第33話 三顧の礼③
ナタリーらが去って間もなく、マナミが風呂から出てきた。 バスタオルで濡れた頭を拭きながらマリカに尋ねる。
「ディアマンテは?」
「帰ったよ」
「私に会いに来たんじゃないの?」
「ああ。 だが、あれはどうも『三顧の礼』を狙っているな。 マナミを避けるように帰っていった」
「三顧の礼って?」
マリカは『三顧の礼』の概要をマナミに教えた。
「―とまあ、これが『三顧の礼』だ。 ディアマンテ殿はマナミを本気で登用するつもりだぞ?」
「ふ~ん。 ディアマンテから逃げ回ってやろうかな」
テツナンド王国を虐めるナタリー・ディアマンテを、マナミは嫌っている。
「やめておけ。 自分で自分の首を締めることになる」
「どうして?」
「マナミがディアマンテ殿を避けて逃げ回るたびに、三顧は四顧、五顧、六顧へと増え、その度に威力を増す。 最終的にディアマンテ殿に捕まったとき、お前はディアマンテ殿に負い目を感じていることだろう。 冗談ではなく本当に登用されてしまう。 悪いことは言わない、次にディアマンテ殿が来たら素直に会え。 魔女武将たるもの軽々に主君を変えるべきではない」
「わかった」
マナミは寒気を感じていた。 湯冷めとは別の寒気を。 自分の意志に反して登用される『三顧の礼』... 何と恐ろしい技だろう。
そんなマナミをマリカは面白そうに眺める。
(フッ、マナミも多少の仁・義・信は備えているらしい)
逃げるたびに負い目が増すのは仁・義・信の心ゆえ。 これらの徳目を持たぬ者に『三顧の礼』は効果を発揮しない。 奔放で自堕落なマナミも、仁・義・信の心と無縁ではなかったのだ。
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初回のシュクガワ邸訪問から2時間後、ナタリー・ディアマンテは再びシュクガワ邸を訪れた。『三顧の礼』の2顧めである。 マナミは逃げも隠れもせずこれに応じ、ナタリーの『三顧の礼』は失敗に終わった。
奥義を封じられたナタリーは捨て身となり、真正面から礼を尽くしてマナミを自陣営に誘ったが、マナミは首を縦に振らなかった。 でもマナミの無礼な態度に係わらず終始ナタリーの腰が低かったので、マナミのナタリーに対する印象は改善した。
「なんだ。 そんなに悪いヤツじゃないじゃん」
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シュクガワ邸からの帰路ナタリーは、クロエ・シューベルトとジャノメ・マコに測定の結果を報告させた。
クロエの異能は〈能力視〉である。
「シュクガワ殿の能力値は、武力97・知力33・魅力52でした」
マコの異能は〈忠誠視〉だ。
「忠誠値は46。 もう少し下がれば、シュクガワ殿はディアマンテ様の手中に落ちるでしょう」
両名の報告にナタリーは満足した。 シュクガワ殿の武力値は思った通り立派だったし、フジワラノに対する忠誠値は思っていたより低かった。 今回は登用できなかったが、武将交換でフジワラノから引き離しプレゼント攻めにすれば、遠からず自陣営にシュクガワ殿を迎え入れられよう。 交換武将などではなくディアマンテの武将として。




