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ハーレム・ゲーム  作者: 松戸京
3日目
33/82

道化

 有栖川がそういうと一瞬、皆何も言えなかった。


 そして、しばらくしてから京極が馬鹿にしたような感じで有栖川に対して口を開く。


「馬鹿馬鹿しいですわ……あの声は確かに折原さんのものでしたわ」


「へぇ。京極さん。アナタ、そんなにも確証を持って、折原さんの声だと断言できるわけ?」


「え……そ、それは……」


「アナタは学校ではほとんど折原さんと喋ったことがない……いえ。むしろ、私から見れば同じクラスになってからは一度も喋っているのを見たことがないわ。そんな人がどうやって折原さんの声とそうでない人の声を区別できるというのかしら?」


 そういわれると自信がないのか、京極は何もいえなくなってしまった。


「そもそも、スピーカーからの声を聞けばわかると思うのだけれど、この屋敷に私達を閉じ込めた犯人は声を変えているわよね。もしかしたら、京極さんに電話した時も、その人物は声を変えていたかもしれない……つまり、電話の声の主が、もしかすると、折原さんじゃない可能性もある、ってことね」


「じゃ、じゃあ……この事件の犯人がワタクシにあんな電話をかけてきたというんですの?」


 京極がそう訊ねると、有栖川は小さく頷いた。


「そ、そんな……わ、ワタクシはなんと馬鹿なことを……」


 京極はがっくりと肩を落として項垂れる。


 しかし、今、有栖川が言ったように、そう考えるのが妥当だろう。


 俺達を監禁しようとした犯人が芽衣のフリをして京極と接触した。


 そうとは知らない京極はまんまと犯人に言われるがまま、俺達を監禁するための場所を用意してしまったというのだ。


 しかし、かといって、そうだと断定できるわけでもなかった。


「ええ。無論、もしかしたら、折原さん本人だったと言う可能性も否定できないわ」


 有栖川がまるで俺の心の中を見透かしていたかのようにそう言う。


「そ、そんな…・・・私そんなことしてないよ……」


 芽衣が悲しそうな声でそう主張する。


「残念だけど、折原さん。アナタがいくら涙声で無実を訴えても、それを演技だと仮定することができる限り、アナタを無実だとすることはできないわ」


「そ、そんなぁ……」


 力なく芽衣はうなだれた。


 幼馴染の俺からしてみれば、芽衣の態度は嘘をついているようには見えなかった。


 もちろん、有栖川の言う通りだからといって嘘をついていないと言い切れるわけじゃない。


 だけど、芽衣が一人でそんなことをする……


 そんなこと果たしてできるのだろうか?


 俺にはとてもそうは思えなかった。

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