A)出会い
2006年夏、阪神甲子園球場。
実況
『第88回全国高等学校野球選手権大会、決勝戦も9回表まで進みました。史上2校目の夏3連覇、史上初の5季連続優勝までアウトカウント、アト3つ。さらに、先発の佐藤昂一は3年連続決勝戦での完全試合の記録もかかっています。』
かなり興奮気味に伝えている。
アナウンス
『一番星学園。選手の交代をお知らせします。ピッチャー、佐藤クンに代わり杉下クン。佐藤クンはセンター。センターの中嶋クンはショート。ショートの松井クンはレフト。レフトの小野クンはファースト。ファーストの中村クンはライト。以上に代わります。』
甲子園場内に響きわたる。
実況
『なんと、佐藤はマウンドを降りました。代わりにマウンドに登ったのは一年生杉下。甲子園ではここまで、5試合すべて先発で投げて39イニング8失点。立派な成績を残しています……………。』
時はさかのぼること少し前、2004年4月……。場所は瀬戸内海に浮かぶ愛媛県のとある島の学校………。
キーコーンカーコーン………。チャイムが鳴る。入学式を終え、新入生を含めた全校生徒達が体育館から教室に移動している。っと、言ってもそんなに多くない……。
定員160名だったが、実際に入学したのは半分にも満たない63名が今年入学した。ちなみに、3年生が16名、2年生が19名の全校生徒98名。前年度まで、公立高校だったが、今の2年生が卒業と同時に廃校が決まっており、本来なら今年の新入生はいないはずだった。しかし、日本でも1、2を争う企業が学校を買収したいと言ってきて、話は急展開。今年度から、私立高校として生まれ変わった。もちろん、学校名も。
昂一
『ここなら、オレの事知ってるヤツもいないだろうし、これで、野球も辞められる。二度と野球はしない。』
このストーリーに反する言葉を述べているのは、一応、物語りの主人公、佐藤 昂一。15歳。いろいろ訳ありで、この学校に入学した。「おおきく振りかぶって」の主人公、三橋 廉を彷彿させるようなキャラ台詞ですが間逆のタイプだと思っててください。
担任の教師
『今日から君たちの担任になった、津田 健太だ。担当科目は国語。よろしく。』
教師の自己紹介が終わると、次は生徒達が順番に自己紹介を始めた。
昂一
『佐藤昂一です。親から離れるために松山市内からこの学校に決めて入学しました。よろしく。』
他の生徒は中学時代の話をしたり、どの部活動に入部するつもりなど、話しているのに、淡々と話終えた。
ちなみに、松山市内とは、愛媛県の県庁所在地の松山市のことです。
貴裕
『中村 貴裕です。中学時代は野球してました。この学校に入学を決めたのは、親の仕事の都合で、この島に来ることが決まっていたのが、きっかけです。引っ越す前までは岡山県の瀬戸内市にいました。あと、小2までは今治に住んでいて、祖父の家も今治なので、愛媛には盆と正月に毎年来てました。よろしく。』
今治は、愛媛県今治市のことです。
翔太
『えっと、松井 翔太って、言います。翔太って、呼んで。この島の人間なんで、地方から来た人は気軽に質問してね。あんま、デカくない島だから、案内する場所も少ないけど……。これから、よろしくね。』
こんな感じで、自己紹介は終了した。