最後の朝
「……ん?」
目を覚ますと、朝だった。
俺は時計を見る。九時だ。
そして、今日は七日目。
この屋敷での生活最後の日。京極が言ったことが真実ならば、明日の朝には京極の家のものがやってくることになっている。
もっとも、その京極は既に死体となっているのだから、果たして俺達が京極の家の者によって無事なままで解放されるかどうかというとちょっと微妙なところだが。
「……まぁ、そんなことは明日になってみないとわからないか」
俺は意味もなく一人でそう呟き、起き上がると部屋の扉を開ける。廊下に出てみてももちろん誰もいなかった。
……そういえば、今日は有栖川が大部屋に集まれとか言っていたような気がする。
集まる義務などこれっぽっちもない。だが、果たしてあの有栖川が一体俺達に何を話すのかは気になっている。
アイツは確か、このゲームの黒幕を言い当たると言っていた。馬鹿な話である。
「……黒幕ねぇ」
そう考えながらも、俺の足は自然と大部屋の方に向かっていた。
「あ……コウちゃん」
背後から声がした。振り返ると、芽衣の姿があった。
「ああ。芽衣、お前も起きてたのか」
「あ……うん。なんだかあんまり良く眠れなかったんだよね……えへへ……」
芽衣の目の下には確かにかすかにクマがある。おそらく緊張と不安で眠れなかったのだろう。芽衣はそう言う奴である。
「そうか。俺は大部屋に向かおうと思っているが、お前はどうする?」
「え? もしかして、有栖川さんの話?」
「ああ。黒幕なんてアイツに言い当たられると思ってちゃいないが、アイツが一体何を話そうとしているのかは気になっているからな」
俺がそう言うと芽衣は少し考え込むように下を向いてから、顔を上げて俺を見た。
「私も行くよ。有栖川さん……何かわかったような顔をしてたし」
「分かったような顔? ははっ。まぁ、アイツはなんだかいつも不思議な表情をしているよな」
「うん……クラスでは気付かなかったけど……結構よく喋るんだね」
むしろ、俺の考えではアイツはクラスではなるべく目立たないようにしていたのではないか。
自分の才能を人に気付かせないように、あくまで大人しくしていた。
だとすると、俺達は……
「コウちゃん?」
「え? あ、ああ。すまない。じゃあ、行こうか」
考えすぎだと、その考えを振り払い、俺と芽衣は大部屋に向かった。




