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魔女戦記  作者: 好きな言葉はタナボタ


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第4話 これで義姉妹だなんて、笑っちゃう

ソ連合軍とセガワ軍の距離が近づく。 軍勢のサイズが明らかに違う。 兵力に大きな差がある。 セガワ1万に対し、ソ連合は5千。 ソ連合軍の後ろにディアマンテ軍2万が控えるが、ソ連合軍がこの(いくさ)で大きな被害を強いられるのは間違いない。


(みんな無事に生き残りますように)


ハズキは世界に祈りを捧げた。 "みんな" とはソ連合の魔女武将の面々のことだ。 ソ連合は仲良し連合。 領主たる魔女たちは皆ハズキのお友達だ。 タバサ王国が崩壊しテツナンド郡の太守だったハズキが独自の勢力を確立したとき、ハズキは周辺の小勢力を征服せず連合を作った。 それら小勢力の領主がタバサ時代の知人や友人だったからだ。 普通の国主なら屈服させるか攻め滅ぼす小勢力を、ハズキは優しさ(ある)いは甘さゆえに存続させている。


それゆえ、この(いくさ)に参加するソ連合の魔女武将10人のうちに、ハズキの真の配下はいない。 10人のうち1人はハズキ自身。 7人 ―ガブリエラ・ハニーゴールドとイナギリ・クルチアを含む― はソ連合に所属する各勢力の魔女。 そして残る2人は武将交換制度によりディアマンテ女王国からテツナンド王国へ送り込まれた魔女である。 ガブリエラとクルチアがいなければ、ハズキがソ連合軍の統制を保てるか怪しい。


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


ガブリエラが魔女王フジワラノ・ハズキに馬を寄せる。


「フジワラノ殿、我らから離れてはなりませんよ。 セガワはディアマンテから交換武将を帰還させ、本来の力を取り戻しております。 ゆめ油断なさらぬよう」


8年前、ディアマンテ女王国はタバサ連盟内の人材交流を名目に武将交換制度を始めた。 この制度により、属国は強い武将を引き抜かれ弱い武将を押し付けられている。 だがディアマンテからの離反を宣言するに先立ちセガワは、ディアマンテに出向(しゅっこう)中の優秀な武将たちに密使を送って脱出させた。 それにより、セガワの魔女武将の武力値の平均は40台半ばから80前後へと鋭角的に上昇している。


「承知いたしました。 ガブリエラ様のお(そば)を片時も離れないように致します」


ガブリエラの青い瞳を見つめ返すハズキの顔に、抑えようのない崇敬の気持ちが表れる。 この才色兼備の大先輩と出会ってもう何百年になるだろう? ハズキが魔女学校を卒業してタバサ王国のシェル将軍の地位を与えられたとき、ガブリエラは最上位の将軍位の1つサファイア将軍だった。 初対面でガブリエラに心服したハズキは、1年後には心の中で密かに()つ一方的にガブリエラと義姉妹の誓いを結んだ。 むろん、ガブリエラが姉でハズキが妹。 生まれたときは違えども死ぬときは一緒と誓っている。


ハズキのもう片方の隣に、クルチアが馬を寄せる。


「セガワは武力92の猛者。 戦いは私たちに任せ、ハズキは自分の身を護ることに専念しなさい」


さっきハズキを叱った名残(なご)りで、後輩に対する言葉遣いのままだ。


ハズキは情けない気持ちになった。 合戦では先頭の大将同士が激突するしきたり。 それが戦場の(はな)。 なのに自分ときたら2人の偉大な先輩に守られるだけ。 まるで飾り(びな)だ。


(これでガブリエラ様の義姉妹だなんて、笑っちゃう)


でも、アイちゃんと正面から戦って勝つ自信が無いのも事実だった。

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