京極由香里と二階堂怜子
「あら? 誰かと思えば……」
俺を見るなり、ソファの上の一人は、汚いものを見るかのような目つきをこちらに送ってきた。
京極由香里。コイツも俺と芽衣、そして、有栖川のクラスメイトだ。
いかにも高飛車なお嬢様という感じで、ゆるやかにウェーブのかかった髪を手で弄くりながら、俺のことを睨んでいる。
……まぁ、俺としては、こんなヤツには絶対に会いたくなかったのだけれど。
「北村君か。一体これはどういうことなのだ?」
京極の隣から爽やかな声がした。
同じくこちらも制服姿で、髪の毛をポニーテールに束ねた女の子が不思議そうに周囲を見回しながら俺に尋ねてきた。
二階堂怜子。コイツも俺と同じクラス。
剣道部の主将で、生徒会長という、クラスのリーダー的存在だ。
「さぁ? 俺にはさっぱり……」
もちろん、俺が応えられるわけもない。
しかし、ここで既に俺は一つのことに気付いた。
ここにいるのは、全員俺のクラスのクラスメイトだ。
芽衣を含めて、有栖川、京極、二階堂……目の前にいるのは俺のクラスの女子生徒だった。
「ふんっ。当たり前ですわよね。アナタのような下賎な犬が私達に教えを垂れるなど、どのような状況下にあってもあり得ないことですわ」
俺の至高を邪魔するようにそう言うと、不機嫌そうに鼻を鳴らす京極。
再び俺は拳に力が入るのを感じるがぐっと我慢する。
そんな京極を見て二階堂は怪訝そうな顔をして再び俺の方を見る。
「まぁ、それはいいいとして……なんで、ここに折原、有栖川、京極、そして、君、僕が集まっているのか、ということを聞いたんだが」
呆れたようにそう言う二階堂。
「だから、わからないんだって……」
聞きたいのは俺の方である。
なぜ、俺はクラスメイトの女の子達とこんな家の中にいるのか。
しかも、聞けば密閉された家だという。これじゃあ、まるで――
と、その時だった。
『あ、あぁー……もしもし?』
と、電子的なノイズの混じった声がどこからか聞こえてきた。