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魔女戦記  作者: 好きな言葉はタナボタ
第一章

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第8話 他の者の同行は許さない

タマムシ・ズシコを除くソ連合の魔女武将たちは1つの幕舎に集まっていた。 甲冑を脱ぎ去り、鎧下(よろいした)姿(すがた)である。


この戦でソ連合の魔女武将が4人戦死し、今では6人。 寂しくなった幕舎の中で、フジワラノ・ハズキら5人の魔女武将は今しがた死傷者の集計を聞き終えた。


ノシメハナ郡国の魔女王シドウ・サヤカが怒りをぶちまける。


「兵士の半数が死亡だと! こんなくだらない(いくさ)で!」


僻地(へきち)にあるノシメハナ郡国は外部との往来が乏しく、募兵に応じるのはノシメハナ郡国民ばかり。 兵士の死イコール国民の死だから、サヤカの怒りはとりわけ激しい。


アイネズ女王国の魔女王ナラズヤ・キョウコが、イナギリ・クルチアに向き直る。


「我々は多くの兵を失い、ディアマンテの勢力拡大に貢献したわけです。 勢いづいたディアマンテは今後、いっそう激しく我らから搾取するでしょう。 今回、我々は自分で自分の首を締めたようなもの。 やはり、あのときセガワに与力するべきだったのでは?」


クルチアは首を横に振る。


「勝ち目は無かったわ。 ソ軍とセガワ軍の合計で1万5千。 ディアマンテは2万だもの」


「ハニーゴールド殿とイナギリ殿にも(くつがえ)せない戦力差だったと?」


「ディアマンテが今回連れて来た武将はジャオ殿を初め実力者ばかり。 私たちが寝返る可能性も視野に入れていたんでしょう」


黙りこくっていたハズキが口を開く。


「私には... 今回の戦がディアマンテの桎梏(しっこく)を逃れる最後のチャンスだったとしか思えません。 セガワが滅亡した今、ディアマンテの属国は我らソ連合だけ―」


クルチアは揺らがない。


「それでも、この戦で寝返るのは無謀でした」


「では、いつ私たちはディアマンテを打ち倒せるのです? ディアマンテは搾取により属国を衰えさせては搾取を強めます。 そうやってセガワは ―タマキ女王国も― 離反へと追い詰められました。 私たちも同じ末路を辿るのは明らか。 イナギリ殿は、()して滅亡を待てと言うのでしょうか?」


「とにかく今は耐えることです。 (いくさ)と同じです。 先が見えず辛い時が続いても、いつか必ず勝機は来ます。 捨て鉢(すてばち)な行動を取ってはなりません」


歴戦の勇将イナギリ・クルチアは辛抱の大切さを良く分かっていた。 いつか必ず転機が訪れることも。


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


幕舎に衛兵が入ってきて告げる。


「フジワラ様、ディアマンテ様の使者が参っております」


幕舎に招き入れられた使者は、ハズキたちに伝えた。 ナタリー・ディアマンテがハズキとの面談を求めていると。 支配国の魔女王からの呼び出しであり、ハズキに断る選択肢はない。


「承知しました。 すぐに参ります」


クルチアが申し出る。


「フジワラノ殿、私も同行します」


丸い頬が緊張に強張っている。 今回の戦でソ連合は、ディアマンテ女王国の目から見て2つの問題を起こした。 ハズキが寝返ろうとした。 ガブリエラがナタリー・ディアマンテの意思に(そむ)きセガワを斬り殺した。 ナタリーがハズキに新たな要求を突き付けるのに十分な材料だ。 腹黒で計算高いナタリーを相手に、お人好しなハズキでは太刀打ちできない。 ハズキを1人で行かせると、重大な要求をそれと知らず呑まされる。 武将交換制度のときが良い例だ。


しかし、呼び出しの使者がクルチアの同行を拒む。


「申し訳ございませんが、ディアマンテ様は他の方の同行を許さぬようにとの仰せです」


「っ!」 あの女狐! 扱いやすいハズキを1人にして料理するつもりね!


クルチアは切歯扼腕せっしやくわんするが、支配国の君主の意向には逆らえない。 使者に連れられテントを出ていくハズキの背中を睨みつけるのみ。


(ハズキ、お願いだからバカな約束をしてこないで)

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