第四話 新たな魔法騎士との出会い
燃え上がる炎の中、リーベは現れた。
「魔王……」
リーベは目の前の男を睨みつける。
(魔王……!?アイツが……!?)
魔王は低く言った。
「現れたか、リーベ・フライハイト」
リーベは剣を握りしめる。
「希少石は渡さない」
「ははっ……!あれは我の物だ。貴様が命じるな」
魔王は笑い、冷徹に続けた。
「貴様のせいで我の計画が三年遅れたのだ。ここで死んで償ってもらおう……」
「魔王……今日こそお前を倒す……!」
魔王は何もない空間から杖を取り出し、詠唱する。
「『ザラーム・アッ=ダマール』」
リーベもまた、背負っていた黄金の剣を抜いた。
その剣に嵌められた七色の宝石が、詠唱と同時に輝く。
「『リヒト・デア・ホフヌング』っ!!!」
闇と光の魔法が衝突し、爆風が村を飲み込む。
ニャンピンガはその圧力に耐えきれず、意識を手放した。
―――
「……きて……!」
(声が聞こえる……)
「……起きて……!」
「ハッ!!!」
(ここは……?)
目を開けると、そこには広大な海が広がっていた。
(は……?どういうことだ……?)
「だ、大丈夫……?」
少女の声がした。
「アンタ誰……?」
声の方を見ると、焦げ茶色のチェスナットブラウンの髪をした少女が立っていた。
リーベと同じ魔法騎士の装いだが、髪が顔を隠していて口元しか見えない。
「えっ、私!?えっと、私はネモ・フィクティオ。魔法騎士団の団員だよ」
(魔法騎士団の団員……)
ニャンピンガは痛む身体を起こし、尋ねた。
「なあ、ここはどこだ?オレは島にいたはずじゃ……」
ニャンピンガが寝そべっていたのは、人五人分ほどの広さの地面。
水面もすぐ近くだ。
ネモは言った。
「うん……ここは君が暮らしていた島だよ。魔王と団長の魔法のぶつかり合いで……島が崩壊しちゃったんだと思う……」
(マジかよ……)
「魔王はどうなったんだよ……?」
(倒したんだよな……?)
ニャンピンガは震える声で問う。
ネモは俯きながら答えた。
「魔王は……倒せてない。一時的に追いやっただけだって……団長が言ってた……」
「その団長は?どこにいんの?」
「団長は一度、王に命じられて本部に戻ったよ。後始末は私達下っ端の団員に任されたの」
「後始末って……」
ニャンピンガの声が震える。
「父さんや母さん……!じーちゃんや村の皆はどうなったんだよ!!!」
叫ぶニャンピンガに、ネモは苦しそうに言った。
「分からない……私達が来た時にはもう誰も……生存者は君だけ……」
「……っ」
ニャンピンガは声を発せなかった。
いや、発せなかったのだ。
ネモは慌てて言う。
「私達の仕事は生存者の保護でもあるから!来て!」
ネモは少し離れた場所にいる魔法騎士団員を呼んだ。
団員は箒に乗って飛んでくる。
「どうした?」
「生存者の彼を保護するために、ヌクレウス島まで転移してもらえませんか?」
「ああ、分かった……というかお前、見ない顔だな。行く時お前いたか?」
「新人のネモ・フィクティオです。入団したばかりとはいえ、後輩の顔と名前は覚えてほしいものですよ」
ネモはじとっと睨む。
(顔ほぼ見えねぇじゃん……)
ニャンピンガは思った。
「ああ……すまん……」
先輩団員は慌てる。
「じゃあ転移させるぞ」
「はい、お願いします」
空間が揺れ、ニャンピンガは思わず目を瞑った。
「着いたよ」
声に反応して目を開ける。
一瞬だった。
ニャンピンガの目に飛び込んできたのは、見たこともない光景だった。
「……!!!」
箒で空を飛ぶ人々。
屋台では魔法で料理をする店主。
子供達は走り回り、魔導士に荷物を運んでもらう人もいる。
「す、すげぇ……」
(これが……魔法が使える者と使えない者が共存する世界……)
そんなニャンピンガを横目に、ネモは言った。
「さ、行こう」
「どこにだ?」
「あそこだよ」
ネモはヌクレウス島の上部にそびえる巨大な城を指した。
「はぁ……!?あのでっかい城!?」
「うん。お城の敷地にはエクエス・マギカエの本拠地もあるよ。今から行くのは本拠地じゃなくて、お城の方。我が王に会いに行くんだよ」
(え……)
「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
ニャンピンガの叫びが島中に響き渡った。




