会話
窓からは月の光が差し込んできている。
俺はつい窓の外を強く見つめてしまう。
なんで俺達はこんな家に閉じ込められているんだか……
「……悲しいものよね」
と、そんな俺の隣で有栖川は呟いた。
「な、何が?」
「この家の外はいつも通りなのよ。いつもと違うのはこの家の中の私達だけ……悲しくならない?」
フッと俺に微笑みかける有栖川。
不覚にも暗闇で見えるその顔は妖艶に見えた。
「まぁ……俺にとってはこの家に監禁されている事実が未だに信じられないよ」
「そうね……なんでこんなことになっているのかしらね」
「それはこっちが聞きたいね。犯人のヤツ、俺の名前を知ってるってことは……やっぱり俺の知り合いってことだよな」
「ええ。心当たり、ない?」
鋭い視線で俺を見る有栖川。
「……ないな。お前も知っているとおり、俺が恨みを持っているやつなら、たくさんいるんだがな」
「そうよね。北村君。いじめられっ子だもんね」
嬉しそうに、小馬鹿にしたように、有栖川は俺を見る。
いじめられっ子。
そんな生易しい表現ではない。
俺は奴隷なのだ。
よく苛められているほうがオーバーに捉えすぎているだけだと思われガチだが、そうではない。
失神するまでプロレス業をかけられたり、プールの授業で溺れさせられるのはもはやいじめの領域を超えている。
しかも、その原因というのが、幼馴染がいるから。それだけ。
いじめは三年前。高校に入ったときからだった。俺と芽衣は仲が良すぎたのだ。
それがクラスの連中の癪に触ったらしく、そこから三年間、逆らえば芽衣に被害を及ぼす、という脅しの下、俺は苛められ続けている。
守るべき存在だった芽衣はそのことに気付いていない。
いつしかそんな芽衣を俺は避けるようになった。
そして、現在では俺は芽衣を憎んでいる。
芽衣さえいなければ。俺は――




