寝付けない夜
その日、俺は中々寝付けなかった。
京極が帰った後はすぐにベッドに入ったのだが、目をつぶっても眠れる気配がまるでない。
何度も寝がえりを打ちながら、自分でも無意識のうちに緊張しているのかと考える。
6日目に何か起こるのではないかと、無意識のうちに考えているのではないか、と。
俺はベッドから上半身だけを起こす。
そして、時計を見た。
時計は夜中の3時を示していた。
既に6日目に突入しているのだ。
「……水でも飲んでくるか」
俺はベッドから立ち上がり、扉を開く。
暗い廊下は伽藍としていて、なんだか不気味だ。
ここで誰かに襲われたらひとたまりもないだろう。
俺はそれとなく警戒しながら、キッチンへの道を急ぐ。
そして、キッチンのある部屋の扉の前に立ち、扉のノブに手をかけた。
「あ……コウちゃん」
思わずビクッ反応して瞬時に声のするほうを向く。
「……なんだ。芽衣かよ」
そこには芽衣が立っていた。
パジャマ姿で心配そうな顔で俺を見ている。
「どうしたの? こんな時間に」
「……お前こそ、なんでここに?」
「あ……私、ちょっと眠れなくて……あはは……」
恥ずかしそうな顔で芽衣はそう言う。
同じ理由だと言うのは気が進まなかったので、俺は小さく溜息をついてみせた。
「……水でも飲むか」
「あ……うん」
そういって芽衣と俺は部屋に入った。部屋の中はシーンと静まりかえっており、真っ暗だった。




