目覚め
「……ん……あれ?」
目を覚ます。
……目を覚ますだって?
そもそも俺はいつから眠っていたのだろうか。
そして、どれくらい眠っていたのだろうか。
というか、なんで眠っていたのだろう。
様々な疑問が俺の頭を錯綜する。
目をゆっくりと開く。
光にまだ慣れない眼球が、拒絶反応を示すようにびくびくと反応する。
「……は?」
思わず言葉が漏れた。
見慣れない天井が、俺の頭上にあった。
俺は体を起こし、周囲を見回す。
そこは、誰かの家の一室のようだった。
豪華な装飾が施されたテーブルと椅子。壁には、よくわからないが高そうな絵が飾られている。
そして、俺はそんな部屋の大きなベッドで横になっていた。
「……ここは?」
フラフラとする頭をなんとか押さえながら俺は立ちあがった。
なんとか記憶を反芻しようと目を瞑る。
……確か俺は下校中だったはずだ。
いつものようにどうしようもない学生生活に絶望しながら、自分の存在意義に吐き気さえ催しながら家へと道を歩いていたはずなのだ。
「なのに……どうして……」
一体どういう経緯でこんな豪邸にいつのまにかやってきていたのか。
いや、俺自身がここまでやってきた記憶なんてまったくない。
そうなると、考えられるのは一つ。
ここまで誰かに連れてこられたのだ。
俺の記憶がないのも、俺を連れて来たヤツに半ば強制的にここまで連れてこられたというのならば納得がいく。
しかし、そんなことは犯罪であり、事件である。
俺は急に自分の置かれた状況の異常さに気付き慌てた。
「……とりあえず、この家を出るしかないか……」
俺は部屋を見回した。
幸い、部屋には外に通じるらしきドアがあった。
まさかドアのない部屋に監禁されたのではないかという不安が一瞬過ったが、俺はベッドから起き上がり、そのままドアのノブに手をかける。
ドアはそのまま開いた。
俺はそのまま部屋の外に出た。