22jewelry
足に力が入らない。
まるでゴムのようだった。
ただ進むだけに、事務的に動かし続ける。
可憐はにぎやかな教室へと、一歩踏み入れた。
すぐさま、自分の前の席を確認する。
途端、脱力した。
可憐の思いを、マリンが声に出した。
「南君、いないね…」
「…うん」
無理もない。
母親が事故死したのだ。
当分の間はこれなくて当然だろう。
可憐はさっさと自席に行くと、いつもならしない、宿題をはじめた。
いつも悠也は、そうしていた。
宿題がない日は本を読んだり、ただぼうっと窓の外を眺めていたり。
そんな様子を、うしろからいつも見つめていた。
みんなは悠也が冷たくて愛想のない人だという。
でも私は違う。
彼は優しくて、勇気がある人。
ただちょっぴり、感情表現が苦手なだけ。
そんな彼を、どうして嫌うことができただろう。
その時、ホームルームの始まりを告げるチャイムが鳴りだした。
同時に、担任が沈痛な面持ちで入ってくる。
クラスメイトも暗い気分が蘇ったらしく、ざわめきが消えた。
担任が教卓に出席簿をおいた。
「昨日はお疲れさん…。平日にもかかわらず、大半の生徒が南のために来てくれた。南もきっと、喜んでくれてる。南のお母さんもな」
可憐は顔を伏せた。
担任の声がまた告げる。
「南はもともと母子家庭で、これでその…保護者の方がいなくなってしまった。そこで南は昨日付けで、転校をした」
静けさが破られ、再びクラスが騒がしくなった。
可憐は顔が硬直するのを感じた。
転校?まさか…。
マリンも隣で、おろおろとしている。
担任は話を続けようと、大声でいった。
「南は今日これから、親戚の方が住んでいる神奈川に引っ越す予定だそうだ。時間の関係上、挨拶はできない。けどこれも南のためと思って、どうかみんな、許してやってくれよな。…以上!」
起立、礼。
学級委員の言葉が終わると同時に、教室内がわっと賑やかになった。
マリンが泣き出しそうな顔で可憐を見た。
「なんで?可憐にもいわないで、こんな…」
「そりゃいわないでしょ。別に私、南君とそこまで親しかったわけじゃないし…」
答えながらも、可憐も喪失感でいっぱいだった。
ほんのちょっとでも彼に近付いた気でいた自分は愚かだった。
彼にとって私は、ただのクラスメイトでしかない。
不意に、どうしようもない寂しさが可憐の胸を襲った。
昨日散々流したはずのものが、頬を幾度も伝っていく。
小さく嗚咽をあげながら、可憐はそれを拭った。
マリンは何もいわず、可憐の背中を撫でてくれた。
それに甘えて、可憐はマリンの制服を掴む。
母親のような手つきで可憐をあやしながら、マリンは呟いた。
「ねえ、可憐」
「…何?」
「ひとつだけあるよ。南君を元気づける方法」
可憐は顔をあげた。
「何、それ?何なの!?」
マリンは何もいわず、可憐の背中から手を離した。
そしてポケットから、もうお馴染となった石を取り出す。
「6つ目の願い」
ぽうっと水色の光が放たれる。
可憐は目をつぶった。
「どうかお願い。可憐に、素直になる勇気を与えてください――…!」
クライマックス!?
真相は…次回で(笑)




