第34話 マキハタヤ殿なら
今回の戦に参加するタバサ陣営の魔女武将が一堂に介した軍議に、マキハタヤ・マリカは参加しなかった。 傭兵の身だからだ。 いま砦にいる魔女の中で軍議に出なかったのはマリカとジー・ルオのみ。 シュクガワ・マナミはテツナンド王国の魔女武将なので軍議に参加した。
マリカが居候するシュクガワ邸に、マナミは軍議を終えて戻ってきた。 イナギリ・クルチアが一緒だ。
クルチアは女性にしては大きな体を応接間のソファーに沈め、マリカに軍議の結果を伝える。
「いやー、まいったまいった。 今回の戦じゃ、ダナウェイの一名将軍全員と戦うことになりそうよ。 地方に置かれてた一名将軍2人も魔女王崩御を聞いて首都に戻ってて、後継者を誰にするかで揉めてるんだって。 ソ連合だけで攻め込んでたら危なかったわね」
軍議でディアマンテ女王国に明かされるまで、ソ連合はダナウェイ国内の状況を知らなかった。 ディアマンテに搾取されるソ連合には、独自の諜報活動を行う余裕がない。
「兵数は?」
「4万強。 地方の一名将軍2人は手勢だけを引き連れてきて戻ってきたの」
「部隊を残してきたのか。 ならば私には無理だな」
マリカは独特の戦い方ゆえに、自部隊を伴わぬ敵将を倒せない。
「うん、その2人は私とガブリエラ様が相手をする。 マキハタヤ傭兵隊には、5千を率いる一名将軍を撃破してもらうことになるわ」
ダナウェイ軍が籠城せず討って出るとの前提で軍議は進められた。 『魔女道』を信奉するダナウェイが、自軍より少数のタバサ連盟軍を相手にすることは考えられない。
マリカは上機嫌で頷く。
「承知した」
まともに任務を任されるのは傭兵になってから初めてだ。 ダナウェイ王国はマリカの戦い方を嫌い、常にマキハタヤ傭兵隊を予備戦力に回していた。 それでも雇い続けたのは、マリカが敵に回るのを恐れたからに他ならない。
「でね、残る1人の一名将軍はパーカー殿が相手をするんだけど、ダナウェイの一名将軍が相手だとパーカー殿は防戦一方になっちゃうのね。 だからマキハタヤさんには、1つめの敵部隊を速やかに撃破してパーカー殿の応援に向かって欲しいの」
マリカは、おや?という顔をした。 "速やかに" だと? 一名将軍の部隊を撃破するのは、簡単なことではないぞ?
でも、言葉尻に目くじらを立てるのをマリカは良しとしない。 ベティー・パーカーの武力値が93だとスザンヌから聞いている。 ダナウェイの一名将軍が相手では苦しいに違いない。 ゆえにマリカは承諾する。
「うむ、よかろう」
「あとね、一名将軍以外のダナウェイ軍合計3万に対して、ディアマンテ軍1万5千とソ連合軍5千、それに砦からも兵を1万出して相手をするんだけど、兵数と魔女武将の質の両方で負けてるから苦戦が予想されるの。 だからマキハタヤさんには、2つめの敵部隊も速やかに撃破後、急いで他の敵部隊を潰して回って欲しいの」
とうとうマリカが苦言を呈する。
「イナギリさんはしきりに "速やかに" と言うが、そう簡単に敵部隊を撃破できると思ってもらっては困る」
「ごめんなさい。 私たちマキハタヤさんに頼りすぎだよね。 軍議じゃ誰も彼も "マキハタヤ殿なら" って、全部マキハタヤさんに押し付けてた。 でも他に遣り様も無いと思う。 それともマキハタヤさんなら、もっと良い作戦を思いつけるのかな?」
「そういうわけではないが...」
マリカは純粋な戦術家であり、神算や鬼謀の持ち主ではない。
「あ、そうそう。 話は変わるんだけど、ハズキがね? この戦に勝利したらマキハタヤさんに特別ボーナスをあげるって言ってた」
「ほう、ボーナスか。 何をくれるんだ?」
「さあ? そこまでは聞いてないけど。 楽しみにしてていいんじゃない?」
クルチアは笑顔でとぼけた。 本当はボーナスの内容を知っている。 知っているどころかクルチアが提案した。 その内容とは所領。 テツナンド王国内の土地をマリカに分け与える。 土地でマリカをテツナンド王国に縛り付ける魂胆である。
自分を待ち受けるプレゼントの正体も知らず、マリカは無邪気に喜ぶ。
「そうか、ボーナスか」
自分の価値を正当に評価されボーナスまで貰えるのは、傭兵になって初めてだった。
不人気のため残念ながら、この作品は打ち切りとなりました。 次回作にご期待ください!




