4jewelry
「その願い、叶えてあげよっか」
今の声、どっから聞こえてきた?
可憐は慌てて周りを見渡した。
だが、窓際の一番後ろにいた可憐でも、誰かがそういった様子は見えない。
「な、何今の…」
空耳?
でもやけに鮮明に…。
「そりゃそーでしょ。ここからいってんだもん」
「わぁあああっ!?」
可憐は驚いて叫び声をあげた。
クラスメイトが何事かとこっちを見たが、それどころじゃない。
「はぁ~い」
「な、ななななんで…」
マリンは楽しげに手を振っている。
問題はそこじゃない。
場所だ。
窓の外。
しかもここは三階!
「おっ…おばおばおば…」
「マリンお化けじゃないよ」
マリンは目をパチパチさせた。
可憐は咄嗟にたちあがると、衝動的に教室を飛び出した。
女子トイレに直行し、流しで顔を洗った。
「今のは夢よ!そうよ、当たり前でしょうが。なんで人が浮くのよ!」
小声で呟くと、真偽を確かめるべく、教室へダッシュ。
教室へ戻ると、理香子が叫んだ。
「可憐!次の理科、生物室だって!早くいかなきゃ…」
「ごめん!先にいってて」
可憐はそういうと、窓に駆け寄った。
いた!
マリンは依然として浮いていた。
可憐はマリンが乗っていたものを見て、腰を抜かしそうになった。
「あっ、やっと来た~」
マリンはそういうと、ふわふわと更に上昇した。
可憐はめまいがしてきた。
だって…。
人が箒にのって、空を飛んでるんだもん!
それも、当然のことみたいに!
マリンは教室に人がいないことを確認してから、窓からそっと中へ入った。
「あ~疲れた!長い飛行って、体力消耗するんだよねぇ」
そういって、マリンは跨っていた箒から飛び降りた。
「あ…あんた、何者!?」
可憐はようやく声を出した。
マリンはきょとんとした。
「マリンはマリンだけど」
「そうじゃない!いきなり空から降ってきたり、あそこから学校まで瞬間移動させるし、おまけに箒にのって飛んでるし!普通じゃないでしょ!」
可憐が大声で怒鳴ると、マリンは頬をポリポリとかいた。
「といわれてもなぁ…。どう説明したらいいか…」
そういってから、マリンはポンと手を叩いた。
「そっか!説明なんていらないんだ」
「はあ!?」
「つまり、百聞は一見にしかずってこと」
混乱する可憐をよそに、マリンは服から何かを取り出した。
「ねえ。可憐は、あの理香子ってこに憧れてるんでしょ?」
「え?」
マリンはにやりとした。
「そして、あの子みたいになりたいっていった。そうだよね?」
「う、うん…」
可憐は戸惑いつつ頷いた。
「じゃあ、ならせてあげる」
マリンは手を開いた。
そこには、小さな水色の石が一粒あった。
「我より汝に命ずる。この者の願いを叶えよ」
すると、その石は眩しく光りはじめた。
「今朝と一緒…!」
可憐は驚いてそれを見たが、もう目を開けていられなかった。
瞼をおろし、光が消えるのを待った。
「…子!…香子!」
「ん…」
声が聞こえる。
誰?
可憐はゆっくり目を開いた。
「理香子!起きなってほら」
「理香子…?」
可憐は声を出して驚いた。
自分の声じゃない!
「どうしたの、理香子?」
「具合でも悪いの?」
クラスメイトが顔を覗きこんでくる。
可憐は、「私は理香子じゃない!」といおうとした。
けれども、異変に気付いた。
恐る恐る自分を見下ろす。
手が震えだした。
ブレザーの右ポケットに手をやる。
いつも鏡が入っているはずだ。
そこには確かに、理香子の鏡が入っていた。
それを開くと、そっと自分の顔を映した。
「きゃあっ!」
思わず悲鳴をあげ、鏡を落とした。
今度は手だけじゃない。
体全体が震えいていた。
今の可憐は可憐じゃない。
理香子になっていた。
魔法の呪文って、考えるの難しい!
考えに考えた結果、ああなりました(^_^;)
ローリングさんをはじめ、魔法系作家さんたちを尊敬(笑)