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ハーレム・ゲーム  作者: 松戸京
7日目
82/82

真の勝者

「……ふっ……くそっ……人選ミスったな……」


「人選? どういうこと?」


 俺はなんとかソファに腰掛、有栖川のほうに顔を向ける。


「……二階堂は、芽衣が選んだんだ……拉致するように京極に言ったのもアイツ。芽衣はマジで京極がこの機会にこの空間でどうにか俺に謝罪するようにしたかったらしいから、あの生真面目で清廉潔白な二階堂を立ち合わせたかったそうだ……」


「で、私はアナタが選んだの?」


「……ああ。そうだ」


「どうして?」


 そう聞かれて俺はニヤリと有栖川に笑って見せた。


「そりゃあ……お前……お前が一体どんなヤツか気になったからだよ」


 俺がそう言うと有栖川は特に感情を変化させなかった。いよいよ、俺も息をするのさえ辛くなってきた。


「……そう。気になった、ね」


「ああ……いつも一人で教室の隅で本を読んでいるお前……そんなお前が一体このゲームに巻き込まれたらどんな反応をするのか……ふっ……単純な興味からだよ」


 俺はそういって咳き込んだ。いよいよ終わりが近いらしい。


 有栖川はソファに座る俺の前に立った。そして、嬉しそうに微笑む。


「いいえ、北村君。アナタの人選、間違ってはいなかったわ。私ね……いつも教室の隅で何の本を読んでいたと思う?」


「……まさか、推理小説……か?」


 有栖川は満足そうに頷いた。


 俺はフッと小さく笑ってみせる。


「ただ、アナタが不幸だったのは、私のその推理小説の読み方にあったのよね」


「読み方……どういうことだ?」


 俺が訊ねると、有栖川は長い髪を手で触り、目を細めて俺を見た。


「私ね……推理小説を読みながら考えていたの。いつかこの小説の探偵みたいに事件に巻き込まれてそれを見事に解決する……ふふっ。違うのよ。私が考えていたのは……いつかこういう事件に巻き込まれて、犯人になること、だったのよ」


 すでに限界だった。体全体がだるく、瞼が下がってくるのがわかる。


「北村君。このゲーム、中々良かったわ。でも、私としてはもっと良いものにすることができると思うの。だから、今度は私がこのゲームを主催するわね。ああ、北村君が参加できないのは残念だけど」


 邪悪な笑みを浮かべた有栖川を見て俺は理解した。


 なるほど。日常に対して俺は復讐したのかもしれない。


 そして、非日常を手に入れた。


 だが、俺は手に入れた非日常……有栖川美咲という非日常から拒絶された……いや、拒絶されたというか……俺が手に入れた非日常は俺自身が扱うには少々荷が重過ぎたようだった。


「じゃあね、北村君」




 そして、北村幸一が最後に聞いた言葉は、日常で交わされるような、そんな別れの言葉だった。

これにて完結です。完結ですが……こういう類の話やはり難しいですね。個人的にもわかりにくい部分が残ってしまった感じですね。次はさらにいいものにできるよう頑張りたいです。読んで下さった方は、お付き合いありがとうございました。

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