第五話 魔法の都
「ど、どういうことだよ!」
ニャンピンガは慌てふためいた。
「オレを保護するって話じゃなかったのか!」
ネモは歩きながら説明する。
「そうだよ。私の仕事は君を保護して、保護施設まで届けること。その許可をもらうために、王のところへ行くの」
ニャンピンガはネモの後ろを歩きながら考える。
(そうなのか……)
「団員の判断だけじゃ駄目なのか?」
「うん。どれだけ位の高い団員でも、王の許しが必要なの。だって、王を狙う魔王軍の敵が紛れ込んでるかもしれないでしょ?だから王自らが見極めるの」
「へぇー。でも王様自らが見極めるってことは、王様と直接会うってことだろ?その時に殺されねぇの?」
ニャンピンガは腕を組む。
「そこは心配いらないよ。王には王専属の護衛が常にいるからね。彼らも魔法騎士だけど、私達みたいに世界を守るんじゃなくて、王だけを守る魔法騎士なんだよ」
「へぇー」
(つまり、この世界は王が全部握ってるってことか……)
―――
ニャンピンガは城へ向かう途中、島の人々の様子を観察していた。
仲睦まじい親子の姿が目に入る。
「ママ!今日のご飯オムレツが食べたい!」
「いいわね。今日はオムレツにしましょ」
「やったー!」
「良かったな」
父親が子の頭を撫でる。
「明日は箒に乗りたい!」
「よし、パパが頼んでおくよ」
「えへへ……楽しみだなぁ」
子供の目は輝いていた。
「……」
ニャンピンガは胸を押さえた。
虚しさが込み上げる。
(父さん……母さん……じーちゃん……皆……)
ネモはその気配を背中越しに感じていた。
―――
「着いたよ」
城の門の前に到着した。
「ここが……城……」
(デカいな……)
ニャンピンガは圧倒されて見上げる。
「お城に入るには、この門を通らないといけないんだけどね。そのためには証明証的なものが必要で……ちょっと取ってくるから、ここで待ってて!」
「ああ……」
ネモは走っていった。
(証明証“的な”って何だよ……)
―――
数分後、ネモが戻ってきた。
「ごめんね、お待たせ。行こっか」
「ああ……」
鎧を纏った門番が声をかける。
「ここを通るには、王直筆の託宣が必要だ」
(託宣……?ああ、そういうことか……コイツ、託宣が分からなかったから“許可証的なもの”って言ったんだな……)
ニャンピンガは心の中でネモを小馬鹿にした。
だが――彼は気づいていなかった。
“王直筆”がどれほどの権威を持つかを。
「はい、こちらです」
ネモは託宣を示す。
門番は魔法で確認した。
「確かに本物だ……通れ」
魔法で門が開く。
「失礼します」
「すげぇ……」
ニャンピンガは驚きながら門を通り、長い階段を上がる。
「はぁ……はぁ……階段……長すぎだろ……」
「分かる。私も最初は驚いたよ」
ネモは微笑む。
城の扉にも護衛の魔法騎士が立っており、ネモは託宣を示した。
同じように確認され、重い扉が魔法で開く。
城内は広く、豪華で、眩しいほどだった。
「……す、すげぇ……」
高級品が並び、ニャンピンガは圧倒される。
「こっちだよ」
ネモが案内する。
城内の護衛たちが鋭い視線を向けてくる。
「すげぇな。城の中にも護衛がいるのか?」
「うん。そうだよ。あと少しで王のいる玉座の扉だよ。そこでも託宣を見せる必要があるの」
「え……まだその託宣の出番あんの?」
「うん。今日は魔王と団長が激突して島が一つ破壊されたっていう異常事態で緊急任務だったから、橋が降りてたけど……普段はお城に渡る橋も上がってるんだ。その時にも必要になるんだよ」
「な、なるほど……な……」
(どんだけ王様は慎重なんだよ……どんな顔してんだか……まあ、これから見るけど)
―――
ネモは玉座の扉を守る護衛に託宣を示した。
重厚な扉がゆっくりと開いていく。
護衛が声を張る。
「王よ……来訪でございます。魔法騎士団員の報告とのことです」
(ついに……王様に……!)
ニャンピンガは息を呑んだ。
重い開閉音が城内に響き渡る。




