僕は理科準備室にいます。とてもとても美しい骸骨模型さんが毎晩泣いているので今日は慰めに来たんです。下心なんてありませんよ。
「クスンクスン」
改めて見ても、彼女の骨格は美しい。……少し小柄なのと骨盤から多分女性だと思う。僕が、人体模型だから尚更その骨格の美しさには惹かれてしょうがないのです。
「どうしたんですか?」
ここ、最近なのだ。きっと彼女はオバケとして自我を産んだのは、だけどどうして泣いているのかは分からなかった。自我を持てるというのはこんなにも素晴らしいのに何を泣いているのだろうか。それに、先輩達オバケが手荒にしないという事は、彼女はそれだけ強いのか、何か有るのだろう。
「指輪が見つからないのあれがないと私……私は彼と結婚できないの」
彼女は細い骨の指で顔を隠してそう答えた。けれども僕には彼女が嘆いている理由が教えて貰っても分からなかった。
「お願いします、一緒に探してくれま……ヒッ」
美しい彼女は、僕を見て驚いていてる。その姿はまるで話しかけてきたのが人体模型と知らず会話していて顔をあげて、気づいて驚いたという人間のような驚き方だった。ハナコさんとかなら、驚いても気持ち悪いとか罵声を投げてくるだろうし、他のオバケには先代たちそっくりの僕は今更驚かないらしい。
「何を驚いているの?」
分かっているけど聞くのは意地悪だろうか?
「イヤッ、来ないで」
彼女に拒否られて少し悲しい。けど、それよりも大事な事がある。
「暴れたら、君の美しい骨が折れちゃうよ?」
彼女程の骨格の持ち主はそうそう表れないだろう、だから勿体無いと思いそう声かけたが腕という言葉に反応したのだろう、一拍遅れて現実を認めたようだ。
「何言って……るのそんなっ!!」
彼女は、今自分が骸骨になったのだと知ったようだった。
悲鳴をあげ倒れそうになって支えた手を嫌そうに見てる。
「君は、僕たちの仲間なんだよ」
「嘘よ」
「嘘じゃないよ自分の姿を見てご覧よ」
学校のオバケにとって恐ろしいのは自我を無くすこと。元々無機物から自我を宿した者達が多いのだ。オバケとしての自分を否定していたらそのうち彼女の自我は消滅してしまう。それは勿体無いなと思う。
「嘘よ、イヤッ認めたくない、わた私は結婚して幸せになるのよ」
どうやら、拒絶されてしまったようだ。悲しいけどどうしようもない、もう少しで丑三つ時も終わる。そしたら、産まれたての僕は元の位置に戻れなくなってしまう。動けなくなっていたなんて知られたら先輩オバケ達にからかわれてしまう、それは嫌だから理科室に戻ろうとしたのだけど。
「何ですか?」
彼女が腕を掴んで離してくれないのだ。困ったな……。
「1人にしないで」
彼女の美しい窪みにその都合の良さに何も言えなくて準備室から出ていこうとした足は止まってしまいました。
「……」
こういう時、どうしたらいいのだろうか。先代たちの記憶ではと。
「Let's shall we dance?」
「はい?」
もしかしなくてもこれは外したのかもしれない。
ただでさえ、好感度は低いのにこれで地に落ちてしまったかもしれない。怖がってる、オバケなのにおかしいとかは彼女の場合適応されないか、とにかく怖がってふ彼女に言う台詞では無かった。もしかしたら、怒ってるかもしれない。恐る恐る見たら
「クスクス」
彼女は笑っていた。
「ここで踊りましょとか可笑しすぎるわ」
彼女が笑ってくれるなら恥も何もかも捨てられるだろう。何故か、そう感じた。さっきまで動いていた胸を入れてるからか、今までに感じたことのない高まりを感じます。
「オバケって気持ち悪いわ」
唐突に、そう彼女が言いました。
「そうでしょうね、人間なら気持ち悪いと思います」
得体の知れないものを特に人間は怖がるらしい、だからエンドウくんとハラダ君も見た目からして気持ち悪い僕にイタズラをしていたのだろうと思える。あんなに、顔を恐怖に歪ませるとは思ってもいなかった。
「今、私はその気持ち悪いオバケなのね」
「そうですね」
事実を噛み締めるように、彼女は言った。
「人間には戻れないのよね私」
「そうですね」
どうやら、彼女は人間だったようだ。
「結婚も出来ないのよね、指輪ももう私の指には無いのね」
さみしそうに、言う彼女に何て声をかけていいのか本当にわからなくなってしまいました。
「私はオバケになってしまったのね、クヨクヨしていても仕方ないわねいいわ踊ってあげる」
どうやら、割り切れたようです。彼女が落ち込んでる姿をずっと見ていられなくて声をかけたので、本当に声をかけて良かったと思います。それにしても、滑ったと思ったダンスの誘いに乗ってくれるとは。
「いいの?」
思わず、生徒達みたいな子供らしくはしゃいで聞いてしまいました。先輩達みたいになりたくて大人ぶっていたのに、反省です。
「多分、落ち着いて事実を反芻しなければ私は認めずに狂っていたからそのお礼よ」
美しい彼女の手は僕の手を掴みトントンと踊り始めました。
観客は2名います。時間は、危ないですが心行くまで踊ろうと僕は思いました。今なら、先輩達に笑われても驚かさてれも怖くはありません。
彼女がいれば、そう思えます。
後に、深夜2時になると理科室の人体模型と準備室にある骸骨が踊る何ていう七不思議が出来るなんて思ってもいませんでした。
そうそう、エンドウくんとハラダ君は、殺されていたらしいよクスクス。バラバラになっていたんだって怖いねクスクス。
1話目の人体模型が学校からでていったから七不思議に枠が出来新たな七不思議が誕生した。
骸骨は言わずもがな2話の先生である。