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魔女ぷりっ!?  作者: usa
7/30

7jewelry


翌日から、可憐の生活は一変した。


朝目覚めると、可憐の部屋はがらりと様子が変わっていた。


「な…何よこれぇっ!」

「…ふにゅ?」


寝ぼけた様子のマリンの胸ぐらを掴み、可憐は力の限り揺さぶった。


「ふにゅじゃないのよ!何私の部屋、勝手に改造してんのよ!」


可憐は泣きそうな気分で、部屋を見渡した。


今まで白やピンクなどで女の子らしくまとめていた家具が、全て水色に変化している。


そのせいで部屋がいつもよりも暗く見える。


おまけに、ベッドの周りには花がひきつめられていた。


マリンはひとつ欠伸をすると、しまりのない表情で笑った。


「あー、これぇ?すごいでしょぉ」

「すごかないっ!すぐに戻してよ」


可憐が怒鳴ると、マリンは不満げに唇を尖らせた。


「えぇ~?マリン、これ作るのに相当魔力使ったんだよ?今さらそれを無駄にさせる気ぃ?」

「そういう問題じゃないの!ここは私の部屋なんだから」

「でも、マリンて水色に囲まれてないと、力弱っちゃうし…」


そういわれると、可憐も一瞬言葉に詰まる。


「な、なんでよ?」

「水色はね、マリンの力の源なの。アクアマリンと同じで。だから、いつでも水色のものが近くにないと、すぐに魔力が消えちゃうわけ。もう少し年長にもなると、そういうことはなくなるんだけど…」


説明を受けても、可憐のいらだちはちっともおさまらない。


「だからって、ここまでやらなくてもいいでしょ。せめてひとつかふたつ。ね?」


なぜこちらが低姿勢にならなくてはいけないんだ。


可憐はチラッと思ったが、今はとりあえず頭を下げた。


しかし、マリンはすぐに頷いた。


「いいよ。可憐のうちにはこれからお世話になるんだし。マリンも我慢する」


お世話。


それを聞くと、可憐は不安になった。


「そういえば私、ゆうべもお母さんたちに何も話してないよ。突然、家に女の子が押しかけてくるなんて、不自然に思うんじゃない?」


マリンはにっこり笑った。


「ご安心を。これでもマリン、魔界のお姫さまだよ?」


可憐が頭にはてなマークをたくさん浮かべていると、マリンはあっという間に寝まきからワンピースへと着替えた。


「さ、早くご飯食べよ!マリンお腹ぺこぺこ」


戸惑う可憐の手を取ると、マリンは元気よくドアを開け、リビングへと走った。


リビングに入ると、トーストやコーヒーのいい香りがしてきた。


テーブルにはすでに、可憐のお父さんが座って、ニュースを見ていた。


可憐がどう説明しようか考えているうちに、マリンは一人でどんどん進んでいく。


「ちょ、ちょっと!」

「おはよう。おじさま、おばさま」


マリンは可憐のお父さんと、キッチンに立つお母さんに向かって笑顔でいった。


「今日もいいお天気ですね。ご飯も美味しそう」


可憐はさーっと血の気が引いた。


遅かった。


ああ、お父さんもお母さんも、大混乱だよ…。


しかし、両親の反応は可憐の予想とは全く異なるものだった。


「おはよう、マリンちゃん。今朝はちょっと凝ってみたのよ。気に入ってもらえるといいんだけど」

「あら。おばさまの料理は世界一よ!」

「そういってもらえるとねぇ。ほら、可憐!あんたもさっさと食べちゃいなさい」


可憐がポカンとしていると、今度はお父さんが口を開いた。


「朝から元気だな、マリンは。可憐も少しは見習いなさい。朝はいつもブスッとして…」

「おじさま、可憐はちょっと寝起きが悪いだけよ。いつも優しいんだから、ちょうどいいわ」

「そうか?それもそうだな!」


マリンはにこにこと笑うと、お父さんの斜め前の椅子に座った。


可憐も慌てて隣に座る。


お母さんが上機嫌で朝食を運んできた。


メニューは、トーストとスクランブルエッグ、ソーセージにコーヒー。


凝ったという割には、いつもと何ら変わりない。


可憐が不思議に思っていると、マリンが隣で歓声をあげた。


「わぁ、おばさま!私これ大好きっ」

「本当?作りがいがあるわぁ」


可憐はそっと、マリンの皿を見やった。


そこにあるものを見た瞬間、可憐の顔が引きつった。


「ひっ…」


マリンはきょとんとしてこちらを見た。


「どうかした?可憐」

「ど、どうって…それはこっちのセリフよ!なんなのよ、それ!」


可憐は皿を見ないようにしながら、それを指差した。


マリンは皿を眺めた。


「マリンの朝ごはんだけど…?」

「何食べてんのよっ」

「?カエルのステーキ」


ほら、というように、マリンは皿をずいっと可憐に近付けてきた。


「ぎゃあぁぁあっ!何考えてんのよ、あんた!」

「えー?普通だけど」


二人が騒いでいると、お母さんが顔をしかめてやってきた。


「うるさいわよ!可憐もそれくらいでキャーキャーいわないの」

「お、お母さん、なんで何もいわないわけ?」

「はあ?」

「急に見ず知らずの女の子が家にきてるっていうのに…」


お母さんは可憐の顔をまじまじと見た。


「あなた、大丈夫?」

「えっ?」

「見ず知らずの女の子って…。親戚のマリンちゃんじゃない。一週間前から家に泊まりにきてる」


これにはなんの言葉も出ない。


可憐は口を開けたまま、マリンの方を見た。


マリンは茶色くなったカエルをナイフで切りながら、ウインクしてきた。


魔法に慣れるにはまだ大分時間がかかりそうだ。


可憐はひそかにため息をついた。



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