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ハーレム・ゲーム  作者: 松戸京
6日目
66/82

あり得ない事象

 そして、6日目。


 有栖川は昨日に言った通り、昼過ぎに大部屋にやってきた。


 大きな欠伸をして、眠そうな顔で、朝から大部屋にいた俺と芽衣の前表れたのである。


「おはよう。お二人さん」


「……おはようというか、こんにちはじゃないか?」


「まぁ、そうね。で……昨日のこと、まだ堪えてるわよね?」


 俺と芽衣を見て有栖川はそう言った。


 俺自身、自分がどれほどショックを受けているのかはわからないが、少なくとも芽衣のほうは俺が大部屋に来たときからずっと沈鬱な面持ちで俯いていた。


「そりゃあそうよね。結局、私、そして北村君と折原さんの三人になっちゃったんですもの。いよいよこれで、犯人が絞られてきたってわけね」


 有栖川のその言葉を聞いて俺と芽衣は思わず同時に有栖川のほうを見る。


 二人に同時に見られた有栖川は特に動じる様子もなく、俺達のことを見返してきた。


「ごめんなさいね。でも、事実は事実よ。私か折原さん、もしくは北村君の誰かが犯人ということになってきた……ふふっ。犯人もとんでもない展開にゲームをもっていってくれたものね」


 有栖川はそういってフッと笑っている。この状況で笑うことができる有栖川のほうが犯人よりもある意味では恐ろしいと俺は思った。


「で、でも……犯人が私達の中にいるかもしれないっていうのは、あくまで可能性の話だって……」


 芽衣が脅えた様子で有栖川にそう反論する。


 有栖川は芽衣の反論に少し驚いたようだったが、長い髪の毛を指先でなぞってから芽衣のほうに顔を向ける。


「可能性、ねぇ……もうこれは確定と言ってもいいんじゃないかしら?」


「え……ちょ、ちょっと待ってよ! じゃあ、有栖川さんは、私かコウちゃんが犯人だって言いたいわけなの?」


 立ち上がった芽衣は、興奮した様子で有栖川に詰め寄る。


「お、おい。芽衣。落ち着けよ」


 思わず俺も芽衣を宥める。


 有栖川も、興奮した様子の芽衣に少し驚いたようだったが、すぐに冷静さを取り戻して俺と芽衣を見る。

「もちろん、私自身も犯人かもしれないけどね」


 少し悪戯っぽい感じでそう言った。


 有栖川のその言葉に俺達は何もいえなくなってしまった。


 その時だった。


『はーい! みなさーん! 元気ですか~?』


 聞こえてきた調子外れに陽気な声。


 俺達は互いに顔を見合わせる。


 聞き覚えのある耳障りな声。それを聞いて俺達は瞬時にそれがスピーカーから流れてきているものだということがわかった。


「ど、どうなっているんだ!? スピーカーから音声は流れないはずじゃ……」


「しっ。黙って、北村君」


 有栖川にそういわれてしまい、俺は仕方なく口を閉じる。


『みなさーん、集まってますか~? ……あれ? もしかしてまた人数減っちゃってたりするのかな? あちゃ~……まぁ、でも仕方ないよね。これもちゃーんと、北村君が『ヒロイン選択』をした結果、だもんね!』


「い……いい加減にしろ! お前は一体俺に何をさせたいんだ!?」


 俺は無駄なこととはわかっていても、思わずそう叫んでしまった。


『ふふっ……でも、もうすぐゲームも終盤。最後に北村君が選択する『ヒロイン』は誰なのかな? 楽しみにしているよ! じゃあね~』


 そういってスピーカーはブツっと音をたてて静かになった。

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