疑問
「といっても、つまり、これは私達自身にも同じことが言えるわけよね」
「……え? なんだって?」
俺が訊ねると有栖川が俺の方を見る。
「つまりね、北村君。仮に犯人が声を変えていたとすると、死んでしまった二階堂さん以外、私達全員にそれを行うことは可能だった、ということよ」
「ま、まぁ、そうなるな……」
「もちろん、京極さんにしても、もしかするとこれまでの全てが演技であって、この事件自体、京極さんの自作自演なのかもしれない。つまり、やっぱり私達全員に、まだ犯人である可能性がある、ってわけね」
有栖川は淡々とそういい終わった。
そういわれて俺と芽衣、京極は互いに顔を見合わせあった。
しかし、京極は突如として立ち上がると、なぜか得意気な顔で有栖川を見る。
「ふんっ! そんなこと言いましたら、有栖川美咲さん! アナタこそ、二階堂さんを殺した犯人としての可能性は、もっとも高いのではなくて!?」
そして、京極は高らかにそう言い放った。
「ええ。そうね」
しかし、あっさりと有栖川がそれを認めてしまったので、京極はどこか拍子抜けしたような感じだった。
「……なるほど。今度は二階堂の件か」
俺がそう言うと有栖川は頷いた。
「さて、信じてもらえないでしょうけど、先に言っておくわ。私じゃない」
有栖川は、どうせ信じてもらえないとわかっているごとく、適当にそう言った。
二階堂は有栖川が運んできたお茶を飲んですぐに息絶えた。
つまり、普通に考えれば、有栖川がお茶に何かしらの毒物を混入し、二階堂を殺そうとした、というのが自然である。
しかし、有栖川の様子を見ているととてもそう言った風には見えなかった。
「ふんっ! 白々しいにも程がありますわ! アナタがお茶に毒を入れたに決まっていますわ!」
京極が半狂乱になりながらそう言った。
「そうね、そう考えるのが、普通よね」
しかし、有栖川はあくまで慌てずに返す。
「でも、むしろ私の方が教えて欲しいくらいなのよ。どうやって二階堂さんを殺したのかということを」




