起き抜けの推理
「……で、アナタ達が来たときには死んでいた、ってわけね」
芽衣の絶叫で程なくしてやってきた有栖川は、眠っていたようで少し不機嫌そうにそう言った。
「ああ……京極、なんでこんな……」
あんなことを言ったとはいえ、こんなことになるとは思わなかった。
まさか、あの京極が死んでしまうなんて……
「……京極さん、どうしてこんなことしたのかな?」
「……え?」
と、芽衣の言葉に俺と有栖川はそちらに顔を向ける。
俺達が顔を向けると、芽衣は少し驚いたようだった。
「え……あ……私、変なこと言った?」
「ええ。言ったわ。こんなこと、って?」
「あ……うん。そのね。京極さん。私には色々話してきたの。自分のせいで私達をこんな目にあわせて申し訳ない、ってすごく悩んでた……私は、気にしてないよ、って言ったんだけど……」
芽衣は悲しそうに京極のことを見る。
確かに、京極の死に顔は悲しく歪み、目から涙が零れていた。
「……なるほど。つまり、これは京極さんの自殺だと」
有栖川は淡々として口調でそう言った。
そして、今度は京極の死体に目を移す。
「……残念だけど、折原さん。これは自殺ではないわね」
有栖川の言葉に芽衣、そして俺も思わず目を丸くしてしまった。
「え……で、でも……」
「そうね。そうなると誰がやったのか、って話になってくるわよね。まぁ、その話は後にしましょう」
そういうと有栖川はキッチンから出ると、俺達がいつも食事をしているテーブルの方へ近付いて行った。
「まず、順番に聞いて行くわ。北村君。アナタと折原さんがこの部屋に入ってきたとき、部屋の中は暗かったのよね?」
「え? あ、ああ。そうだ」
「ここね。折原さん。アナタ、もし自殺するとしたら、手元も見えないくらいの暗い中で自殺する?」
そう聞かれて芽衣は困ったように下を向いた。
「そりゃあ、これから自殺するんだから暗い気持ちにはなるわ。でも、この部屋、暗いとホントに何も見えないのよね。包丁がどこにあるかどうかもわからないってくらい。そうなると、まず部屋に入ってきて電気を付ける必要がある。で、自殺した人間が部屋の電気を消せるかしら?」
その言葉を聞いて俺は気付いた。
無論、消せない。
つまり、有栖川は部屋の電気が点いていたこと、それがつまり、この部屋に京極以外の人間が入ったということを表していると言っているのだ。




