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ハーレム・ゲーム  作者: 松戸京
1日目
10/82

食事

 とりあえず、初日のその後は散々であった。


 結局、スピーカーでの放送の後は誰もろくに口を利こうともせず、ただ、大部屋においてあるテレビだけがやけにやかましく流れていた。


 流れている番組からどうやらここは日本国内ではあるらしい。


 俺、芽衣、そして、有栖川はすることがないのでひたすらテレビをぼぉっと眺めていた。


 京極はというと、彼女の部屋の扉を少し開けて覗いてみると、ベッドの上で不貞寝していた。


 二階堂はあくまで脱出口を捜しているようだった。


 窓の外から見える風景が暗くなるまでガサゴソと二階堂は家の中を歩きまわっているようだった。


 夜になってからの問題は、空腹だった。


「……お腹減ったな」


 ボソリと不満げに呟いた芽衣の一言がきっかけだった。


 俺と有栖川は自然と顔を見合す。


「そうね。何か食べましょうか」


「でも、有栖川。何かあるのか?」


「ああ。それなら……」


 有栖川はそのまま部屋を出て行った。


 俺と芽衣は迷ったが、その後ろについていくことにした。


 部屋から出た有栖川は、そのまま廊下を歩き、階段の手前の部屋の扉を開けた。


「あ」


 芽衣が小さく声を上げた。


 そこは、キッチンだった。


「ここ、台所。一応一週間間分の食事はできるようにしているみたい。親切な犯人さんだこと」


 一週間間監禁するばかりではなく、生活もできるようにしておく……


 一体なんのつもりでこんなことしているんだか。


 俺は頭をひねったが全くわからなかったのですぐにやめた。


「何か食べたいもの、ある?」


 有栖川が俺と芽衣に訊ねた。


 そんなことを言われても、この状況下で食べたいものなんて……


「私、オムライス!」


 が、芽衣は元気よく応えた。


 まぁ、芽衣は腹が減ったらソッチに神経が行くようなヤツだから、その点では気楽だよな。


 そんな芽衣を見て有栖川はニッコリと微笑む。


「わかったわ。じゃあ、オムライスね」


「で、できるのか?」


 俺はふと気になって有栖川に尋ねる。


「ええ。できるわよ。ほら、たまごもここにある。アナタ、オムライスは嫌い?」


「い、いや。別に……」


 むしろ好きだ。俺の好物。


 芽衣が嬉しそうに俺の方を見ているのも、自分の好物であり、俺の好物であるオムライスを注文してあげたという親切心から俺に微笑みかけているのだろう。


 しかし、まぁ、確かに親切な犯人ではある。


 しばらくすると、有栖川が料理を始める音が聞こえてきた。

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