I)スタメンオーダー
練習試合が決まった次の日。グランドは活気ついていた。
久々の試合が決まったことで昂一以外の全員が張り切っている。
徹
『集合。』
その一声で部員が徹の元へ集まる。
徹
『今から、今度の土曜日の練習試合のスタメンを発表する。で、多分だがそのオーダーで夏の予選も戦うと思う。だから、このアトの練習からその守備を中心にやってくれ。』
部員
『はい。』
全員の返事。
徹
『1番、キャッチャー、佐藤。』
その言葉に昂一が手を挙げる。
昂一
『何で捕手なんですか?』
徹
『スマン。本来、オレが守る予定なんだが怪我で捕手は無理なんだ。夏の大会までには治る予定だからそれまでは頼む。他に守れるヤツがいないんだ。』
と、軽く謝る。
昂一
『…………わかりました。』
渋々返事をする昂一だった。
徹
『ありがとう。じゃぁ、次。2番、セカンド、山村。』
悠一
『はい。』
徹
『3番、ピッチャー、松井。』
翔太
『え、ピッチャーですか……。オレ、ショートがイイ。』
昂一に続いて1年生が文句を言う。
大輔
『文句言うな。ウチは投手がいないからやれって。』
徹
『翔太、悪いな。そう言うことなんだ。』
翔太
『今回だけですよ。』
こちらも渋々承諾した。
徹
『4番ファースト、波田。で、5番、ライト、中村。』
貴裕
『はい。』
3人いる1年の中で文句を言わずに素直に返事をする。
徹
『6番、センター、浅川。』
慎太郎
『うぃっス。』
徹
『7番、サード、福原。』
純平
『翔太達の加入で下位打線になっちまったか。』
苦笑いをしながら言う。
徹
『3番打ってたからな。ある意味この少人数校で純平の7番は脅威があるから頼むぞ。』
純平
『分かってますよ。』
グーサインをし、答える。
徹
『8番、レフト、山野。』
紘
『はい。』
元気に答える。
徹
『最後に、9番、ショート、仲。』
翔太
『オレの代わりが大輔?』
大輔の返事よりも先に翔太が反論をする。
大輔
『翔太。今回は仕方ないだろう。それにオレは去年もショート守ってたから問題ないぞ。』
翔太
『オレの方が上だけどな。』
大輔
『お前は投手に専念しろ。それに、心配ならオレの所に打たせないピッチングをしろ。』
その言葉に翔太の中にある、あるスイッチが入った。
翔太
『分かった。お前のところに絶対に打たせない投球してやるよ。』
徹
『バカな事言ってないで、今から守備練習するぞ。』
キャプテンの言葉で、翔太と大輔以外は練習の準備を始めた。
翔太と大輔の二人はしばらく睨み合っていた。
そして、金曜日の夜。部員達が続々と集合を始めていた。
しかし、集合時間に毎回毎回遅れるヤツがこのチームには二人もおり、今回もその内の一人が遅れていた。
悠一
『今回は紘か……。』
純平
『徹さん、今回はキレるかな。』
笑いながら言う。
慎太郎
『大輔はいるのか?』
悠一
『大輔はあそこで、翔太とまだあの時の事で言い合ってるぞ。』
呆れている。
慎太郎
『まだやってたのか……。まぁ、今回は紘だけだから港に行く途中で呼びに行けるから大丈夫だろう。』
と、言っていると、監督と共に徹が校舎から出てきた。
徹
『紘と大輔はいるか?』
と、点呼をしているハズなのに二人しか名前を呼ばない。
純平
『紘がまだです。』
徹
『またか……。』
怒りを通り越して呆れる徹。
徹
『監督、行く途中で家によってもいいですか?』
監督
『……うん。』
監督も少し呆れている。
この監督は津田と言う名の日本史担当の先生で野球に全く詳しくなく采配などはキャプテンの徹が全てしている。
ちなみにこの高校の野球部の監督として3年目になる。
そして、集合している全員が荷物を持って出発しようとした時、紘が集合時間を間違えて学校に来た。
こうして部員9人と監督の津田の10人は広島行きのフェリーに乗る為に港に向かった。