不安
有栖川の後を付いて行くと、階段があった。
有栖川は躊躇うことなく階段を下りて行く。俺と芽衣もその後に続いた。
そして、階段を降りるとまた長い廊下があった。
「おい。どこまで行くんだ?」
「もうすぐよ。この家、かなり広いようだけど、私達が行動できる範囲はかなり狭いみたいね」
「何? どういうことだ?」
「後で教えるわ。とにかく、まずは後の二人と合流しましょう」
二人……後の二人と、有栖川は言った。
つまり、この家の中に監禁されているのは、俺と芽衣、そして有栖川を含めれば五人ということになる。
五人もの人間がなんで一つの家に監禁なんてされているのか……考えてもわかるわけもなかった。
むしろ、そんな以上な状況下に、俺は益々不安が募っていくのを感じた。
「コウちゃん……」
心配そうな声で芽衣が俺の顔を覗き込んでくる。
やれやれ……こんな時でも芽衣は俺に頼りきりか……嫌になる。
俺は俺のことで精一杯なのだ。
普段でさえ芽衣の面倒を見ることなんて俺にはできていない。
むしろ、芽衣のせいで、俺は――
「着いたわよ」
有栖川が立ち止まった。
俺達の前には大きな扉があった。
有栖川が扉の取っ手に手をかける。そして、そのまま扉が開かれた。
扉の先にあったのは、先ほどよりもさらに大きな部屋だった。
この家の客間に当たる部屋なのだろう。天井には豪華なシャンデリアが吊られており、部屋の中央には大き目のソファが二つある。
そして、そのソファの上に、二つの人影が並んで座っていたのだった。