掴めぬ実感
そして、俺と芽衣もそれぞれ部屋に戻った。
今日でいよいよ6日目。
犯人は既に京極が殺されていることを知っている前提でスピーカーから音声を流して来ていた。
そうなると、既に京極が殺されることも犯人は予定していたということになる。
そして何より、あの短い放送の中で犯人が言っていた気になる言葉。
最後に誰を選択するのか……
「……つまり、そういうことだよな」
最後の「ヒロイン選択」。あの口ぶりだとそういうことになる。
順当に考えて「最後のヒロイン選択」とは、また最終日に誰かが死ぬ、と考えていいのだろう。
そして、それを選択するのは俺。となると、その対象となるのは……
「有栖川か、芽衣ってことになるのか」
なんとも悪い冗談だ。そもそも、俺は芽衣も有栖川も「選択」するつもりはない。
しかし、ここまで言ったことは実行してきた犯人だ。
確実に、次の選択も確実に行われることになるのだろう。
「……いずれにしても、後1日、か」
そう時を待たずして最後のときがやってくる。
俺はそう思うとなぜか緊張してしまった。いや、むしろ緊張して当たり前なのかもしれないが。
もうすぐ、全てが終わるのだ。俺達の監禁状態も。この狂ったゲームも。
俺はそのままベッドに横になり天井を見上げる。この景色もすでに充分すぎるほどに見慣れてしまった。
ふと、屋敷の中にはすでに死体が二つあることを思い出す。
二階堂と京極。二人とも学校では死なんて言葉とは無縁の存在だった。
それなのに、今は死んでしまった。その死に様は、二階堂にしても京極にしても、あっという間の話だった。
二階堂は俺達が見ている目の前で、そして、京極は俺達が発見した時にはすでに死んでいた。
なんとも不思議な感じである。まだ二人とも実は生きているんじゃないか、とさえ思える。だからこそ、二人が死んだことに関しても悲しみがないし、ショックもさほど感じていない。
まるでそれこそ、最初からそれがわかっていたかのように。




