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魔女戦記  作者: 好きな言葉はタナボタ
第4章

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第26話 今のは何の報告だったのでしょう?

執務室のドアをノックする音があり、ナタリーとメグは顔を見合わせる。 2人の枢機会議を妨げるなど、何かあったに違いない。


メグが立ち上がり、ドアを開けて部屋の外へ出た。 戻ってきたメグは、封書を手にしている。


「テツナンドに出向中のタマムシ殿からの急使です」


「タマムシが? 何事かしら」


メグが手渡した封書をナタリーは開封し、読み終えた。


「なんてこと...」


呆然とするナタリーに、メグが気遣(きづか)わしげに尋ねる。


「何があったのです?」


ナタリーはズシコからの報告書を力なくテーブルの上に投げ出した。


「マキハタヤ殿がテツナンドに雇われたそうよ。 まだ傭兵をやっていらしたのね」


メグは手紙を手に取りながら、ナタリーに確認する。


「マキハタヤ? あのマキハタヤ・マリカですか? 旧タバサでダイヤモンド将軍だった」


ナタリーはメグの問いに答えず、自分の内心を口にする。


「ハニーゴールドとイナギリ。 そして今度はマキハタヤ殿...」


そして急に叫びだす。


「3人目よ! えあるタバサの一名将軍がっ! 忌々(いまいま)しい。 どうしてあの小娘のもとにばかり一流の武将が集まるの?」


「落ち着いてくださいナタリー様。 マキハタヤはあくまでも傭兵、フジワラノに忠誠を誓ったわけではありません」


メグは必死でナタリーをなだめた。 ナタリーの叫び声が部屋の外に漏れ聞こえれば、魔女王の権威が低下する。


「次の武将交換はマキハタヤで決まりね! もう決めた。 絶対に交換してやる」


「ナタリー様。 マキハタヤは傭兵です。 武将交換の対象にはできません」


「っ!」


メグの言う通りだと気付いた。 傭兵は交換できない。 欲求不満が極まったナタリーが咆哮する。


「ちくしょうっ!」


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


執務室でナタリーが荒れ狂うこと四半刻しはんとき。 再びドアがノックされた。 コンコン


ナタリーの怒りに翻弄(ほんろう)されたメグが憔悴(しょうすい)した様子でドアへ向かい、部屋の外へ出た。 戻ってきたメグは、またもや封書を手にしている。


ナタリーが叩きつけるように尋ねる。


「今度は何っ!」


「サイバラ砦から急使です」


メグが手渡した封書をナタリーは開封し、読み終えた。 そして両手でビリビリと引きちぎった。


「おのれテツナンドめっ!」


「今のは何の報告だったのでしょう?」


メグが放った過去形の問いに、ナタリーは荒々しく答える。


「パーカー殿がマキハタヤ傭兵隊の副隊長に一騎討ちで敗北したって。 しかも、その副隊長はテツナンドのトパーズ将軍を兼任してるんだって!」


「パーカー殿が?」


メグは息を呑んだ。 にわかには信じられるものではない。 ベティー・パーカーは武力値93の一名将軍。 そのパーカー殿を打ち負かすには、ダナウェイや旧タバサといった大国の一名将軍レベルの実力が必要だ。 それが傭兵隊の副隊長に...?


「接戦ですらなく、あっさり負けたそうよ」


「その魔女の名は?」


そこまで強いとなると、メグも知る魔女に違いなかった。


ナタリーは不機嫌に名を述べる。


「シュクガワ・マナミだそうよ」


「聞いたことがない名です。 何者なんでしょうか」


ナタリーはメグに、報告書にあった内容を語って聞かせた。 魔女の名はシュクガワ・マナミ。 出身はタバサ王国。 マキハタヤ・マリカと同じ師のもとで修行したが途中で脱走し、マフィアのボスを経てマキハタヤ傭兵隊に合流した。 シュクガワがテツナンド王国トパーズ将軍の地位にあることは符節で確認した。 異例の戦い方でパーカー殿に勝利した。〈重量変化〉の魔法でパーカー殿落馬させ、馬乗りになって殴って気絶させた。


        ✩˖°⌖.꙳✩˖°⌖.꙳✩


語り終えたナタリーが、暗く沈んだ声でポツリと言う。


「...4人目ね」


「と言いますと?」


「フジワラノの麾下きかにいる一名将軍クラスの魔女武将の人数よ。 ハニーゴールド、イナギリ、マキハタヤ、そしてシュクガワ・マナミ。 国の格じゃ上のディアマンテが、一名将軍の質じゃ明らかにソ連合に負けている。 これはどうしたことかしら。 私に人望が無いというの? ねえ、私ってそんなに魅力が無い?」


嘆くナタリーにメグは愛しさを覚える。


「ナタリー様、お気を確かにお持ちください。 ナタリー様の魅力値は71。 決して低くはございません。 フジワラノには劣るものの、代わりにナタリー様は武力と知力でフジワラノを大きく上回ります。 自信をお持ちください」


ナタリーに愛しさを覚えるのはメグぐらいのものだ。 専制君主なうえ性格も良くないナタリーに、愛しさを覚えるのは難しい。


「そう? そうよね。 私は巡り合わせが悪いだけなのよね」 グスン 「ありがとうメグ」


ナタリーはメグが差し出したハンカチで、遠慮なく涙と鼻水を拭き取った。 それを眺めながら、メグは淡々と言葉を続ける。


「マキハタヤは単に傭兵契約であり、君主の魅力とは無関係です。 さらに、シュクガワ・マナミに関しては打つ手がございます。 の者がテツナンドのトパーズ将軍になったのは、むしろ我らにとって好都合。 武将交換の対象になるのですから」


ナタリーの目に覇気(はき)が戻った。


「そういえばそうね! 覚悟しておきなさいシュクガワ・マナミ。 次の武将交換で必ず貴女を指名してあげる」

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