6jewelry
可憐は目を覚ました。
しかし、すぐに閉じてしまった。
今日はなんだか、変な夢を見ていた。
朝は遅刻しそうになって、近道を通っていたら、いきなり変な女の子に会うし、いきなり学校まで瞬間移動しちゃうし、おまけに学校にまで女の子が現れて、理香子と体が入れ換わって、挙句の果てに「私は魔女なの」だよ?
ありえないし。
可憐は笑って、寝返りを打った。
「むにゃっ?」
…ん?
今、変な声が聞こえなかった?
可憐は恐る恐る、目を開いた。
その途端、悲鳴をあげた。
「あ、あ、あ、あんた…」
「…むにゅ?」
可憐は周りを見た。
間違いなく、可憐の部屋だ。
可憐は枕を握ると…隣で眠っていたマリンに向かって振りおろした。
しかし、マリンにあたる寸前、見えない壁が枕を押し戻した。
「きゃっ?」
可憐は驚いて枕から手を離した。
「びっくりした?」
マリンは起き上がると、伸びをした。
「た、狸寝入り…」
「失礼ね!可憐が起きる前はちゃーんと眠ってたよ」
それもなんだかおかしいような気もするが、可憐はとにかくマリンと距離を取った。
「…何してるの?」
「わ、私は怪しい人間と親しくしようと思うほど、馬鹿じゃないのよ!」
マリンは悲しそうな目をした。
「そりゃマリンは、魔女だけど…」
「そうやっていってる時点で、あんたは十分に怪しいんだってば!」
可憐が怒鳴ると、マリンは目を丸くした。
「マリン、別に怪しくないもん」
「信用できない」
「…じゃ、証拠を見せよっか?」
「何の?」
可憐が聞き返すと、マリンはにんまりした。
ワンピースのポケットから、何やら取り出した。
水色の小さな石は、部屋に差し込む光でキラキラ輝いていた。
「これ、さっきと同じ…」
可憐は目を近づけた。
「アクアマリン。マリンの守護石」
「守護石…?」
マリンは石を軽くころがした。
「マリンはね、魔界のお姫様なの。そんで、昔からの習わしで、次期王位継承者は、一五歳になったら人間の世界にいって、ある試練を成功させなきゃいけないわけ」
可憐はごくっと唾を呑んだ。
「その試練っていうのが、人間界で初めて会った人間の願いを、七つ叶えろっていうものなの。それも、この石を使ってね」
「どうやって?」
「それは…」
マリンは腕を組んだ。
「…よくわかんない」
可憐はガクッとした。
「それじゃ、今までどうしてたの…?」
「普通に魔法を使う時は、守護石なんて使わないもん。ただ杖を振ればいいだけ。例えば…」
マリンは懐から細長い棒を取り出した。
そしてそれを、宙に向かってくるくるとまわした。
すると、渦の中心から何かが出てきた。
可憐はポカンと口を開けてしまった。
やがてポンと落ちてきたのは、水色のワンピースだ。
それも、マリンのような派手なものではなく、至って普通の、落ち着いたものだ。
「よかった。人間界でこれだと、なんか目立つみたいでさ。さ、着替えよ」
「え?ちょっと…」
可憐は慌ててうしろを向こうとしたが、そんな必要もなかった。
マリンはさっと杖を振り、魔女の服から水色のワンピースへと着替えた。
「うん、意外と似合う!さっすがマリン」
マリンは満足げに鏡の前でターンした。
「どう?これでもまだマリンがおかしいっていえる?」
鏡越しに、マリンは可憐に笑いかけた。
可憐は驚きのあまり、声が出ない。
マリンもわかったのか、振り返ると、手を差し出してきた。
「とりあえず、これからよろしくね、可憐」
「よ…よろしく…」
可憐は戸惑いつつ、マリンの手を握った。
そしてここから、人間と魔女の共同生活が始まったのだった。
久しぶりの更新♪
最近リアルなマリン像が頭に浮かぶww