糾弾
「あ……」
大部屋の扉を開けると、既に女の子達が集まっていた。
皆一様にキョトンとした顔で俺を見ている。
唯一、有栖川だけが目を細めて嬉しそうな笑顔で俺を眺めていた。
「は、ははは……笑えない冗談だよな」
そういって俺は曖昧に笑う。笑うことしかできないからだ。
「こ、殺す? そ、そう聞こえたよな? ま、まさかな……」
殺す。
確かにそう聞こえた。
ヒロイン選択っていうのは……俺が殺すヒロインを選択しろっていうのか?
この四人の女の子の中から。
あまりにも飛躍した現実は現実として成立し得ない。
俺はフワフワとした気持ちでなんだかドラマを見ているようだった。
「とりあえず、落ち着こう。北村君」
と、始めに声をかけてきたのは二階堂だった。
「まず……我々がこれからどうするか、だ。もちろん、アイツの言うとおり、君が私達の誰かを殺すなんてことはあってはならない」
「でも、殺さないと、北村君の身体の中の爆弾が爆発して皆死んじゃうんでしょう?」
と、二階堂の話を遮って有栖川がそう言った。
「あ、ああ。だ、だが、待って欲しい。まず、北村君の身体に爆弾が埋め込まれている……そこが問題だ。それが本当なのかどうか。もしかしたら、犯人の嘘かもしれないだろう?」
「嘘じゃなかったら?」
有栖川はなぜか嬉しそうに二階堂を見る。
「そ、それは……」
二階堂は困ったように下を向いてしまった。
俺としても全くわからなかった。
自分の体に爆弾が埋め込まれているなんて信じられない。
まず、いつ、爆弾が埋め込まれたんだ?
ここに連れてこられたときか? そんなのあり得るのか?
「だ、だから嫌だったんですわ!」
と、いきなり京極が部屋中に響く声で叫んだ。
そして、ゴミを見るかのような目で俺を見る。
「あ、アナタのような下賎で、どうしようもない人と一緒にいたらきっと良くないことが起こる……ワタクシは最初からこんなことになるんじゃないかって思ってましたわ!」
「京極さん……そんな言い方……」
オドオドとしながらも芽衣が遠慮がちに京極に声をかける。
しかし、京極はキッと芽衣のことをにらみつけた。
「アナタは北村君の幼馴染でしょう? 幼馴染がしっかりしないから、彼がこんな皆に迷惑をかけるのでしょう!?」
「そ、そんな……こ、コウちゃんは悪くないよ……」
「そうだ。京極君。悪いのは犯人だ。北村君は悪くない」
芽衣だけでなく二階堂にまで説教されてしまい、京極は黙ってしまう。
悔しそうに唇を噛みながら俺を見た。
「フンっ! どっちにしても、ワタクシには関係のないことですわ! わ、ワタクシはことが収まるまでベッドで寝ていますから!」
すると京極は扉を開けて出ていってしまった。
……こんな状況下でもここまで自己中になれる京極も、逆にすごい奴だと俺は思った。




