第30話 サイバラ砦へ
ソ連合の諸将は5千の兵を率いて、サイバラ砦に赴いた。 魔女王ナタリー・ディアマンテ率いるディアマンテ軍も、ほぼ同時に到着した。 ディアマンテ女王国よりソ連合のほうが砦に近いが、ナタリー・ディアマンテは諜報によりダイアン・ダナウェイの死去を速やかに察し、出陣を準備していた。
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そして今、砦の司令官室で5人の魔女武将が顔を合わせている。 ナタリー・ディアマンテ、フジワラノ・ハズキ、ガブリエラ・ハニーゴールド、イナギリ・クルチア、スザンヌ・グッドウィルの5人。 タバサ連盟軍の首脳部である。
クルチアが単刀直入にナタリーに尋ねる。
「今回のディアマンテ軍の兵数は2万、主だった武将はディアマンテ殿ご本人と、エメラルド将軍ベティー・パーカー殿、そしてサファイア将軍クレア・クイックシルバー殿のみ。 大国ダナウェイに攻め込む戦力として、少なすぎやしませんか?」
支配国の魔女王を相手に、歯に衣を着せない。 ナタリーはクルチアの主君ではないし、ナタリーとはタバサ王国時代からの旧知の仲だからだ。
ガブリエラが付け加える。
「ジャオ殿もド・レミー殿も、それにマグパイ殿も来てないようね」
トパーズ将軍ジャオ・ジエとルビー将軍ハルカゼ・ド・レミーは、今回の戦役に参加するディアマンテ軍の一名将軍2人より武力が高い。 そしてメグ・マグパイはディアマンテ軍で随一の切れ者。 これらの人材を参加させず、ディアマンテ軍は本気でダナウェイを攻略する気があるのだろうか?
「ジャオ殿とメグにはツァオ王国に対する備えとして南の前線に残ってもらいました。 ですが心配は無用に願います。 今の戦力でも、ダナウェイに互角以上の戦いを挑めます。
「わが国の調査によると、今回の戦で私たちが相手にするダナウェイ軍は4万強。 対して、タバサ連盟の兵力は3万5千。 我らが引き連れてきた2万5千に、砦の戦力から1万を加えた数字です。 ここにマキハタヤ殿の存在を加味すれば、互角以上です」
ナタリーは立て板に水のごとく答えた。 リハーサルは入念に済ませてきた。 スムーズに建前を述べれるように。
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顔合わせが終わった後ハズキは司令室に残り、シュクガワ・マナミの件をスザンヌに尋ねた。 そして知った。 お茶会の席でマナミがトパーズ将軍だと名乗り、地位を示す符節を全員に確認させたことを。
たちまちハズキは追い詰められた。
「シュクガワ殿がテツナンドに仕官したのは秘密だったのです。 どうしましょうグッドウィル殿、武将交換でディアマンテ女王国にシュクガワ殿を取られてしまいます」
いつも笑みが絶えないグッドウィルの顔から笑みが消える。
「この際、武将交換制度の廃止をディアマンテに突き付けてやりましょう」
ハズキは悲鳴を上げる。
「そんなこと! ディアマンテと戦いになります」
「よろしいではありませんか。 いま我らの陣営にはマキハタヤ殿がおります」
「でもタバサの魔女同士で戦うなんて...」 ドレミちゃんと戦うなんて。
ハズキの胸中を見抜いたかのようにスザンヌが言う。
「ディアマンテと戦うとなれば、ディアマンテに奪われたド・レミー殿も我が陣営に帰参するでしょう」
「ドレミちゃんが... 戻ってくる?」
スザンヌの目元に優しさが戻る。
「お忘れなく。 ド・レミー殿はフジワラノ様の命を救うため嫌々ディアマンテに付いたのですよ」
ハルカゼへの想いが胸に溢れ、ハズキは目を潤ませる。
「ドレミちゃん...」
「それに、ディアマンテは戦うまでもなく折れるかもしれません」
「本当かしら?」
「考えてもみてください。 我らの陣営には現在、元ダイヤモンド将軍のマキハタヤ殿と、ディアマンテの一名将軍を倒したシュクガワ殿がおります。 開戦すると、そこにド・レミー殿が加わります。 さらに、ハニーゴールド殿とイナギリ殿が力をお貸しくださいます。 強力な武将がこれだけいれば、兵力差の不利を埋め合わせディアマンテと互角に戦えるでしょう」
「わかったわ。 次の武将交換は拒否しましょう」
ハズキはサッパリした顔になった。 マナミをディアマンテ女王国に奪われる不安は消え去った。




