気付いたこと
そして、夜遅くになるまで俺は部屋から出なかった。
二階堂が死んだ今となっては、どうにも部屋を出る気にはならなかったし、仮にだとしても何かすることがあるわけではなかった。
結局、俺達は現在籠の中の鳥の状態にある。
だから、こうして各自部屋の中で大人しくしているしかない。
スピーカーから犯人の声が聞こえてきたときだけ動けばいいのだ。
「……そうだ。何をしたって、無駄なんだよ」
俺はそう呟いて目を閉じた。
そして、それからしばらく眠るでもなく、ただベッドの上にジッとしている。
すると、コンコンと、ドアをノックする音が聞こえてきた。
「誰だ?」
ドアに向かって声をかける。
「私よ。有栖川」
確かに、有栖川の声だった。
俺は立ち上がり、用心しながらドアを小さく開く。
「どうも」
確かに、ドアを開いた先に立っていたのは、有栖川だった。
「なんだ。こんな遅くに」
俺は部屋の時計を見る。時刻は既に11時を回っていた。
「ああ、ごめんなさいね。ちょっと私、気付いたことがあるの」
「気付いたこと? なんだ?」
すると、有栖川は辺りを見回してから、俺の耳に口を近づける。
「二階堂さんが殺されたことに関してよ」
そして、囁くようにそう言った。
二階堂が殺されたこと?
それについて気付いたって……一体何に気付いたというのか?
「まぁ、着いてきてくれればわかるわ」
そういうと有栖川はそのまま廊下を歩き出した。
仕方なく俺も部屋を出てその後を付いて行くことに下のだった。




